スムル・アスラー・3


 退店の際、スムルが店員にもう一度怒ってくれたおかげで、2人のご飯代は無料になった。


(頼もしいが……スムルは本職の怖い人だったりしないよな……)




 スムルを先頭に、連れ立って歩く。彼は立派な大剣を背負っている。


(迫力あるな……これは付いていって大丈夫なのかな……)


 雄大はとにかく不安だった。それは小松も同じ気持ちだったようで、彼の表情は緊張で強張っている。



 一行は繁雑なメイルンストリートを抜けた。


 しばらく東に歩き続けると、閑静な住宅地に入った。


 住宅地は小高く、南東の方角には、雄大が前に見た大きな建造物がそびえ立っている。


 しばらく黙っていた小松が、スムルに聞いた。


「あの、スムルさ…スムル、もしかして僕たち異世界者って、街の人たちから嫌われていたりしますか?」


「ああ。お前ら大半の人間に嫌われてるぜ」


「何でですか?……」


「お前らが異世界人だからだ」


「え、それだけの理由で?…」と雄大。


「十分な理由だよ。エドラド王国の政策で、異世界人が優遇されているからな」


「優遇って例えばどんなことですか?」


 小松がスムルに聞いた。


「そうだな。お前らは王国からいくらの金を支給されたんだ?」


「20万リルツです」と小松。


「その20万リルツっていう額は、エドラド王国の中流階級の人間が、ひと月に稼ぐぐらいの額だ。さっきの店は安いと思ったろ?」


「はい」と雄大。


「あの店の客層は、どちらかというと低所得者が多い。ほとんどがひと月頑張って、11万リルツいくかいかないかだ」


「だから妬まれているんですか?…でもそれって僕らがそうしようと思ってやっていないんですけど……」


 小松は段々と小声になっていく。


「そうだよ、お前らのせいじゃない。国の政策に、お前らが巻き込まれているだけだ」


「だったら」


「だけど、あの店の奴らにそんなことは関係ない。国が5年前から多くの異世界者を呼び寄せるようになって、今までより税金が増えたんだからよ」


「そんなの理不尽だ……」と、小松が呟いた。


(そうだ。理不尽すぎる……おれたちは勝手にエドラド王国に連れて来られたあげく、国民のヘイトまで買っている……)


 雄大も小松に共感していた。

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