異世界でろくでなしデブに転生した俺の逆転愉快な冒険譚・どうやら世界を救うことになるみたい。
ぼん@ぼおやっじ
ろくでなしおデブに転生した俺、追放される。らっきー?
01-01 精霊たちはとっても困っている。
第1話 精霊たちはとっても困っている。
それはとある世界に属する、ある種の上位世界だった。
あるいは『意思』の世界というべきか。
ひょっとしたら『神界』とか『アストラル界』とか言うのかもしれない。
そこに今さまざまなかけらたちが集まり情報を交換し合っている。
それは各々の欠片がきらめき瞬くように発信される情報の奔流で、基本的に人間に理解できるようなものではなかった。
ただそれでは話が進まないので、少し意訳をしよう。
【?】:こまった、こまった、このままでは直に邪神の封印が溶けてしまう。
【?】:解けてしまうじゃね?
【?】:どっちでもおんなじ。
【?】:いや、ちゃうやろ?
【?】:そんなことはどうでもいいんだよ、このままだと大昔にやっつけたあいつらがまた目を覚ましちゃう。
【?】:うむ、由々しき問題だね。
【?】:どうしたらいいんだろう?
【?】:またやっつければいいんじゃね?
【?】:できる?
【?】:一回やったからできるのでは?
【?】:はーい、無理だと思います。
【?】:そうよな、あの頃は人間たちと我々はもっと近しく、互いに協力関係にあった。
【?】:そうなのよ、あのあと、世界のありようが少し変わっちゃって、私たち、思うように人間たちとコミュニケーションが取れなくなったんよー。
【?】:しかし、奴の復活は間違いないのか?
【?】:間違いないみたいだよ。すでに目を覚ましてじたばたしている。
【?】:その所為で魔物たちが活性化している。
【?】:よくないな。あやつらの所為でわれらの力は届きにくくなった。
【?】:はーい、質問、邪神てなんですか?
【?】:そこからかい!
【?】:まあ、仕方あるまい、大昔のことだ。
【?】:つまりね、ずいぶん昔に世界の壁に穴をあけて、私たちの世界を乗っ取ろうとしたやつがいるのよ。
【?】:そうそうそうじゃったわい。
【?】:そうじゃったかい?
【?】:その時は人間たちと協力して、なんとかやつを弱らせて。
【?】:地中深くに封印したの。
【?】:それが
【?】:邪神の悪影響はそれでもおさまらずに地を這ってあちこちに迷宮という形で世界にゆがみを作ってる。
【?】:世界を満たす力と結びついたです?
【?】:世界に魔物があふれたのはその影響だな。
【?】:なるほど、つまりニキビですね?
【?】:「「「「「「ちゃうやろ」」」」」」
まあ、意訳してもあまりわからない。
ちょっと端折ろう。
【?】:やむを得んな。我々との距離が遠くなったといっても相性の良いやつはいる。
【?】:そうやね、それやったら相性の良い相手にちょっと肩入れしたってもええんちゃう?
【?】:うむ、勇者を作るわけだな。
【?】:聖女とかもいいよね。
【?】:賢者も行けるんちゃう?
【?】:剣聖とか。
【?】:拳聖とか。
【?】:牽制とか?
【?】:「「「無理はやめとき」」」
【?】:必ずしもすべてがうまくいくとは限らないが、きっと志のある者、才能のあるものが答えてくれるだろう…少しは…
【?】:「「「「すこしはかい!」」」」
【?】:そしてその中から邪神を再度封印し、世界を守ってくれるものが現れると思う。多分。
【?】:「「「「多分かい!」」」」
【?】:「でもそれが一番おんとうなの」
【?】:「多少はモチベが上がるように何かした方が?」
【?】:「「「「「「さんせー」」」」」」
【?】:ではそういう方向で世界を守ろうではないか。
【?】:「やったー、せかいはまもられたー」
【?】:ぱちぱちぱちぱちぱちぱち・・・
そしてその世界は喝采に満たされた。
ちょっとノリが不安であった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ぶぎょおぉぉぉぉぉぉぉっ。ぶひっ?」
室内に変な声が聞こえた。
「はっ! なんだ? ブヒって…」
俺はその声に驚き、それが自分の声だと気が付いて驚き、身を起こそうとしてイタタとそこで停止してまた驚いた。
痛みで止まったからではない。
「うごごご、おきれないーーーーっ。あー、腹筋が全く機能してないーーーーーっ。はらのにくがじゃまーーーーっ。ありえねーーーーーーーっ」
そう、起きようとしたのだが、腹筋の力が足りなくてそこで止まってしまったのだ。
腹筋が筋肉じゃなくて死亡になってる。いや、脂肪になっている。
つまり腹周りがふとましくなっている。
「なっ、なんだこれは!」
俺は自分のスタイルに関してそれなりに自信を持っていたのだ。基本的に体を鍛えることが好きだからね。最初はつらかったが、腹筋が割れてきたころから楽しくなって、継続している。
だがそれは今、見る影もない。
なぜだ?
「のへ」
自重に負けて倒れこんで、気がつく。
知らない天井…ではなく知らないベッドが見えた。
俗に言う天蓋というやつだ。
「どっ、どこだここ!」
天井は高い、ベッドはでかい。そして天蓋付きだった。
生まれてこのかた、天蓋付きのベッドなぞ使ったことはなかった!
本気で状況が分からない。
周囲をじたばたと見回すが、端にいたせいかこの立派なベッドから落ちてしまう。
「うごっ、ケツが痛い」
ドスンという落ち方で、自分の体がかなり重いことに気が付いた。
ぶよん、ぼよよんというかんじだ。
じたばたと、そして横に転がって何とか起き上がった。
そして目に入る異常事態。
手の指がなぜかソーセージみたいになっている。腕もハムみたいだ。
しかも短い。
俺は結構なオタクだったので、こういう場合は一つの単語が浮かんでくる。
すなわち。
――異世界転生――
「ひょっとして、オークみたいな生き物に転生したのか!」
背筋が寒くなる。
この腹とか手とか、その可能性はある。様な気がする。
慌てて周囲を確認した。
どこか、ヨーロッパの古風な部屋のようなつくりのあれやこれやが配置されている。かなり高級な部屋なのではないだろうか?
「となると、ある程度は文明を持った種族…
あっ、鏡がある」
何とか起き上がり、鏡の前に進んでいく。大きな姿見で、枠が飴色になった、年季の入った高級品のように見える。
おそるおそる覗き込むと…
「ひっ、あっ、よかった。人間だ!」
一応人間だった。
あくまでも一応だけど。脂肪の塊か! というぐらいにふくよかなガキがそこには映っていた。
だから一瞬はドキッとした。
髪の色は銀色。青みがかっている。瞳は紫、アメシストみたいだ。
目つきが悪い。ちょっと顔をぐりぐりして修正。
うん、ましになった。
うん、顔の造形は悪くない。痩せたらイケメンじゃね?
色白でちょっとだけ美少年。痩せていたらすごい美少年。
そんな子供。
だが、かなり太っているせいでいろいろ台無しにはなっている。
見覚えはないな。
俺は日本の成人男子、の、はずなのに知らない子供が映っている。
10歳か、もう少し上ぐらいだろうか。
感覚的に言えば小学生だ。
驚いて思わずラジオ体操をしてみると鏡の中のそいつも鏡写しにそう動く。
まあ、すぐに息が切れてやめたけど。
後お肉がブルンブルンして見苦しい。
だが、以上の結果から、それが自分であることは間違いないようだった。
つまり異世界転生確定か?
「うーむ、こ・い・つ・は…だれ…」
ピキーン!
「ずだだだだだっ」
自分の状況を思い出そうとしたら頭痛が襲ってきた。
そして同時に沸き起こる情報の津波。
【エミリオ・トニトローザ】
頭に流し込まれる膨大な情報。
それはエミリオと呼ばれる少年の、12年間の情報…
俺は愕然とした。
「こいつマジでクズじゃねえか!」
異世界に転生したら信じられないようなクズ野郎だった件。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます