はねるからすの魔法少女。

どろこ

Prologue 海の上の都市

 後部座席の窓を開けると、これでもかと潮風が入り込んできた。空の青と海の青が、小さい窓枠の中にひしめいている。遠くに潮騒が、近くに車のエンジン音が聞こえてた。


 今、わたし達家族は大橋を渡っている。

 本土とあの島を結ぶ唯一の陸路。飛行機や船でも行き来できるのだけれども、エコノミー症候群やら船酔いやらがあるので家族総出の却下。

 視線を行先に──これから引っ越すところ、わたしが住んでいく場所──に目を移した。

 第4海上都市・ハイドロポリスHydroPolis

 人口増加に耐え兼ねた日本が打ち出した人工の浮島を作るムーヴメント 、その第4弾。

 大層な名前とは裏腹に、新鮮味のない建物群が並んでいるのが見えた。少なくとも、外見上は本土と大差はないらしい。

 引っ越しは何度も経験してきたけれど、海上都市に住むのは始めてだ。

 すでにわたしの脳内は、諦観というべきか、予感と言うべきか。そういうのに覆われてしまっているけれど。

 きっと海の上で暮らそうとも、私という人間も、私の送る生活も、相変わらず暗いままなんだろう。


 わたしの名前は玄河くろかわ 鳥帳とばり

 特に取り柄のない、ちょっと後ろ向きな中学2年生の女の子。

 成績は上の下から中の上。

 好きなことは格闘ゲームとお絵描き。

 嫌いなことは運動すること、目立つこと、それから......友達をつくること。


 なんとなく、変わりはしないだろうなと思った。

 人生通算10回目の転校ともなれば、期待を持つ方が難しい。

 どうせ半年もしない内に転校させられる。そしたら築いた人間関係もパーだ。

 だからわたしの学生生活は、二度と輝きを取り戻さないだろう。


 .......あの時が来るまでは、そう思っていた。



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「ま、魔法少女!?ささみシソの葉はさみ揚げじゃなくて!?」

「キミの鼓膜はどうなってるの〜」

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