第3話「魔女とカップ麺」
…結衣が会社に行っているときにウルウは暇をしていた
とは言えど基本的には本を読んでいる。だが本の数はあれど、ウルウの速読は早いものである
チラチラとページを読んで、そしていつの間にか読書を終了させる。そこまでの早さだった
魔女なので空腹や暇は耐える人間。あまり栄養を必要としない。そんな彼女である
「ふうん。結衣って結構な読書家…なかなかなものね」
一行を見てすぐにまた一行を見て次のページへとめくる。それを繰り返していた
多分そのペースならきっと全ての本を読み切るだろう。そこまでの早さだった
「ふふーん。昼ごはんでも食べようっと。あら?そういえばこの現代ってお金、どうなってんのかしら」
まずそこからである。結衣には何ももらってないので冷蔵庫というものを調べた
冷蔵庫を開けると色々なものがあった。これは全部結衣が買ったものだろうか?
「そうねえ…。特に何もないわ。うん?冷蔵庫の上にあるのが何かしら」
冷蔵庫の上に何か箱のようなものがあった。それを持って見てみる。そこにはプラスチックのカップがあった
「…カップ麺?なにこれ。えーと。熱湯3分って?」
昭和に生きたウルウなのでこういうのはちっともわからないが、直感で美味しそうとは思った
「熱湯…私の熱魔法で熱湯にすればいいわね」
ウルウは早速水を用意した。やかんがあったので水を入れて、やかんに手を当てる
「…我が熱の魔法よ!沸騰せよ!」
この魔法。熱を加えるという魔法は単純でシンプルだ。ただ、物を手に当てて魔法を唱えればそれだけで終わる
そんな魔法を唱えて、やかんはすぐに沸騰した。封印されていたけどまだ大丈夫だった
「…で。カップ麺の蓋を開けて熱湯…を注ぐ。と」
やり方どおりにウルウは熱湯をカップ麺に注ぎ。3分待った。待つ時間は大して苦ではない
3分待ち、蓋を開ける。すると美味しい香りがして食欲が出てきそうな麺があった。ウルウは今までにない実感を湧いた
「これ…どうやって食べるのかしら…箸?フォーク?」
キッチンに行きそれっぽい箸で食べることにした。とはいえ菜箸ではあったが
菜箸でゆっくりと麺をつかみ。熱いのでちょっとふーふーして口に入れた。そして口の中で噛む
「…なんて美味しいものなの!?これが現代の食事!?信じられないほど豪華なのね!?」
もうそうなったら食べる勢いは止まらない。食欲をそそる香り。麺が美味しい。スープだって美味しかった
ウルウは気がついたらすでに全部食べていた。こんな美味しい現代の食事。とても素晴らしいと思った
「いや~…。結衣がこんなの食べてたなんて思いもよらないことだったわ」
カップ麺で満足したウルウは再び本を読もうとしていた
~
「…ふー。今日もいっぱい働いた。と」
夕方。結衣は仕事を終えて退勤。会社の入口まで来た。あのウルウという人物はまだまだ謎が多い
もっと話さないとだめだなと思った。そう思い、辺りを見渡した。すると会社となりの裏通りから手があった
褐色の手。これは間違いない。ウルウだった。結衣はもちろんその場所に向かう。すぐそこだった
「ウルウ!」
わかった人物に結衣は言う。もちろんウルウだった。ほうきを持ち、待ってくれたのだ
「結衣。仕事っていうの終わったのでしょう?帰るわ」
「うん!」
ウルウがほうきにまたがり、結衣はその後ろに乗り、乗ったのを確認するとふわっとほうきが空中に浮かんだ
ある程度ほうきが宙に浮くとほうきは結衣の家までひとっ飛びした。その速度はあまりにも早い
「ねえ結衣。今日さ、本をたくさん読んだしカップ麺っていうとびきり美味しいもの食べてたのよ」
「そうなんだ。本はいいけどカップ麺なんか食べて大丈夫だったの?」
ウルウはちらっと結衣を見て言う
「とても美味しいものだったわ!あれを食べて現代の人は強くなっているのね!」
…でもあれは食べ過ぎると栄養失調で倒れてしまうからたくさん食べるのはオススメできないが…
そうだ。今度から少しでもウルウに昼ごはんを食べるお金を用意しないといつもカップ麺じゃだめだろう
カップ麺の他にも美味しくて栄養のあるごはんなんていくらでもあるからね…そう考えた結衣だった
~
「ただいまー!」
玄関の鍵を開け…ちょっと待て?なんでウルウは玄関の鍵を知ってるのか?
「ねえウルウ?なんで私の部屋の玄関の鍵わかったの?」
「え?だってわたしてくれたじゃない」
あ…そうだわたしていたんだった…仕事ですっかり忘れてしまっていた
「カップ麺を食べたっていうけど…ああこれね」
ウルウが食べたとされるカップ麺がわかった。ロングセラーものを食べてのだろう
「結衣。貴女の本、きれいに読んでまとめたからね」
え!?結衣は見ると散らかっていた本がきれいにまとめてあるのに気づいた
「あ、ああ~。ははは…ありがとねウルウ」
もしかしたら魔女というのは整理整頓も基本なのかもしれない。また改めてそう感じた
しかし結衣は思った。このウルウという魔女。これは外に出る服装ではないなと思う。これはハロウィンのコスプレである
「ねえウルウ。今度服買いに行かない?」
「え?服?これじゃあだめなの?」
だめではないが…コスプレである
「ウルウの今着てる服装ってコスプレになっちゃうんだよ。外じゃこんなの目立つわよ」
「コスプレって、なあに?」
…まずそこから説明しないといけないのか
「コスプレっていうのは…えー…変装ってわかるかな。失礼だけど変な服装なんだよ。現代ではそういう服装は似合ってないの」
そう言われるとウルウはすぐに理解をしてくれた
「そうなんだ。わかったわ。地味な服でいいからどこか呉服店に行きたいわね」
…どうして呉服店なんて言うのだろう…普通の服屋を意味してるのだが
「ご。呉服店じゃなくて普通の可愛らしい服屋があるんだよ。地味とか言ってるけどウルウ地味じゃないよ」
「へえ!行ってみたいわ」
納得してくれたのかわからないが、一応納得はしてるのだろう
「じゃあさ。原宿って言う駅に行こう。あそこは可愛らしい服を売ってるとこ多いし!」
「…駅って?」
…また現代用語がわからないウルウさんになってるよ~!
「JRってわかるかな?電車っていう人をたくさん乗せて動く機械の塊のようなものがあって、それで移動して駅ってとこに行くんだよ」
「す、すごい!それって科学の結晶って意味!?そんなのに乗ってみたいわ~!」
まあ。ただすぐに理解をしてくれるだけ幸いか…
「だからね。ほうき。あれあるでしょ?あれはだめなんだよ。原宿は人混みが多いし裏通りでも人がいる。普通に行くのが一番よ」
「あら。じゃあほうきは持っていけないのね。残念だわ」
お、これもすぐに理解してくれた。ウルウの言った通りほうきにはステルス搭載されているが、人混みの中ではまずいだろう
この世の中に魔女が他にいるかわからないが、一応今わかっているのはウルウのみだから…
「よし!じゃあ休日に行こう!」
「ええ。楽しみだわ!」
ウルウが言うとお腹の音がぐぅ~と鳴った。もしかしてお腹すいたのか?
「…お腹すいたウルウ?」
「カップ麺ひとつ食べただけで満足しちゃったからかしら」
今度はごはんを作らないとだめなのか…いつもやってるどおりに作ろう
「じゃあ、ごはん作るからね」
お願いします~」
笑顔で言ってくれるウルウ
次は服屋
原宿って色々あるしなあ
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