第60話 隠れ里に到着! 絶対、怪しいでござるよな。
キモヲタが煮込んでいたカレースープ。その鍋の中を、いつの間にか現れた二人の小人が覗き込んでおりました。
一瞬、二人が子供に見えたキモヲタでしたが、一人は顎鬚を生やしており、もう一人は子供にしては立派な胸を持っていることから、彼らがこういうサイズの種族であることに気がつきました。
「だだだ、誰でござるかお主たち!?」
後ずさりしながら尋ねるキモヲタに、二人は不思議そうな顔を向けながら答えます。
「ぼくはミミだよ」
「わたしはノノア!」
「そ、そーでござるか。我輩はキモヲタというしがない
「村に帰ろうとしてたら」※ミミ
「いい匂いがしたから」※ノノア
「「来た!」」
「ほ、ほう……なるほどなるほど。そうでござったか……」
キモヲタがユリアスに判断を求めて視線を向けると、ユリアスは困った挙句、視線をセリアに向けました。
セリアが一切躊躇なく、そのまま視線をエルミアナに送ると、エルミアナが困り果てて視線をキーラに向けました。
そしてキーラはキモヲタに向って元気よく頷いて返しました。
(結局、我輩に判断を任せると!?)
「メェェェェエエエ!」
その通りだと言わんばかりのタイミングで、キンタが鳴き声を上げました。
「し、仕方ないでござるな。こ、ここは男としてキモヲタが頼られたということ、皆の期待には応えねばなりますまい」
セリアが「それはない」と言いかけたところに、声を被せるようにキモヲタはミミとノノアに話しかけました。
「そ、それはちょうど良いところへお越しくださったでござるな! 今、おいしいスープを作っていたところでござるよ。折角なのでお二人もいかがですかな?」
「うん! ご相伴に預るよ!」
「ありがとー! ゴチになる!」
そしてキモヲタたちは、ミミとノノアをまじえて夜食をとることとなりました。
カレースープを美味しく食べながら、キモヲタたちはミミとノノアに色々と話を聞きました。
どうやら二人は、ここからそう遠くない場所にある小人の村の住人で、森の中へ採集に出掛けていた帰りだったようです。
二人は、カレーをご馳走になったお礼をしたいからと、キモヲタたちを自分たちの隠れ里に案内してくれると言いました。
小人の隠れ里と聞いて、もしかすると賢者の石について、新しい情報が得られるかもしれないと考えたユリアスの判断で、キモヲタ一行はミミとノノアの提案を受け入れることにしたのです。
「ここからもうちょっと歩くだけだよ。月明りが入る道を通るからランタンもいらない。村には客人用の空き家があるから、今日はそこに泊まって行ってよ。ベッドもあるよ」
泊まる家とベッドと聞いて、キモヲタたち全員が腰を上げました。野営が続く冒険者たちにとって、ぐっすりと眠れる場所が得られることは、とてつもなく魅力的なものなのです。
「それじゃ、出発~!」
「進行~!」
~ 小人の隠れ里 ~
そこは一見すると、草木が生い茂った森のよくある光景にしか見えませんでした。
「ちょっとここで待ってて!」
「待っててね!」
そう言ってミミとノノアが藪の中へともぐりこんでいきました。
それから待たされること10分。
もしかして、自分たちは森の魔物にかどわかされたのではないかと、キモヲタたちが不安を感じ始めた頃。
ザザザザザザッ!
目の前の藪がまるで自動ドアが開くかのように左右と上下に引いていきました。
すると何と言うことでしょう。キモヲタたちの目の前には、明るい灯があちこちに照らされた、沢山の小人たちの喧騒で賑わう隠れ里が広がっていたのです。
「こんな森の奥に、これほどの街があったなんて……」
そうユリアスが呟くと、あまりにも予想外の景色に心を奪われたキモヲタたちも、口を揃えて驚きの声を上げました。
隠れ里の様子を見てキモヲタは、片田舎の山すそにある小さな神社の縁日を思い出しました。屋台が集まっているその一角だけが、とても明るくて賑わっていて、それ以外は完全な暗闇に包まれている。
それと同じような景色が目の前に広がっていたのです。
「それにしてもこの明るさ……魔鉱灯やランタンよりずっと明るい」
エルミアナが感嘆していると、ミミとノノアがやってきてキモヲタたちを村へ招き入れました。
「村長が御礼を言いたいって!」
「御礼が言いたいって!」
まずは村長に挨拶をと、村長宅へ向かったキモヲタ一行。
白髭のおじいちゃん小人の村長は、挨拶もそこそこに、ミミとノノアが食べたカレースープなるものに興味津々。
仕方なくキモヲタは、残り少なくなってきたカレーの袋を開けて村長に振る舞うのでした。
「おーっ、これは何という旨さ! これは冥土への良い土産ができましたわい! わははは。お客人の皆様、空き家でよろしければ、いくらでも泊まっていってくだされ!」
こうしてカレースープに大変満足した村長から歓待を受けたキモヲタたち。
その日は夜も遅かったので、詳しい話はまた翌日ということにして、その日は、柔らかいベッドの上でぐっすりと眠りにつくことができたのでした。
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