第55話 コスプレ冒険者パーティーでござるよ。デュフフフ!

 キモヲタが異世界人であることを、今さらようやく理解したユリアスたち。


 だからといって、特にキモヲタの事を改めて見直したり、見下ろしたりするようなことはありませんでした。

 

 というか最初は、セリアなどはキモヲタのことを人間の言葉を話す怪しげなオークくらいに思っていたので、異世界人という属性を知って、ようやく「あぁ、人間だったのね」くらいの感覚だったりするのでした。


 他の三人も、最初からキモヲタのユニークスキル【足ツボ治癒】と【お尻かゆくな~る】で大概驚いていたというか、キモヲタに違和感を抱いていたので、「まぁ、キモヲタだし」くらいの感想しかありませんでした。


 とはいえ、キモヲタの【ネットショップ】について聞かされた四人は、物欲を隠すことなく欲しがりさんとなって、キモヲタに色々とおねだりを始めるのでした。


 キーラと同じシャンティをキモヲタから手に入れるために、突然、キモヲタをおだてたり、誉めそやしたり、なにかとチヤホヤするようになった三人。


 その結果、キモヲタの「すぐに村を出発したい」という要望もキーラを含めた全員からOKが出て、すぐに村を出発することになったのでした。


 そして村を出るキモヲタたちを、アイシャ村長をはじめ、村人たちが総出で見送ってくれたのでした。


「キモヲタ様、わしと子作りしたくなったときは、いつでも戻ってきてくだされ。しゃーっ、しゃっしゃっ!」


「うっさいわババア! ……けどまぁ、せいぜい長生きするでござるよ」


 ちょうどそこへ、アーシャの孫のキリアークが、村からキモヲタたちへのプレゼントされたロバを引き連れてやってきました。ロバにはキモヲタたちの荷物が山積みされています。


「婆ちゃんと子作り……うげっ。でもまぁ、そうなるとキモヲタさんは血のつながらないおじいちゃんってことになるのか。じいちゃん、達者でな!」


「オノレ貴様! 尻の痒みに永遠に苦しむ地獄に落としてくれるでござる……」


 手を振り上げて【お尻かゆくな~る】を発動しようとしたキモヲタ。その腕にキーラが必死にしがみ付いて制止しました。


「落ち着いて! キモヲタ! 只の冗談だから! 小粋な孫ジョークだから!」


 腕を降ろしたキモヲタは、キッとキリアークを睨みつけました。


「命拾いしたな小僧! もしキーラたんがつつましやかなチッパイを我輩の腕に押し付けて止めていなければ、今頃、貴様は尻をそこの壁に擦り付けて恥辱にまみれていたところでござるぞ!」


「そ、そいつぁ悪かった。でっ、これが村からの細やかな御礼だ。村で一番頑丈なロバ、キンタっていうんだ。可愛がってやってくれ」


「ふん……ありがとうでござる」


 キーラがロバのキンタを見て大喜びしていました。


 エミリアがキンタの頭を撫でると、ロバのキンタは幸せそうに目を細めて鳴き声を上げました。


!」


「見てくれセリア殿! 可愛くないですか? このキンタ可愛いいですよね!」


 セリアがあまり興味なさそうに返事をします。


「キンタ? まぁ、カワイイんじゃない?」

 

 キモヲタの耳のソラミミセンサーがピクリと動きました。


 キンタまぁカワイイ。


 キンタマぁカワイイ。


「はいー! セリアたんの口から『キンタマ可愛い』いただきましたぁー! 皆の衆、拍手でござる!」


 パチパチパチパチ!


 村人たちは、そのほとんどが意味がわからないまま、適当にセリアに拍手を送りました。


 ドゴンッ!


「ぐぼぇあっ!」


 キモヲタのでっぷりとしたお腹にセリアの足蹴りが入ったのでした。


「フンッ!」※セリア


「キモヲタ……」※キーラ

「キ、キモヲタ殿……」※エルミアナ

「キモヲタ様……知的で素敵❤」※ユリアス

!」※キンタ


 こうして、ちゃんとオチを付けてアネーシャ村を出発したキモヲタたちでした。


 そして村を出て最初の野営――

 

 夜の間中、女性陣からキーラと同じショーツをねだられ、さらにラインナップに衣装があることを知られて、それもねだられたキモヲタ。


 そもそも女性から甘えた声でお願いされるなんて、これまで経験が皆無なキモヲタ。調子にのってネットショップ「ナイトタイムラバー」でポンポン散財してしまうのでした。


「ありがとう。キモヲタ、やればできるんですね」


 黒のセーラー服に赤い三角スカーフ、黒いマントを羽織ったセリアが、キモヲタに上から目線でお礼を言いました。


 セーラー服はアンダーバストから下はカットされていて、おへそは丸出し。スカートは、少しかがむだけで黒いパンティが見えてしまいそうなくらいの短さでした。


「ふぉおおお! セリアタン! セリアタン! セリアタンテラエロスゥゥ!」


 キモヲタはセリアに奇妙な踊りを捧げました。


 エルミアナには、胸が開いた白いブラウスに、黒いタイトなミニスカート。セクシー女教師、あるいは女上司のコスプレ衣装。度の入っていない黒縁三角メガネもかけてもらいました。


「ふぉおおお! エルミアナたん! エルミアナたん! 優しく叱ってエルミアナたん!」


 キモヲタはエルミアナに奇妙な踊りを捧げました。


 そしてキーラには、白の体操服。下はブルマではなく、限りなくブルマに近い短パンでした。


「だがそれがいい! キーラタソハスハス! キーラタソハスハス! キーラタソハスハスでござるぅぅ!」


 そして最後にユリアス。彼の……彼女の衣装は選ぶのに苦労しました。最初にゴスロリメイド衣装は、サイズが小さく、肩幅も窮屈で、結局、それはセリアが着ることになりました。


「ありがとうございます。一生大切にしますねキモヲタ様!」


 ゴスロリメイド衣装に身をくるんだユリアスが、キモヲタの手を握って感謝の言葉を述べました。


「ははは、サイズが合う衣装があってよかったでござるよ」


 幸いなことに「ナイトタイムラバー」のラインナップには「男の娘」カテゴリがあり、そこにある衣装は、サイズの大きなものがあったのでした。


(ユリアス殿は、大柄でござるからな。まぁ、男の娘用であることは黙っておくことにするでござるよ)


 ユリウスの衣装が「男用」だなんて口にしてしまったら、彼女を傷つけてしまうかもしれない。だから、ここは紳士の沈黙を守ることにしよう。


 そんな気遣いのできる自分の、心のイケメン振りに酔いしれるキモヲタでした。


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