第20話
「……っ!!」
初弾こそ外したものの続く2発3発の弾丸はその足へと命中していた。それでも怪物は止まらない。足に食い込んだ弾丸をものともせず誠二が走る速度を上回った怪物が誠二へと迫る。
(化け物が……)
「はっ!!それならこいつを喰わせてやるよ!!」
即座に拳銃を破棄し背中からクロスボウを取り出していた誠二。既に矢のセットは終わっている。残るはトリガーを引くだけだ。
(近距離でその頭部をブチ抜く!)
「くたばれ!!」
引き金を引き誠二がクロスボウの矢を発射。それは正確に巨大ゾンビの頭部へと吸い込まれていく。
「なっ…!?」
だがその矢が頭部を貫く事はなかった。巨大ゾンビは守っていたのだ。その頭部を。その巨大な腕で。
(ブロックしやがった!?これは…マズい!!)
「ごあああああああああああ!!」
「っ…!?」
振り下ろされた丸太のような拳を後方に転がることで回避する誠二。だが巨大ゾンビは諦めない。人間では絶対にありえない体勢から無理やり誠二の背中を蹴り飛ばす。
「がっ!?」
誠二の全身がゴムボールのようにぶっ飛ばされた。
「ぐっ…がっ…ぐぐ……」
あまりの衝撃に受け身も取れず3回バウンドを繰り返す誠二。その体が大きな墓石へと衝突する事でようやく体のコントロールを誠二は取り戻した。
「…ぐ…痛たたたた……」
クラクラとする視界で周囲を見回す誠二。
(墓地付近まで吹っ飛ばされたのか。あの野郎信じられないレベルの馬鹿力だ……)
「…鉈を構えてなかったら死んでたな……」
誠二がとっさにガードに使った鉈は柄から先がポッキリと折れてしまっていた。
(もう同じ手は使えないか)
「…っ」
立ち上がろうとした誠二が右腕の奇妙な痛みに顔をしかめる。
「…あ?」
(捻ったのか?折れてるわけではなさそうだが…)
右腕の現状を確認しようとしていた誠二の耳にその声が響く。
「ごあああああああああああ!!」
「っ…!?」
遠方から再び巨大ゾンビが誠二を狙い走り出す。
「しつこい野郎だな!?俺以外の人間を襲いに行けよ!!」
同時に誠二も後方へと走り出す。
「はあっ…!はあっ…!はあっ…!」
(正攻法じゃ無理だ。考えろ。何かあるだろ何か!)
目まぐるしく回る誠二の思考。周囲の状況を見まわし何かないかと知恵を絞って必死で考える。
(寺…墓地…水…)
「ごあああああああああああああ!!」
「はあっ…!はあっ…!」
(水…そうだ水だ!!)
(墓所付近には川が流れていたはず。水深もそこそこあるはずだ。そこにヤツを誘導できれば…可能性はある)
「…やってやろうじゃねえか!!」
「ごあああああああああああああ!!」
巨大ゾンビと誠二の距離は急速に近づいていた。
「おらっ!!俺をぶっ殺したいんだろ!?来いよ!!」
「ごあああああああああああああ!!」
即断即決。目標地点を脳内で設定した誠二が川に向かい全力で逃走を始めた。
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