第13話 酔い問題

しずちゃんは、ほんとにいいの?」

「はい!私は、ぐるぐる回るもの苦手で。二人で楽しんでください。私は二人が目を回してるのを見て、楽しんでおきます♪」

「そっそう…」

私と努ちゃんは、ジェットコースターに乗る天と明ちゃんを待つ間、コーヒーカップに乗ることにした。

「じゃ、行ってくるね。」

静ちゃんに軽く手を振ってカップに乗り込む。

「なんか、どきどきするわね。」

「あはは、先輩はこういうのも苦手ですか?」

「いや~、お化けほどじゃあ。けど、楽しまなきゃ損だしね!酔うかもだけど…」

「吐かないでくださいね。」

「回しすぎないでね。」

スタッフさんが始まりの合図を出すと、ゆっくりと回り始める。

「こんくらいがちょうどいいね。涼しいし…」

「けど、つまらないでしょう?」

「ちょちょ!ストップ!」

「あはは、冗談ですよ!」

三半規管に悪い冗談だ。

「まあ、私も酔いに強いわけではないですから。のんびり回りましょう。」

「そうね。……そういや、酔うで思ったんだけど…」

「なんです?」

「自分に酔うって言葉あるじゃない?あれって酔いすぎたら、吐くのかしら。」

「どんな疑問ですか。」

「いやでも、わざわざそんな言い回しをするんだからねえ。」

「うーーん、どうでしょう。自分に酔うって言うのは、自分をかっこいいとか、自分を好きとかの度合いが激しいことですよね。あまりにもいきすぎると、気持ち悪くなりそうですけどね。」

「周りが?」

「そうですね。周りの人が気持ち悪くて吐くかもですね。」

「そうなったら、相当のナルシストね。でも、自分に自信があるのはいいことだわ。」

コーヒーカップはゆっくりと回っている。

「あと…刑事ドラマとかで、情報を吐け!とか言うじゃない?あれは、情報に酔ってるってことなのかな。」

「なんでもかんでも、文字通り受け取るもんじゃないですよ。」

「分かってるわよ。あくまでそう言う体での話。」

「……そうですね、まあ酔うんじゃないですか。たくさんの文字とか見すぎたら気持ち悪くなったりしますしね。」

「確かに、テレビとかずっと見てるとしんどいもん。あれがいわゆる情報に酔ってる状態なのかもね。」

「そう考えると、酔うという言葉はいろんなことに使われてますね。」

「そうね。ラッパーとかもYOYO言ってるし。」

「それは違うでしょう。」

「にしても……酔ってきたわね。普通の意味で。」

「…早くないですか?結構ゆっくりですよ。」

「いや、ゆっくりだからこそよ。」

「じゃあ…」

しまった!私が気を抜いていると、努ちゃんはカップのハンドルをつかみ、勢い良く回した。

「ちょっ!!」

ぐるぐると回る。先程まで優しかった風が激しくなる。

「わー!止めてー!」

「けど、気持ち良くないですか?」

「確かに……酔いもましに…ならないよ!?」

コーヒーカップが止まる頃にはくたくたで、努ちゃんもふらふらしている。

「回しすぎちゃいました…」

「あはは…ばかね……うう…」

「二人とも楽しんだようで何よりです♪」

「まあ、楽しくはあったかな。」

「よかったです!じゃあ、次はあれに乗りましょう!」

「えっ」

静ちゃんが指差したのは……メリーゴーランドだった。

「いや、静……私たち酔って…」

「行きましょう!」

「静ちゃん…勘弁を…」

「行きましょう♪」

静ちゃんはいつになく笑顔で言う。

「うう…」

頭がぐわんとする。どうやら、静ちゃんに酔ってしまったらしい。


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