戦争の製造現場

@miumiumiumiu

第1話 戦争の生産者


 戦争の生産者


 見上げる空からは燦々と陽光が降り注ぎ、その青い世界には綿飴のような白い雲がいくつも浮かんでいた。

 視線を下げると、そこには一面の緑色。背の高い多くの草に覆われた草原が広がっており、吹き抜ける風によって巨大な波を形成していた。

 そんな草原に一つの影ができる。物体が飛行してきたのだ。

 物体の名前は、戦略軍機兵器FWB。通称、ウォーク。

 不気味に黒光りするウォークは、一辺が二メートルの立方体で、前方だけが半円に凹んだ形をしている。上面には直径二メートルのプロペラが生えており、それが今は大きな音を立てながら高速で回転していた。そうして地上十メートルの高さを浮遊しながら時速五キロメートルと、ゆったりとした速度で西方に向けて移動しているのである。

 このウォークに搭乗員はおらず、遠方に設置された基地局からの電波によって無人飛行を実現させているのであった。

 では、このウォークはどこに向かっているのか? その目的は何なのか?

 それは敵地を攻撃すること。

 戦争。

 ウォークには大量の爆薬が搭載されており、自身もろとも敵地に突っ込んで爆発する役割を有している。そうして敵軍に甚大な被害を負わすのだ。

 すべては自軍の勝利のために。

 自国の営利のために。

 たった今、進行していたウォークの動きが止まった。次の瞬間にはプロペラの回転が緩やかなものとなり、自重によって真下に降下していく。

 そこにある敵地に向かって。


 一つの轟音とともに一つの大きな爆発が起きる。

 それは、一台のウォークがその役目を終えた瞬間であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る