第27話 交わるルーツ
真島さんと再会した後、あと一年あと一年って、まぁ正しくは一年以上先なんだろうけど、『会えないわけではないんだ』とか『私と会う為にそんなに時間作るの先なんだ』とか色々と感情が複雑で、あの人と関わると体調が悪くなる。
真島さんのことを
「もうどうでもいいや」
って割り切れないんだなって実感して、
「あぁ…やっぱり渡瀬のことは幸せに出来そうにないな」
と思う。
そもそも真島さんは人に興味ないって断言してたり、セックス以外では当たり強いし、録音の件とかあったのに、なんで私と会うのをやめないんだろうとも思ったり。
考えても答えは出ない。
渡瀬から電話があって、今から自宅に来ると。
「何かあったの?」
と聞くと、
「何も無くても行っても良いですか?」
って。
最近、渡瀬が可愛い。
明希と同い年だから、4つ下か。
仕事中の渡瀬だけ見てるともっといってるよな。
仕事も出来るし、風格あるし、貫禄も十分。
ほんとに会社継げばいいのに。
ついでにいい女いっぱい作って遊べばいいのに。
インターホンが鳴った。
「早いね」
「近くにいたもんで」
「どうしたの?」
「ですから、用事はないです」
「はぁ……まぁあがりなよ」
ほんとに渡瀬には幸せになって欲しいから、ちょっと触れたいなと思ってしまった自分を自制する。
最近、何度もあるんだよな。
つい触れたくなってしまう。
渡瀬は難しい顔をして何か言いたげだった。
「ねぇ、やっぱり用事あったんじゃない?」
「……母の墓についてきてもらえませんか」
「え?」
思ったより、重い話だった。
「死んでから一度も行ってなくて」
「え、なんで?」
「はるさん、覚えてますか?私も養護施設の出なんですよ」
あぁ、なんかそんなこと言ってたな。
真面目そうだし、親近感湧くなぁと思ってとりあえずアルバイトから採用したんだっけか。
「ずっと虐待されてて、引き取り手もいなかったので施設へ……母とはずっと会ってなかったんですが2年前に亡くなったと話だけは聞いてました」
「なんで、急にお墓参り?」
「はるさんとの事、ちゃんとしたいので。先に産んでくれた事だけは礼を言って区切りをつけたいと思って」
「義理深いね。てか、ちゃんとしたいって何」
「好きだとか結婚したいだとか、そういうのです」
それでなんで私を墓参りに誘うことになるのか?と思ったけど、多分一人で行くには勇気がいったんだと思う。
自分の親の墓参りすらまともに行ってない私が、明るいとは言い難いエピソードを聞いた後に、まさに今、渡瀬を虐待していたというお母さんのお墓の前にいる。
「多分、母は産みたくて産んだんじゃないと思うんですよ。好きな男がいなくなって、寂しくて当てつけみたいに私を産んで、結局私を愛せずに殴るしかなかったんでしょうね」
「やっぱり、寂しいは怒るんだね…」
「それでも小さな頃は、殴られても母親が好きで。施設に入れられた時はショックでした。捨てられたんだ、と思いました。だんだん大きくなって大人の事情も分かっていくうちに、母を捨てた男はどんな奴なんだろうって気になって。まぁ行動に移すまでに随分と時間は経ってしまいましたが。もし、その男に捨てられなかったら母は私を虐待せずに済んだんじゃないかって…。それで、色々調べてみることにして…」
「見つかったの?」
「はい。でも、とっくに亡くなってました。母を孕ませた結果、不倫がバレて、奥さんに刺されて。その刺した奥さんも自殺されてました。私を認知する間もなくという感じで、あっという間みたいでした。少なくとも母は捨てられたとかっていう話ではなかったのだと判断しました」
背中に変な汗がつたう。
私の両親は明希が産まれてすぐに死んだ。
父は母に刺されて死んだ。
不倫相手がデキちゃったとかで。
父を刺した母は自殺した。
渡瀬と明希は同い年で。
偶然がここまで重なるのは有り得ない。
渡瀬は、墓前に静かに手を合わせて
「行きましょうか」
と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます