異世界の皇帝に!他力本願だが国家のため安息の為、世界征服しようと思います

@highvall

第1話 ミズガルズ・フロンティア


玉座の間に多くの人々が跪き俺の言葉を待つ。


「さぁ。世界征服を始めよう」


これは、最弱の皇帝が最強の帝国で世界を統一する物語である。






玉座の横に立つ騎士たちを見ながら俺は焦っていた。

 どういうことだ?寝ていたはずだが…いったいこれは

 そんなことを考えながら改めて周囲を確認すると騎士の顔に見覚えがあった。

 アルフレッド・フォン・レイナース

 俺がミズガルズ・フロンティアをプレイしている際に作った国。アルカニス帝国の七星と呼ばれる騎士であった。


 まさか…本当にミズガルズ・フロンティアの世界なのか?



 ミズガルズ・フロンティア

 多くのプレイヤーが愛するオープンワールドゲームだ。メインとしてはNPCたちを集めて国を興すのがメインストーリーではあるが、自由度が高すぎるため世界を旅する冒険者のようなプレイも可能である。

 そんな世界で作り上げた自慢の帝国。それももっとも手塩を賭けたレイナースが目の前にいる。画面越しでしか見ることが出来なかったが銀髪に傷のある凛々しい顔。こうやってみるとほんとイケオジって感じだ。画質が上がったな。

 これが現実だとすると画質が上がったというのもおかしな話か?

 だが、俺がずっと見ているの気づいたのだろうレイナースはこちらに疑問の顔を向ける。


「陛下どうかされましたか?」


 心配そうな顔と渋い声に俺は心が脈動する。こんな繊細な感情表現も声の抑揚もゲームのころには存在しなかった。俺は興奮する気持ちを抑える。


「なんでもない…いや、どうも体調がすぐれないようだ」

「なんと…今すぐお休みになるべきかと、陛下こちらへ」


 すまんなと声をかけ、案内するレイナースに付いて行く。部屋はゲーム内で見たこともある寝室だった。俺は部屋に入りベッドに腰かけると、レイナースは医者を呼んでまいりますと言い部屋を出た。


 俺はベッドに横になり天井を眺める。

 胸を打つこの鼓動は確実で付近の物品も触感も匂いも…そしてレイナースもすべてリアルに感じられる。

 俺はどうやら本当にミズガルズ・フロンティアの世界に来てしまったようだ。


 ベッドで横になったがふとミズガルズ・フロンティアのゲームシステムのことを思い出した。いや、思い出したというよりはあまりの出来事に呆けていたというべきか。

 ここがミズガルズ・フロンティアなら、ゲームのシステムが残っているなら…


 ステータスオープン


 頭の中で念じると目の前にステータスウィンドウが現れた。

 Lv72 カイン・レヴァン・アルカニス

 特性:「皇帝」 「白魔法」 「魔力貯蔵」「カリスマ」 「美形」 「鑑定」

 体力:720(D)

 攻撃力:250(E)

 魔法力:650(B)

 魔力量:5500(S)

 防御:150(F)

 …

 など多くのステタースと特性が表示される。

 ちゃんとゲームプレイ時のステータスのままで一安心する。

 ゲームプレイ時と変わらずくそざこ攻撃力と紙装甲で泣けてくる。まぁ紙装甲なのもくそざこ攻撃力なのも織り込み済みでキャラクタークリエイトしたのだが。


 ミズガルズ・フロンティアが人気の要因である幅広いプレイスタイルはキャラクタークリエイトの奥深さに起因する。

 プレイキャラクターを作る際にステータスポイントと別にボーナスポイントというものをもらってキャラクターを作る。ステータスポイントは攻撃力や体力などのステタースパラメーターを割り振る。そして奥が深いのがボーナスポイントだ。

 ボーナスポイントはそのままステタースポイントと同じようにステータスに割り振ることも可能だが、ボーナスポイントの使い方にポイントを使うことで「特性」というものを獲得できる。


 特性には「剣術」や「魔術」といった特性があり、これらの特性は初期スキルの獲得や熟練度上昇効果、特定のステータスが伸びやすくなったり上位互換の特性に強化されるなどの恩恵が得られる。一種の才能をもらえるといえる。ちなみに「剣術」の特性も剣の練習を繰り返すことで後天的に特性も得ることができる。まぁ効率はかなり悪いし後天的に得た特性はポイントで取得した同じ特性よりも成長限界が低く上位互換の特性である「ソードマスター」へのハードルが高いという欠点があるのだが…


 まぁそんな特性の中で最も人気があったのは「天才」という特性であろう。この特性はどんなに頑張っても後天的に獲得することが出来ない。効果に関しては、ありとあらゆる技術の熟練度上昇効果である。もちろん天才によって後天的に得る特性やスキルは先天的なものと比べると成長限界はあるし、幅広い技術を習得する過程で天才はレベルが上がってもそれぞれの特性のステータスに均等に振られる。そのため突出したステータスを誇ることはない。だがありとあらゆる技術を取得しやすい天才は鍛えればどんな状況にも対応できる優れた特性である。もちろんその特性に見合った大量のボーナスポイントを要求されるのだが…


 実際多くのプレイヤーは天才の特性を選択した。楽だからだ。

「ソードマスター」など特化させたら確かに強いが、相性の悪い敵などは存在する。天才より成長限界が上だとしても自分に近い水準の技量を持ち、多くの特性やスキルを持つ天才には手数が劣るのだ。無難な強さがある天才は初心者を含め多くのプレイヤーが選んだ。


まぁ俺含めて頭のオカシイやつらは別の特性を選んだ。

「剣術」と「騎士道」という特性を選びそれ周辺の技術や特性を強化しまくった結果「騎士王」という特性を獲得したやつがいる。とんでもないハードモードで真似する気は起きないが。

俺の選んだ特性である「鑑定」「カリスマ」「美形」「魔力貯蔵」などは後天的に獲得できず、ポイントも安くそこそこ役に立つが、戦闘特化系の特性などと比べるとかなり見劣りする。実際「白魔法」など支援特化で俺はゴミみたいなダメージしかない。

まぁでもこの特性のおかげで俺はこの帝国を築き上げたわけだが…


コンコン


ふと想いに耽っているとドアをノックする音が聞こえた。

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