第105話 真仙術式…
リングの正体については、私とマーキュリーズの間では、既に結論が出てる。
その前に、リングのコクピット内に漂っていた塵について。
塵を分析をした結果、マテリアルの類ではなく、多孔質の砂だとわかったわ。もっと言えば藻類が石化したモノ、地球の珪藻土と非常に酷似してる。
塵はコクピットを開けたことでだいぶ飛散してしまっていたけれど、量的にはかなりある。発見した状況から、塵の正体は、コクピット内にいた何者かの体組織だと推測した。
何者か?
あんな構造の体組織は、地球人のわけがない。
それはもう考えられるのは異星人。
塵は異星人の成れの果てと見立てた。
地球における記録には、異星人の事は何も情報がなかった。捕虜にしたとか、遺体を回収したとか、それどころか姿形に関しても一切なし。
そうすると、塵と化してはいたけれど、私達は異星人の片鱗を初めて見つけた事になるのかしら?
ほうほう
そう認識した時、この塵となった異星人は、私の艦砲射撃で殺してしまったのかと思った。でも、その考えは早計だった。
コクピット内は、人が近づいただけで即死級の高濃度な放射能で汚染されており、砂もまた同程度の放射能を帯びていた。蓄積された放射線量から、500年程度の長い時間、コクピット内と塵は放射線に晒され続けていたとメイが見積った。開閉機構状態を鑑みるに、少なくとも500年はコクピットが開放された形跡がないので、死因は私の砲撃ではないわ。しかし放射能については、あくまでも私達の常識範囲の話であり、異星人の死の原因が放射能とは限らない。異星人は放射能の環境下が通常の生活圏かもしれない。生体そのものが放射能を帯びているのかもしれない。いずれにしても死因の特定にはまだ繋がらない、さらなる分析が必要ではある。
さて、塵の件はここまで、これ以上は結論づける材料が足りない。そもそも死体には興味がないし、はっきり言って異星人など今はどうでもいい。私達が考えなければならない本題は
『リング』
リングを分析した結果、私達で制御可能だと確証を得た。コクピットの存在が明らかになったことで、リングの作動要件が判明したから。
そうなると課題は、欠損したリングの修復。未知のテクノロジーで出来た代物を私達で復元できるのか?
ところがコレができてしまうんです。これも作動要件から判明。それは、ナガトの補機たるエーテル
一体どういう事なのか?
それはリアクターの出所が地球産ではない…という話。
理論が確立してもいないのに、機械だけは出来てるとか、どう考えても地球の既存テクノロジーとマッチしていなかった。故に、はなからそうではないかと思ってはいたけどね。反転重力炉もそう、あちらは未知過ぎて複製さえ出来ない。反転重力炉も地球産ではないのは明らか。
でも使えるものは使う。
入手したリングも当然、有効に使ってやる。
破損したリングをどうやって修復するか?、私達は答えをすでに持っていた。
マテリアルと仙術を使う。
リング内部の回路の様なパターン、コレはメイの解析の結果、驚くべきことに仙術式で補える事がわかったわ。仙術というのはナニ?宇宙の真理なのかしら?
ただし、エーテル炉や反転重力炉に用いられている新式循環方式ではなく、原祖式と呼ばれる古代仙術方式が必要で…
…って、原祖式?古代仙術方式?
私の理解の範疇を超えてる、ファンタジー要素の度が過ぎる。コレさえもオーバーテクノロジーではないのかしら?
原祖式の情報の出所はナガトライブラリー。
ライブラリー内に分散され、暗号化されていた仙術に関する文献を、メイがなんとサルベージしていた。
いつの間に…
メイとテイラーは、フガクの艦首に施されていた謎の仙術式の断片を解明しようとして、ダメ元で膨大なナガトライブラリーにその情報を求め、特異点的なデータ情報を定量的に観測し、発見したらしいわ。件の文献を編纂したのは「北斗機関」という謎の組織。調べると新式循環仙術式を構築した組織でもあるらしいわ。なぜそんな隠し方をしていたのかは、今更詮索はしないけどね。
ライブラリーから探そうと発想をしたメイとテイラーが凄い、隠されてるなんて私は思いもつかなかった。マーキュリーズは、AIとしてかなり進化してる。私も解析された文献を閲覧すると、そこには仙術の基本方程式とも言うべき定理が記されていた。その内容は、新式を語る前に仙術のなんたるかを理解するのに、絶対に必要な基礎であるとわかった、それが原祖仙術式。
…ただし、原祖式は誰でも扱える新式とは違い、使い手を選ぶ。
『原祖式は生まれ持った仙術を扱うための「才」が必要である』
と、文献に記されてる。
では「才」とは何か?
文献には、「仙丹」「仙骨」と記されてる。
それが何かと言うと、そうねー例えるなら…
仙丹は炉、いわゆる動力源
仙骨は骨盤…ではなく、仙術の根幹、いわゆる式を構築する為の演算処理装置。
って感じ?
この2つを生まれながらにして持っていない限り、原祖仙術は使えない。そうこれが使う人を選ぶという異能の技になる。そうなると、人ではなくなった私に、そもそも仙術が扱えるのか?
ところがあったんです、私の中に、仙術を使うための動力炉と演算処理装置が、それが、反転重力炉と私の思考を司る主幹部、量子AIコンピュータ。
さあ、ここから仙術のお勉強です。
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