第14話 生活の知恵

 「今はね、これを使ってるんだ。」

朝陽は隣の部屋から丸いテーブルの真ん中に座る所が付いているものを転がしてきた。

「歩行器。リサイクルショップで見つけたんだ。これに座らせて……。」

朝陽は里奈をその座る所に入れた。歩行器は、テーブルが付いている椅子で、キャスター付きだから歩いて移動できるのだ。そして、どこへ行ってもその丸いテーブルのせいで本棚などに手が届かない。

「はい、おもちゃ。」

朝陽はカラフルな玉がいくつも連なっているおもちゃを取ってきて、そのテーブルに置いた。里奈はそれをカチカチといじっている。なるほど、そうやって独りで遊ばせておくのか。

「そのうちこれも小さくなるからね。そうしたらベビーサークルってのを買うかな。」

朝陽が言った。

「どうやって知るの、そういう情報。」

「保育所の先生に教えてもらったり、後はネットで調べるとか。」

朝陽はしゃべりながら台所で色々と準備を始めた。里奈のご飯を作るのだろう。

「俺、あんまり役に立てなくてごめん。」

「何言ってるんだよ。祐作さんは充分過ぎるほどやってくれてるよ。」

ちょっと笑いながら朝陽はそう言い、言いながらも鍋を火にかける。

「仕事、順調か?」

里奈の隣に座り込んで、朝陽の背中に聞いてみた。

「ああ、うん。今度大きな舞台があるんだ。バックダンサーだけど。」

「へえ、楽しみだな。」


 里奈のご飯が出来て、朝陽が食べさせている間、奮起して大人のご飯を作る事にした。が、色々調べても材料がなかったりして無理。

「やっぱり、近くのコンビニで買って来るか。あ、それよりウーバーで頼む?マックデリバリーとか?」

「やっぱり贅沢だな、祐作さんは。俺はインスタントラーメンでいいのに。」

朝陽がそう言ったが、

「俺が来た時くらい、いいだろ?そんな、大した額じゃないから、気にしないでご馳走になってよ。俺はお前と一緒に食べられるなら、2倍や3倍払ったって構わないんだから。」

「まーた、甘い事言って。」

鼻に皺を寄せた朝陽。だが、俺は気にせずスマホで夕飯をチョイスする。

「でも、毎日だったらそういう訳にはいかないよな。一緒に住むなら、ちゃんと買い物をして、夕飯は家で作った方がいいよな。な?」

注文は終えたが、朝陽と一緒に暮らす事を考えたら、いつもデリバリーを頼むのは良くない気がした。だが、朝陽は何も答えなかった。

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