第2話 魔法少女になろう。
わたしが、キラキラ?キラキラ。きらきら.......魔法少女????
「なん、なんで、わたし、なんですか?」
理解を拒んだ脳、そしてある言葉にぶん殴られた脳を酷使して、なんとか声を絞り出した。
キラキラというワード。
かつて存在していた、己の内にあったもの。
今はもう、面影すらない遠いもの。
諦観と理性の底には、今すぐにでも飛びつきたい浅ましさが暴れだしていた。でも魔法少女はどうかと思う。
「う〜んと。強いて言うなら〜、才能があったから〜?」
疑問形。
「とりあえず変身させるから〜。ちょ〜っと大人しくしててね。」
と、コルパは急に肩に飛び乗ってきた。
「や、やるなんて一言も言ってないですけど!?」
「へんしん〜!」
有無を言わさず先手必勝。
「ああっ理不尽!!!うわぁーーーーー!?!!?」
止めるに能わず、時すでに遅し。
トイレの中は、目も眩むほどの極光で溢れかえった。
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目を開けていられない。何も見えない。
そんな状態で、体のそこかしこからファンキーな音が鳴り響いてくる。恐怖!
しゃらーん!ぴゅあーん!びしーん!もわーん!
何が起こってるの!?!!なんかちょっとスースーし始めたんだけど!?
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怪音は鳴り止んだ。変身も終わった、ぽい。
「さ、鏡で確認してきてね〜」
ガチャリと個室のカギが開けられる音。それからコルパに手を引っ張られる感覚。鉤爪がくい込んでる!!!
「い、痛いいたい!自分で歩けますか、ら........」
咄嗟に開いた目。広がる光景は手洗い場と、自分を映す鏡の姿。
いや、自分の姿が映ってるはずがない。信じられるわけがない。自分も良く知る自分はこんな......こんな......
......髪こんなツヤツヤじゃないよね!?しかもめっちゃ伸びてるし。サイドテールにでっかいリボン、今じゃできない少女趣味......まつ毛もバチバチだ!瞳も金色になってる!それと犬耳生えてるんだけど!?!?!?
「それ猫耳だよ〜」
「誰の趣味!?」
「ボクのじゃないよ〜」
段々と首から下も把握できてきた。
背格好はほとんど変わってないみたい。ショートマントに清楚系ブラウス、長袖にさらさら手袋。ミニスカートにタイツと編み上げロングブーツ。
カラーリングは全体的に黒。ところどころのリボンやフリルが精一杯かわいさを演出してるけど、先に来るのが地味というか。
魔法少女よりかは、なんというかこう.....
「.....魔女っ子じゃないんですか?」
「放送禁止用語だよ〜」
そうだけどそうじゃなくて。
「早速だけど〜、初仕事が待ってるから行こっか〜」
「あ、あの!そろそろ授業始まっちゃうんです、けど......」
あと魔法少女も辞退したいかなって......
この服装で外に出るのはさすがに......
「拒否権はないよ。」
「はい......」
感じた。圧を。
抗える芯のつよさが、わたしにはない。
わたしの学生生活、どうなっちゃうんだろう......。まあどうせ半年も続かないからいいのかな......いいのか......
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現場に向かう道すがら、コルパから魔法少女に関していろいろ話を聞けた。
といってもざっくり。
実はこのハイドロポリスには、別の世界からやってきた魔物が進攻してきてる。らしい。
それとはまた別の世界からやってきたコルパが、平和のために力を貸してくれる。らしい。
魔法少女にはいくつか特性があって、身体能力が大幅に強化されること、カメラに映らないこと、魔法が使えるようになること、らしい。
「だから2階の窓から飛び降りさせられたんですか!?」
「最短かつ目立たないルートだからね〜」
死ぬほど怖い思いさせられたのに!?
正直疑問だらけだけど、今は時間がないからまた後でと釘を刺されてしまった。
標的はこの道を曲がった先、とコルパは言う。入島前に読んだパンフレットに、たしか海岸公園があるって書いてあったような。
初仕事を前にして、急に思案が引っ込んできた。
変な汗が手袋に滲む。そのままスカートをギュッと握った。
まだ全然理解が追いついてないし、現実味を持ててない。夢を見てるかのような浮遊感。そんな状態で、平和のために戦えなんて言われても。
そんなは内心を露知らず、コルパは公園傍の雑木林にわたしを連れ込む。
鬱蒼とした木立の向こう、公園の広場が垣間見えた。
標的は公園の中。隠れて姿を見ようという算段らしい。
「アレだね〜」
「アレが、敵........!」
これから戦わなければいけない、敵。敵?
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