第2話 殺人事件の初公判

 これは喩え話であり例え話ではない。

 まず、その事を理解して欲しい。

 もし、人間が同じ場所で次々に焼死したとしようか。その場合に考えられる犯行現場とは火葬場でしかありえないんだけど。しかして、これは死体が実は生きていて焼かれてしまったというようなお話にはならない。


 犯行現場は屋外。

 それも、公園だった。

 何処にでもある。

 何処にでもあったような。

 錆びた遊具が軋む音を住宅地に届ける。

 そんな、公園こそが犯行現場だった。


 これは例え話ではない。

 実際の事件だ。

 今現在、裁判ナウだ。

 我々検察側は裁判をするだけの証拠を揃えたからこその法廷バトルなのだが。

 肝心な証拠が一つだけ、抜け落ちていた。


 “焼死させた方法”である。


 これには困っている。

 現在進行形で困っている。

 この初公判の目的が時間稼ぎになった原因でもある。

 住宅地のど真ん中。

 公園で。

 人が次々に焼死。

 犯行の目撃者もおらず。

 被害者に共通点は殆どない。

 ボクは検察側に立つ“彼”を見た。

 脂汗でビッチョビチョ。

 いつもは自信満々で胡散臭さでは人類史でも稀有な存在感を持つ、あの『加害者殺し』が。

 普通に、困っていた。

 

 


 

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