第1章7話:決着

デレクが、腰を抜かして、尻餅しりもちをついた。


「有り得ない……有り得ない……こんなの、ウソだ……」


「さて」


「!?」


「さっき、お前は俺を殺すといったな? だから――――」


俺はサイコキネシスで、デレクの身体を持ち上げる。


宙に浮かせる。


「俺もお前を殺すことにしたよ」


「や、やめろ!! さっきのことは謝る! なんでもする! だ、だから、俺を許してくれ!」


「ダメだ。お前に同情の余地はない」


このままデレクを、サイコキネシスで握りつぶそう。


デレクを圧縮して殺すイメージをする。


しかし。


「あ……そうだ」


そこで思いついたことがあった。


デレクをいったん地面に下ろす。


「え?」


許されたと思ったのか、デレクが目を見開く。


「は、ははは……なんだよ、おどかしやがって!」


デレクが言う。


そしてしらじらしいことを口にする。


「そ、そうだよな。俺たちは同じ転生者だもんな。争うのは不毛ふもうだ。これからは、仲良くしようぜ?」


「何を勘違いしている?」


「え?」


「俺が、お前を許すと、一度でも言ったか?」


「ち、違うのか?」


「違う」


では、なぜデレクを地面に下ろしたのか?


俺はその理由を告げる。


「お前のアイテムや装備をいただいてから、殺そうと思ってな」


デレクがふたたび目を見開く。


俺は言う。


「追放されたせいで、大してカネを持ってないんだよ。お前は良いアイテムバッグを持ってそうだし、今後の生活のために使わせてもらおう」


デレクの顔が、だんだんと怒りに染まる。


「ふ、ふざけるな! 誰がお前なんかに、俺のアイテムを渡すかよ! これは俺が必死の探索で集めた―――――」


「黙れ」


俺はサイコキネシスを行使する。


地面に下りていたデレクがふたたび宙に浮く。


地面からわずかに離れた位置。


そこにデレクをだいしばけたようなポーズを取らせる。


「く、この、やめろ!! サイコキネシスを解け!!」


「静かにしてろ」


俺は、はりつけのポーズになったデレクから、アイテムバッグや装備品を奪っていく。


途中、デレクは魔法による攻撃を仕掛けようとしてきた。


が、それはサイコキネシスによって封殺ふうさつした。


……よし。


あらかた奪い終えた。


もう十分だ。


「俺のアイテムを奪うな!! この野郎! 絶対、絶対お前を殺してやるぞ!!」


と、デレクが口汚くちぎたなく叫んでいる。


もういいか。


さっさと殺してしまおう。


デレクが叫ぶ。


「この世界の全ては俺のものなんだ! 国も、大陸も、リズロッド嬢も、俺が好きにするんだ! お前みたいなゴミじゃない! 俺が支配者になって、この異世界の全てを―――――」


俺は距離を取ってから、サイコキネシスを発動した。


デレクを"圧縮あっしゅく"する。


ぐちゃりと。


デレクが肉塊にくかいになって凝縮ぎょうしゅくされ、血をまきちらした。


即死である。


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