第5話  少年達は、休む!

 土曜日、カズナリは久しぶりに自然に目が覚めるまで寝た。寝起き、久しぶりに気分は爽快だった。


「カズナリ様、お目覚めですか?」

「ああ、ゆっくり寝かせてくれてありがとう」

「食事をお持ちします。カズナリ様は、顔を洗って歯を磨いてください」


 カズナリは、勉強をすることにした。最近、授業中は寝てばかりだったので、アダチから送ってもらったノートのデータを使って遅れを取り戻す。


 その時、オンライン通話の着信音が鳴った。誰かと思ったら、アダチだった。カズナリは、女の子から電話をかけてもらったことが無かった。一瞬にして猛烈に緊張する。カズナリは、仮面をつけて応答した。


「はい」

「あ、カズナリ君。急にごめんね」


 勿論、アダチも仮面を付けている。


「別にいいけど、どうしたの?」

「心配になったのよ。土日くらい、ちゃんと休めてるかなぁ?と思って」

「ああ、今日はグッスリ寝たよ」

「うん、今日は元気メーターも正常値を示してるみたいね」

「そうだろうね、心配かけてごめんね」

「うん、なんかね、私、カズナリ君を見ていると、とても心配になるの」

「そんなに目立ってるかなぁ」

「目立ってるわけじゃないけど、目を離すとどこかへいってしまいそうな気がするの」

「僕はどこにも行かないよ」


 嘘だ。毎日、命懸けで戦っている。まだ仲閒に戦死者は出ていないらしいが……。


「知ってる? 外の世界のこと」

「外の世界?」

「街中に、妖怪がいるんだって」

「ふうん、そんな噂があるんだ」

「私達は外を見ることも出来ないから、確認しようが無いけどね」

「きっと、ただの噂だよ」

「でも、本当だったら怖いよね」

「大丈夫だよ」

「カズナリ君は、いざという時には私を守ってくれる?」

「うん、いいよ。君は僕が守る」

「ありがとう! 嬉しい」

「よく考えたら、僕はアダチさんのことを何も知らないなぁ」

「私もカズナリ君のこと、まだよく知らない。もっとカズナリ君のことを知りたい」

「休日は何をしてるの」

「映画ばっかり見てる」

「僕も」

「本当?どんなの見てるの?」

「えーと……」


 共通の話題があったことで、アダチとの会話は楽しく、時間を忘れて話した。


「今日は楽しかった。明日、また電話してもいい?」

「うん、いいよ」


 通話が終わった後、カズナリは初めて女の子と長時間話せた余韻に浸った。カズナリも、女子を意識するようになっていた。お年頃だった。ただ、外に妖怪がいることが噂になっているのが気になった。早く、自分達の街を妖怪達から取り戻さないといけない。


 次の日、日曜もアダチと通話した。イチャイチャと親密に話せるようになった。不思議なモノだ、顔も知らないのに、そういう気分になれるのだ。流石、思春期。


 その日、アダチは露出の多い服を着ていて、カズナリは正直喜んだ。勿論、喜んでいる素振りは見せない。仮面は便利だ。カズナリは、露出された部分をジロジロ見ながら話した。


「カズナリ君、どこ見てるの?」

「いや、特にどこというわけでもないけど」


 流石にジロジロ見過ぎていたらしい。仮面をつけていても目線でバレていたのだろうか? 油断は出来ない。


「カズナリ君のH!」



 アダチに言われて、カズナリはドキッとした。







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