第4章96話:移動

「とにかく、収納の問題は解決したな。そろそろ移動を開始したいところだが……」


俺はふと、近くにあった孤島に目を向ける。


海岸から地続きでいくことができる孤島。


ノルドゥーラが聞いてきた。


「あの島がどうかしたのか?」


「ああ。実はあの島には、獅子がいるのだ」


と俺は答えた。


ノルドゥーラが首をかしげる。


「獅子?」


「そうだ。まあ、フィールドボスだな。お前と同じタイプの魔物だよ」


「ふむ……で? 獅子がいたからなんだというのじゃ」


「せっかく来たし、倒していこうかと思った。が……まあいいだろう。倒したらレアアイテムをドロップするが、あまり使うものではないからな」


そう告げて、俺は孤島から視線を離した。


ノルドゥーラのほうを向く。


「では、次の目的地に向かう。竜の姿に戻れ」


相分あいわかった」


ノルドゥーラが了承する。


『人型化』を解いていく。


数秒後。


ノルドゥーラは巨大な刃竜の姿に戻った。


俺はノルドゥーラの背中に飛び乗った。


「二つ目の竜玉を回収しにいくぞ。方角は北西だ」


「了解した」


ノルドゥーラが返事をしてから、翼をはためかせる。


空へと飛翔した。


ふたたび空の旅を再開するのだった。






空を翔けるノルドゥーラ。


上空。


雲を裂き、向かい風を突き抜ける。


やがて。


数時間後。


空が夕焼けに染まり始めた刻限。


目的地の手前の位置に到着した。


山野さんやの中である。


周囲には緑の山々がどこまでも広がっている。


そんな山野の、断崖の上。


そこにノルドゥーラが着地する。


俺はノルドゥーラの背中から飛び降りた。


そして告げる。


「ここからは徒歩でゆく。お前も人型化しろ」


「ああ、わかった」


ノルドゥーラが変身し、人型化する。


白銀髪はくぎんがみの女になる。


「よし、いくぞ」


俺は断崖の端に立つ。


遥かに見下ろす50メートルの眼下に広がるのは緑の大森林。


樹海である。


ところどころに、俺が立っている場所と似たような、高い断崖が存在する。


「……」


俺は断崖のふちから、ためらいもなく飛び降りた。


重力にしたがって、降下していく。


ノルドゥーラも俺の後を追って、飛び降りてくる。


二人で、断崖のそばを自然落下していく。


俺たちの真下には、川が流れているようだった。


なかなか大きな河川だ。


着水してもいいが、俺は濡れることを嫌った。


ゆえに、着水の寸前でサイコキネシスを使い、まるで水のうえに立つように浮遊した。


一方、ノルドゥーラは着水する。


俺はサイコキネシスを使いながら、陸地へと移動した。


砂利じゃりに敷き詰められた川岸である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る