今日、僕(私)は一人になって。

磨白

第1話 今日、僕は一人になって。

彼女が出ていった部屋で1人ベットに寝転び、僕は天井を見上げていた。


三年間付き合っていた彼女との別れは本当に些細なことだった。


最近、お互いに仕事が忙しく会う時間が取れず不満が溜まって喧嘩した、なんてよく聞く話だ。


自分には関係ないことだと思っていたけど、そんなことはなかった。


三年間の関係はたった一度の喧嘩で終わってしまうほど脆いものだったみたいだ。


ショックと諦め、悲しみ、失望。この感情はよくわからない。


大事にしていたぬいぐるみを無くしたのとも違う、今までの人生を否定されたかのような無力感。


誰かにそう言われているわけではないのだが、「お前は惨めだ」という言葉が聞こえる気さえした。


僕はスマホを取り出して、躊躇わず彼女に電話をかけた。


別に復縁だとかそういうことを考えたのではない。


どうしても声が聞きたいと、そう思ってしまっただけだ。


傷ついたときにどうしても彼女を求めてしまう、呪いみたいなものだ。


コール音が無機質に部屋に鳴り響く。


その音すら僕の心を不安定にさせる。このまま電話の音が永遠に続くとすら思える。


まぁ、勿論そんなことはないのだが。


無常にも電話は切られ、僕の最後の望みは叶わなかった。


当たり前だ。僕と彼女はもう、恋人ではないのだから。






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