第48話 ショゴタン討伐でポイントゲットでござる!

 ショゴタンと呼ばれる巨大スライムにスキル【お尻かゆくなーる】を発動したキモヲタ。


 その結果、今、目の前で起こっていることを見て、キモヲタは彼にスキルを授けてくれた天使の言葉を思い出していました。


「デュフフ。同志殿に贈った我がスキルは、拙者が上司に内緒で独自開発したもの。リミッターをはずしておりますからな、あらゆる命に有効ですぞ。後は同志殿のマインド次第ということですな。フォカヌポー」


 そしてとの言葉通り、キモヲタが必死で発動したスキルは、確かにショゴタンの核石に届いていたのでした。


 プルッ……プルプルッ!

 

 キモヲタのスキルを受けたショゴタンの表面にさざ波が立ちました。


 プルプルプルッ! プルプルプルッ!


 さざ波は次第に大きくなり、ついにショゴタンの表面のあちらこちらから波紋が広がっていきます。波紋は互いに干渉しあって、大きなうねりとなっていきました。


「一体、何が起こっているのでござる? 我輩のスキルが通じたのでござるか?」


 呆然とショゴタンを見つめていると、その身体から触手が伸びてきました。


 にゅーっ。


 それは先ほど、倒れていた者を貫いた刺突の触手です。触手は上方へ伸びていきました。そして次の瞬間。


 ザシュッ!


 鋭く尖った触手がショゴタンの本体を突き刺さったのです。


「なっ、自分を指しているでござるか!?」


 プルプルプルッ! プルプルプルッ!


 ショゴタンの表面がより一層激しく波打ち、今度は複数の触手が伸び始めました。


 にゅーっ! にゅにゅにゅーっ! にゅにゅにゅにゅーっ!


 ザシュッ! ザシュッザシュッザシュッ! ザシュッザシュッザシュッザシュッ!


 自らの身体に鋭い触手の刺突が繰り返されます。


 その度にショゴタンの表面がプルプルと震え、そしてまた次の触手が伸びていくのでした。


「もしかして痒いのでござろうか。それを解消しようとしてこんなこと……」


 伸びた触手は、体表面上にある目や口も構わず貫いていきます。


 目の前で繰り広げられる恐ろしい光景に、キモヲタが震えていると、


 パキンッ!


 と、そんな音を耳にしたような気がしました。


 その次の瞬間、ショゴタンがまるでタイヤの空気が抜けていくかのように、ヘナヘナとしぼんでいきました。


 シューッ!


 その身体のあちこちから蒸気のようなものが抜け出て行きます。


 やがてショゴタンは地面の黒いシミとなってしまいました。


 そして最後には、二つに割れた黒い石がただ転がっているだけでした。


「やったのでござ……いやいやフラグ建立はマズイ。まだ厳重警戒体制を崩すわけにはいかんでござる!」


 ピロロンッ!


 突然、キモヲタの視界にメッセージが表示されました。


『女神クエストを達成いたしました。

 ショゴタン(松)の討伐に成功、報酬300万EONポイントを獲得しました。

 本クエストの達成により、以降、女神クエストの受注が可能となります。

 また、ネットショップの利用が可能となりました』


「ほわっ! これは……我輩、またやっちゃったでござるか!?」


 メッセージを読んだキモヲタは、目の前にいるショゴタンを自分が倒したことをようやく確信することができたのでした。


「それに報酬300万とは……ただEONなる単位が分からないでござる故、多いのか少ないのか分からんでござるな。でもまぁ、あれほどの化け物を倒したのでござるから、少ないということはないはずでござる」


 視界の端に「ネットショップ」のボタンを見つけたキモヲタは、その場で飛び上がりそうなくらいに喜びました。


「これは所謂、異世界名物ネットスーパーですな! これで元いた世界の食べ物や便利アイテムを入手することができるでござる! ヌフフ、我輩をキモがる女子勢も、日本の食べ物で胃袋を掴んでしまえば、ハーレムなぞ容易く完成させられるでござるな。デュフフフコポー」


 アイスキャンデーをエッチな感じで舐めるセリアを想像しながら、デュフデュフ笑っていると、背後から声が掛けられました。


「キモヲタ! よかった! 生きてた!」


 ガシッと背中に抱き着いてきたのはキーラでした。


「きっと化け物も、キモヲタを食べるのはキモかったんだね!」


 そういって尻尾を激しく回転させるキーラの隣に、ユリアスが跪いて頭を下げました。


「キモヲタ様、本当に申し訳ない。あなたを守るべき立場にある私が、情けないことに化け物をみて気絶してしまうなど……」


 美しいユリアスの顔に流れる涙と、背中にしがみついているキーラに、キモヲタは心の中で誓うのでした。


(この二人には、後でネットスーパーで美味しい食べ物を買ってあげるでござるよ、だがしかし!)

 

「おぉ、キモヲタ殿! 生きておられたのですね! よかった! あの化け物はいずこに……」


 額に手を当てて周囲を見回すエルミアナ。


「地面に広がってる黒いシミと……あれは核石? まさかアレを倒したの! 凄いじゃない!」


 それほど凄いと思っていなさそうな感じが滲み出る白いイルカ、ウィンディアルのコメント。


「ふむ。ショゴタンを倒すなんて、やはりアナタはただのオークではなかったのですね」

 

 褒めているのか煽っているのかわからないセリア。


(先ほど我輩を平然と置き去りにした怨みは忘れんでござるからな! キーラタソとユリアスタソと一緒に、こいつらの前で美味いものを食べるところを見せつけてやるでござる!)


 そう心に固く誓うキモヲタでした。


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