第102話 キーラたんは奴隷ではござらん! 奴隷ロリ天使でござる!

 ボルギノールに滞在しているキモヲタ一行。


 賢者の石についてさらなる情報を集めるのと、路銀を稼ぐために、この街のギルドで仕事を探すこととなりました。


 ユリウスが受け付けで、冒険者パーティの登録を行っている間、キモヲタたちはギルド付属の酒場で食事をしながら待つことになりました。


 酒場には多くの冒険者たちが集っていて、それぞれが自分の仲間たちと楽しげに話をしています。


 普段から人の出入りが多いためか、キモヲタたちが入ってきても、ほとんど誰もが気にも留めず、自分たちの話に夢中になっているようでした。


「何か嫌な感じね……」※セリア

「ぶしつけな視線を感じます」※エルミアナ

「まぁまぁ、アナタたちが魅力的だから仕方ないわよ」※エレナ

「エレナのおっぱいもいっぱい見られてるよ」※キーラ


 どうやら気づかなかったのはキモヲタだけで、冒険者たちはしっかりとキモヲタ一行を値踏みしていたようでした。


 食事を進めている間、ときおりエルミアナとキーラの耳がピクピクと動いていました。あらゆるフェチを極めたキモヲタは、当然ながらエルフ耳やケモ耳フェチでもあります。


 彼女たちの耳がピクッとするたびに、キモヲタはおいしくエールを飲みながら、その様子を脳内に録画するのでした。


 二人の耳ピクを堪能し終えたキモヲタ。


 酒場の中にいる他の亜人の耳を探そうを視線を走らせますが、残念ながらエルフは数人しかいませんでした。しかも、女性のエルフはひとりだけで、そのほとんどがエルフ男だったのです。


 ケモ耳系の亜人女性もいるにはいましたが、キモヲタが目にすることができた全員が、首輪を付けられていました。


 パーティメンバーとの会話を、笑顔で聞いている彼女たちのケモ耳がペタンとなっているのを見たキモヲタは、彼女たちが奴隷か奴隷のような立場であることを確信しました。


「ここの連中、なんだか亜人を奴隷のように扱っているようでござるな。まったく! 不快でござるよ」


 キモの小さなキモヲタが、他の冒険者に聞かれないようセリアにこっそりと耳打ちします。


「キーラを連れ回している癖に、よく言うわね」


「キーラたんは奴隷ではござらん! 我輩のロリ天使ですぞ! 訂正してくだされ!」


「キモッ! キーラに奴隷紋を入れて縛っておきながら天使呼ばわりとか、超キモイんですけど!」


「なっ! 確かに奴隷紋は入ってござるが、我輩、決してキーラたんを奴隷などとは思ってござらんよ。って、いや奴隷でロリ天使でござるか……奴隷ロリ天使、もしくはロリ天使奴隷……なかなか妄想がはかどりそうで悪くないでござる」

 

「キモッ! キモヲタ、キモッ!」


 セリアがフォークを使ってキモヲタを威嚇していると、キーラがひそひそ声で二人を叱りつけました。


「ちょっと静かにしてよ! 周りの連中にもボクらの会話に耳をそばだててるのがいるんだからね!」


 キーラの言葉に小さく頷くエルミアナの冷たい視線を受けて、キモヲタとセリアはすぐに口を閉ざしました。


 セリアがフォークの柄の方でキモヲタをツンツンと突きながら、


「キモヲタのせいで怒られたじゃない」


 と文句を言うと、キモヲタはなんだかご褒美をもらった気分になってニマニマと笑いを浮かべるのでした。


 その笑顔を見て、セリアがより一層キモがっているところに、ユリアスが戻ってきました。


「パーティ登録終わりましたよ。中級までのクエストなら受けることができるようです。えっと、掲示板に緑の印が付けられているものですね」


 カザン王国には複数のギルドが存在し、ギルドごとに評価方法は異なっています。大きな街にもなると複数のギルドが、それぞれ違う種類の等級を持っていることなどは珍しくありません。


 そのため系列の違うギルドでクエストを受ける場合、各ギルドが独自で作成した等級対応表を使って判断することが多いのです。ですが、それが必ずしもあるとは限りませんし、また正確であるか保証されているわけでもありません。


 なので実際には、冒険者は自分が所持している冒険者資格を提示し、ギルドと交渉することになります。そしてギルドが判断した冒険者等級の、一段下の難易度のクエストまでが受けられることが多いのでした。

 

「アシハブアでも一流の騎士がここでは中級の扱いなのね……」


 セリアが不満そうに口にしました。


「古大陸でもゴールドクラスの魔法剣士も、ここでは中級の扱いだね」


 そう言ってユリアスがセリアにウィンクを送ると、セリアはため息をついてから立ち上がります。


「とりあえずどんなクエストがあるのか見てみましょう。中級でもなんでも、報酬が多ければそれでいいし」


 セリアに続いてキモヲタも立ち上がります。


「そうでござるよ! それも楽して稼げるならなお良いのでござる!」


 楽して稼げるという言葉を聞いて、エレナがキモヲタに向って言いました。

 

「それなら私にいい考えがあるけど……。でもまぁ、今はクエストを先に見た方がいいかもね」


「ボク、報酬にお肉がもらえるヤツがいいかな!」


 そしてキモヲタたちは、楽して稼げる中級クエストを探しにギルド掲示板に向うのでした。

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