第21話 奴隷市場でヒロイン探しでござるよ!

 エルフの剣士エルミアナを【お尻かゆくな~る】で撃退したキモヲタは、意気揚々と魔族捕虜収容所内にある奴隷市場へと足を運びました。


 収容所の入り口で、キモヲタは奴隷の購入に来たことを告げると、一人の衛士がキモヲタに付けられ、彼が奴隷市場を案内してくれることになりました。これは魔族軍のスパイが捕虜と接触することを防ぐために、全ての客に対して行われる措置です。


「キモヲタ様は、どういった奴隷を探しておられるので? やはり夜のご奉仕です?」


 案内の衛士の的確な指摘に、痛いところをつかれたキモヲタは否定しようとブツブツと反論しますが、案内の衛士はキモヲタの言葉を遮ります。


「分かってます! 分かってますって! お互いいっぱしの大人の男なんだから、今さら隠す必要はありませんて。それに男性客が一人で奴隷市場にくるのは十中八九そっち狙いですから」


「そ、そうでござるか……。なら下手に誤魔化す必要はないでござるな」


 そうやってニタァっと厭らしい笑みを浮かべるキモヲタを見て、案内の衛士は軽く首を振って、女性奴隷の区画へと案内するのでした。


 収容所の入り口から奥深くへ進むと、木の板で区切られた門が現れました。そこをくぐると、また広い収容区画が広がっています。


 ただその区画にある檻に入っているのは、全てが女性捕虜たちなのでした。 


「ほへぇ!? こんな場所があったでござるか? 我輩が収容されていたときには全然気が付かなっかったでござるよ!」


 女性区画の存在を、キモヲタは今の今まで知りませんでした。


「収容されていたって……って、あーっ!?」


 衛士がキモヲタを指差して大声を上げました。


「アンタ! エルフの剣士に殺されそうになったところを買い上げられたオー……人じゃないか?」


「よく知ってござるな……えっと……もしかしてあの時、我輩の出所手続きをして下さった方でござるか?」


 衛士が大きく頷きます。


「そうそう! それにしてもアンタ、奴隷を買いにくるなんて、それなりに立派なご身分だったのか。なのに捕虜になっていたなんて、そりゃ大層な災難だったな!」


 そう言って衛士はキモヲタの肩をバンバンと叩きます。先ほどまでと違って、随分と打ち解けた態度になりました。


 キモヲタとしても、その方が色々隠すことなく趣味全開の奴隷選びを手伝ってもらえると、少しホッとしたのでした。


「それで? 本音で言うとどういう奴隷が欲しいんだ? ここは奴隷市場と言っても、戦場でとっ捕まった連中が気の荒い連中が多い。慎重に見定めないと、寝首を搔っ切られるなんてことにもなりかねないからな」


「えっ!? そうなのでござるか!?」


「あぁ。だから、契約の際には金を惜しまず奴隷紋を入れることをお勧めするぜ。もしアンタが腕力だけで従わせることができるってなら、ムチで躾けるのもいいだろうが……」


 衛士はそこで一度言葉を止めました。


「まぁ、アンタはそうじゃないだろ? 奴隷紋を入れときゃ、主人を襲ったり、厳命に背いたりしようとすると激痛で立ってられなくなる。命の保障と考えれば安い出費だぜ」


「な、なるほどでござる。奴隷紋は必須ということでござるな」


 キモヲタは額から流れる汗を拭いながら、衛士に応えました。


「でっ、どういった奴隷がいいんだ?」


「そ、そうでござるな……。夜のご奉仕といったエロい部分は大いに重要なんでござるが、できれば普段の身の回りの世話と、我輩が治癒を行う際の手伝いをしてもらいたいのでござる。それと……」


 一通りの要望を聞いた衛士は、キモヲタを亜人奴隷が集められた一角へと案内するのでした。


「夜の目的が第一ってことなら亜人がお勧めだな。治療の手伝いってなら回復が使えるエルフかもしれないが、あいつら気位が高いんだよ。だから身の回りの世話ってのが引っ掛かる。だからアンタの要望に一番沿ったのは、多分、犬族か狼族系の亜人だろうな」


 そんな説明を受けながら案内された亜人区画には、ケモミミ尻尾の亜人奴隷たちが入った檻が並んでおりました。


「この辺の亜人は、奴隷になることを受け入れている連中だからお勧めだよ」


「ほ、ほぅ……」


 檻の中には、美しい毛並みの狼族や、犬族、猫族、小柄な兎族といった亜人奴隷が入っておりました。キモヲタが近づくと彼女たちは、身をくねらせたり、胸を寄せたり、尻を突き出したりして、自分の魅力をアピールしてきます。


 巨乳で細いくびれの猫族亜人が、白い胸を寄せるようにしてキモヲタに微笑みかけてきたときには、思わず「この娘に決めた!」と叫びそうになりました。


 目を血走らせて猫娘の白い谷間に見入るキモヲタに、衛士は「まぁ、気持ちはわかるが、旦那の手伝いをさせるのは難しいと思うぜ。夜の専属ってことなら別だがな」と諭されて、泣く泣く檻から離れるのでした。


「あの猫娘のパイオツの見事な造形、あんなの一生オカズに出来るでござるよ。誠に惜しいでござる。惜しいでござる」


 もはや衛士に述べた自分の要望をすっかりと忘れて、欲望のままに猫娘に決めようかとウジウジするキモヲタ。


「まぁ、とりあえず一通り見て回りましょうや」


 衛士に促されて、キモヲタはとりあえず他の亜人奴隷たちを見て回ることにしたのでした。

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