『カラス』(467文字)

あの子がカラス怖がるから、カラスは全員爆撃機。

忌むべき存在である。

らしい。

あのつぶらひとみも、よく見るとかわいいかもしれない口も、細い脚も全部、爆撃機のパーツ。

鳴き声はラッパ。

急降下して白い爆弾落としてる。

どんなにかわいい顔してても、あの子が怖がってるんだから、許せない。

ゴミのネット漁ってたら、電線にとまってたら、飛んでたら、真上をかすめていったら、パン盗まれたら、機銃きじゅうで撃ち落とせ。

あの子からの命令だ。

あの娘じゃないぞ。

子供だぞ。

おもちゃを欲しがる、あの子供だぞ。

あの子からの命令だぞ。

カラスが死ぬのは心苦しいけど、命令なんだぞ。

あの子に逆らおうものならきっと、今度は自分がカラスになるし、爆撃機になる。

仕方ないことだよ。

カラスは死ぬんだ。

そういうものだ。

うん。

そうだ。

仕事だと思って、やれ。

ってよく言われる。

機銃撃つ音が、カラスのラッパが、あの子の声が、うるさい。

おもちゃあげたら、満足するかな。

しないだろうな。

この前もらってたおもちゃだって、今はもう埃かぶってるし。

挙句、いらないって言って捨ててたらしい。

弾薬を運ぼう。

箱が重いけど。

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