第11話 激怒

あれから一度だけ真島さんの奥さんがうちのインターホンを押したけど、東堂さんに言われた通り無視をした。

私はいまだに無職のままで、でもまぁなんとか生きていけてた。

あ、一日のほとんど寝てるかも。

最近眠すぎるんだよなぁ。

何もしてないのに疲れるし。

相変わらず真島さんからは連絡こないし。


そんな事を考えながら、無駄にゴロゴロと毎日を過ごしてた頃、久しぶりに東堂さんから連絡があって会うことになった。


「あらかた片付きましたよ。人の気持ちなので最終的にどうなるかはお二人次第ですが…。とりあえずは離婚しないまでも、仮面夫婦のままで…という形に納められたと思います」


「何したんですか?」


「色々方法はあったんですけど、どれも得策というわけではなくて。結局、僕が奥様とセックスをして、僕は顔が割れてるのであとは秘書に任せて彼女が男とラブホテルから出た写真を彼に送りました。彼は特に離婚も再構築も言い出すことなく、毎日不機嫌そうに過ごしているようです。なので、今のところ一応は、離婚しないまでも、仮面夫婦のままで……という感じです」


「え、ヤったんですか?あの人と」


「えぇ、僕の妻の上書きです。少しは拒むかと思ったんですけどね。かなり乗り気でこられたもんだから拍子抜けしてしまって。少しだけ痛がるようにはしました」


この間から質問が追いつかない。

聞きたいことは山ほどあるのに、次から次へと疑問が出てくる。


「それ、東堂さんヤる必要ありました?」


「僕の復讐でもありますね。例えば、あなたにとって彼の上書き、どうですか?嫌じゃないですか?だからあなたの体は僕を拒んだんですよね?だから……彼の奥様も同じ思いかなと思ったんですよ。でもあっさり股を開いた。妻を愛してたわけではなかったんだなと確信したと同時に、あなたと違いすぎて、なんだか寂しくなって怒りに変わって。気付いたら彼女を拘束して、何時間もディルドを突き刺して。痛いと泣いても止めずに……あ、僕も寂しいが怒りに変わってますね」


「もういいです。聞きたくないです。あの女がどれほど痛い思いしたかなんか知ったこっちゃないですけど、聞いてたら、それ、ただのプレイじゃないですか。抱いてみてどうでしたか?穴にちんこ突っ込めて気持ちよかったですか?オナニーの見せ合いより気持ちいいに決まってますよね?」


なんだろう、マジでむかつく。

また、私の寂しいが怒り出してる。

東堂さん相手にセックス出来ない女が、東堂さんに向かって怒ってる。


「ちんこは突っ込んでないですよ。ディルドは突っ込みましたけど」


「……なんで、抱いたんですか?」


「え、いや、ですから先程も説明した通り、上書きを」


「私が惨めになるだけじゃないですか!私は東堂さんとはできなくて、大嫌いなあの女が東堂さんに抱かれて!何が復讐なんですか!これのどこが?!あっさり股開いたって言ってましたよね?そりゃ開きますよ!東堂さんですもん。私も簡単に部屋までついてったじゃないですか!それと同じですよ!私と違うって、何も違わない。同じように簡単についていきましたよ。違いは、私は濡れなくて出来なかった欠陥品!あの女は濡れてディルド突っ込める女なんですよ!もう……言ってて惨めになる。馬鹿みたい。復讐ってなんなんですか。なんで東堂さん……抱いたんですか」


涙が止まらないのは寂しくて寂しくて、怒って怒って怒ってるから。


ちょうど信号で止まった車から勢いよく飛び出して、逃げた。

東堂さんはきっと追いかけてくるんだろうな。

知ってるよ、そういう人だもん。

だから、東堂さんが追って来れないように出来るだけ遠くに、遠くに。


走って、走って、もうこのまま酸素吸えなくなって死んでしまいたかった。

あれ、ほんとに酸素吸えないかも。

もういいや。

どうにでもなれよ出来損ない。

なんで東堂さんに怒ってるはずなのに、真島さんに会いたいんだよ。

死ぬ前に、もう一回真島さんとヤりたかったなぁ、くそ。

絶対、嫁とセックスすんなよ。

他の女とも。

モテないけど、あんた意外とちょろいからさ。


殴り書きの遺書みたいな事を考えながら、私の意識は遠のいていった。

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