第12話 セイレーン皇女との結婚


「王国人ではない?」


「見ろよ」


俺は服を脱いで胸元を見せた。


「王国人ならここに王国の紋章が浮かんでいるはずだ」

「なっ、王国の文字がない?!じゃああなたは何者?」

「俺は遠い国の人間さ。王国のヤツらに呼び出されて困ってるんだよこっちも」


俺は王国のことの愚痴を吐き出すことにした。


勝手に呼び出されて勝手に戦争に行かされたこと。

まぁその他もろもろ。


「敵の敵は味方って言葉知らないか?」

「あなたは王国の敵ってことですか?」

「そうだよ。俺は王国をぶっ潰そうとしてこっちに来たんだよ。だから帝国人は誰も死なせてないだろ?」


セイレーンが口を開いた。


「大地様は王国側に拉致された新兵、しかも女性を無傷で連れ戻してくれました」

「な?!無傷で?!」


「大地様に敵意がないことは誰の目にも明らかでしょう?どこの世界に敵国に敵の兵士を無傷で送り届ける聖人がおりましょうか」


俺はヴァイスに言ってやった。


「仮に俺がスパイだと思ってるならそれは見当違いだぞ」

「なぜ?」

「こんな国内側から壊さなくても、数分あれば地図から消せるからだよ」

「ゾクッ!!!」


ヴァイスは顔から大量の汗を流し始めた。


そして、勢いよく土下座した。


「ひぃぃぃぃぃ!!申し訳ございませんでした」

「俺を怪しむ気持ちは分かるから許してやるよ」

「ありがとうございます!この御恩は忘れません!」


俺はセイレーンを見た。


「だがこの男は降格処分としてくれ。罰は必要だろう?」

「とうぜんですっ!」


「降格処分でもかまいません!ありがとうございます!ふたりとも!」


そう言ってヴァイスは下がっていった。


そのときだった。


「セイレーン様、大地様。ご結婚式の準備が整いました、」


「大地様!さっそく結婚式を行いましょう!」

「そうだね」


俺とセイレーンは結婚式を進めていくことにした。


もちろん初めての結婚式に戸惑っていたがセイレーンがエスコートしてくれたのでなんとかなった。


俺とセイレーンは神父の前にいた。


「では、ふたりとも永遠の愛を誓うキスを」


セイレーンの目は恥ずかしそうだった。


「私、初めてのキスをしてしまうのですね、ここで」


ちゅっ。


セイレーンからキスしてきた。


ものの数秒だったけど、セイレーンがどれだけ俺の事を愛しているのかが伝わってきたような気がした。


「これにて式は終わります。おふたりともお幸せに」


神父がそう言って下がって行った。


俺はそのままセイレーンとケーキの前まで歩いていった。


「すごい大きなケーキだな」


「高さ3メートル。半径6メートルの皇族仕様ですので、ふふん♩」


上機嫌なセイレーン。


そのとき、1人の男が口を挟んできた。


「大地様。我々が腕によりを込めてお作りしたケーキでございます」


ぺこり。


シェフの男だった。


彼の後ろには何十人ものシェフがいた。

どうやらこの男がシェフをまとめるシェフリーダーと言うやつらしい。


それから、そのシェフリーダーに続くように何十人ものシェフ達が頭を下げた。


「我々が責任をもって入刀いたしましょう」


リーダーはそう言って周りのシェフに声をかけた。


「誰か、包丁を」


「リーダー、すいません」


1人のシェフが話し始めた。


「紙皿はあるのですが、包丁の納品が不手際で……」

「なんだと……」


俺はそれを聞いて察した。


なるほど、ケーキを斬るための包丁がないわけか。


「魔剣」


俺は空中に巨大な剣を召喚した。


そして


「ケーキ斬り」


ズバズバズバズバ!


巨大なケーキを小さなケーキに細分化した。


そして、そのケーキを。


「移動」


シェフの1人が持っていた紙皿を奪った。

そして、魔法を使い紙皿の上にケーキを移動させた。


「はい、どうぞ」


俺はこの部屋にいた全員の手にケーキを配った。


「おぉっ?!これはすごい!」

「見事にケーキが等分されている!」

「紙皿にも一切崩れることなく載っている」

「なんという魔法の精度!素晴らしい!」


そんな声が聞こえ始めてきた。


セイレーンには手渡しで渡す。


「はい、セイレーン」

「大地様♡私だけ特別扱い……?」

「もちろんだよセイレーン。奥さんは特別さ。ふふふ」


頭を撫でる。


「キュンキュンキューン♡」


ちゅっ!


セイレーンが俺に飛びついてキスしてきた。


「セイレーン?人前だよ?」

「我慢できませんでした、お許しを大地様」

「俺はいいけど恥ずかしくないの?」

「恥ずかしくともなんともありませんよっ!ちゅっちゅっちゅ♡」


何回もキスしてくるセイレーン。


それから俺はセイレーンとケーキを食べさせ合うことにした。


「あ〜ん♡大地様」

「うん、おいしいな、セイレーンが食べさせてくれるからかな」

「きゅんとしちゃいます〜♡きゅんきゅんポイントプラス100点なのです♡」


喜んでいるセイレーン。


俺はふふふっと笑いながら気になっていたことを聞いてみることにした。


「ねぇ、セイレーン。君と結婚したけど俺の立ち位置(?)身分(?)とかっていうのはどうなるんだろう?」


王族と結婚すれば王族になるのかな?


漠然とそう思っていたんだけど。


「それが皇族にはなれません。私の旦那様という位置付けになるだけだす。擬似皇族というのが分かりやすいです」


「あ、そうなんだなぁ」


彼女の話を聞くと俺の周りへの対応は皇族レベルとなるが、それはあくまでセイレーンの夫だから、ということであり。

その関係が解消されたりした場合は俺はただの一般人に戻るらしい。


「不満ですか?その、ごめんなさい」


ぺこり。

申し訳なさそうに謝ってきたけど。


「大丈夫だよ。身分を目当てに結婚したわけじゃないから。俺はただカワイイセイレーンと結婚したかっただけだから」


「大地様ぁ♡私が皇族じゃなくても結婚してくれたということですか?」

「もちろんだよ。こんなに好きになってくれたんだからさ」

「大地様♡死んでも愛しております〜!むしろ、嬉しすぎて死にそうなのです〜♡」



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