第239話 アリエッタ姫の企み
貴族のお尻カイカイ騒動の後始末で、キモヲタは王城やルートリア連邦議院、アシハブア王国大使館に何度も何度も呼び出される状況に追い込まれてしまいました。
見たくもないモリトール姉弟やフォンベルト議員とも何度も顔合わせすることになり、キモヲタのストレスは限界突破。そのせいで甘味のやけ食いに走ってしまい、ますます体重を増やしてしまうのでした。
ただ王城に出向いたときは、必ずアリエッタ姫がキモヲタの様子を見に来てくれました。キモヲタに会う度に、アリエッタ姫は優しくその手を取って労ってくれるのです。このひとときだけが、キモヲタにとって心のオアシスとなっているのでした。
「あの騒動を収めた貢献者である卿に、何度も足を運ばせてしまい、本当に申し訳ありません。本来であれば、王国から褒美を出すべきところですのに……」
その騒動を自分のスキルで拡大したのが自分であることは、アリエッタ姫には黙っておこうと心に決めていたキモヲタなのでした。
アリエッタ姫と何度も話をするうちに、キモヲタも戦災によって力を失っている現在のカザン王国とルートリア連邦、そしてアシハブア王国の立ち位置をなんとなく理解するようになりました。
アリエッタ姫の手がキモヲタの手の上に重ねられた瞬間、姫の後ろに控える護衛騎士から鋭い視線がキモヲタに向けられます。
ソープランドを建設して北西区の復興を助けたとはいえ、他国の貴族かどうかも怪しいキモヲタに、一国の王女がどうしてここまで親身になって寄り添ってくれるのか。
その理由を今のキモヲタは何となく想像できるようになっていました。
(我輩がアシハブア王国のドルネア公や護衛艦フワデラのヴィルミカーラ殿とのつながりを持っているからでござろうな。そうでもなければ、これほど美しいお姫様が我輩の手に触れるなどありえんでござる)
何か企みがあってのこと。
そうは思っても、アリエッタ姫の煌めくサファイアのような瞳に見つめられてしまうと、胸がドキドキと早鐘を打ってしまうキモヲタでした。
~ 帰宅 ~
無駄に神経と体力をスリ減らす一日を終えて、ようやく家路についたキモヲタ。
キモヲタ邸に着いたのは夕暮れ時の始まる頃で、優しい夕日がキモヲタ邸を照らしていました。
玄関の扉を開くと、キーラとソフィアがキモヲタ出迎えてくれます。
「キモヲタお帰り~!」
「キモヲタ兄さま、お帰りなさい!」
玄関に入ってきたキモヲタの姿を見るや、二人はぴょんぴょんと跳ねるようにキモヲタの前に飛んできました。
「た、ただいまでござる」
疲れた表情で応えるキモヲタ。
「ふふ♪ キモヲタ、今日もお疲れさんだね。ご褒美にすっごく美味しいもの食べさせてあげる♪」
そう言って目の前で尻尾をフルフル回転させ、耳をピョコピョコさせ、ニッコリと笑顔を向けてくるキーラを見て、たちまちヒットポイントが全回復するキモヲタなのでした。
「キモヲタ兄さまのために、キーラ姉さまと一緒にお料理を作りました!」
ソフィアが首を横に傾けると、サラサラの銀髪が流れるように下がります。その優しい青い瞳に見つめられ、笑顔を向けられたキモヲタのマジックポイントは一瞬で全回復するのでした。
「ふぉおおお、それでお二人ともエプロン姿なのでござるな! どんな料理か分からんでござるが、絶対に美味しいに決まっているでござるぅ!」
意気込んで食堂に向かおうとしたキモヲタですが、さすがに実の体力と精神の疲労が大きかったのか、少しよろめいてしまいました。
「とっとと……」
慌ててキモヲタを両側から支えるキーラとソフィア。
「ちょっとキモヲタ、大丈夫!?」
「兄さま!」
「だ、大丈夫でござるよ。ちょっと足が躓いただけでござるから」
キモヲタの大丈夫を信じない二人はそのままキモヲタを支えて、食堂へと向かうのでした。
その日の晩は、キーラはキモヲタのベッドで一緒に眠りました。キーラは、キモヲタが耳に鼻を入れるのも、尻尾を触るのも、好きにさせてあげました。
ただ尻尾の根元を触ろうとしたときには蹴飛ばしました。他にもキモヲタが何かエッチなことをしようとしたら蹴飛ばすつもりのキーラでした。
が、
今日も王都を駆け巡って披露困憊だったキモヲタは、キーラの耳の匂いを嗅ぎ始めて数分もしないうちに寝落ちしてしまったのでした。
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