初恋は君のトランペット

秋色音色

ep.1 初恋

 ――果たして、初恋をする日が来るのだろうか。


 それは僕の中で不思議と芽生えた問いだった。公式や決まった物語が存在している訳でもない答えの分からない問い。初めて好きな人が出来れば、それは初恋と言えるのかと少し考えてみるが、そんな単純な答えじゃない気がした。


 その初恋の深淵に迫りたくて熟思黙想する日々を過ごしていた中、ある音を聴いてから僕の身体に異変が起き始めていた。胸の奥をぐっと握られるような痛み、平常時より少し速い鼓動、そして味わったことのない気持ちの昂りよう。僕はその音が忘れられず、次第に好意を抱くようになった。


 詰まるところ、これが初恋なのだろう。一瞬で解に辿り着いた気がしたのだ。


 その少し変わり種の初恋は、トランペットの音色だった――

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