第88話

【豪己視点】


 俺はデュラハンキラー・ハンドスピナー・ウエイブウォークと共に四国に来ていた。

 達也への連絡はやはり繋がらない。


 他の自衛隊や冒険者も四国に集まってきている。

 話によれば2体の厄災クラスのモンスターが四国にいる。


 厄災クラスはデュラハンと同じ長い間モンスターの溢れ出しを放置する事で出てくるモンスターだ。

 ダンジョンのラスボスであるマウンテンカノンや巨大鬼を遥かに超える力を持っている。

 放置すればどんどん力をつけデュラハンのように手に負えなくなる為放置するのは危険だ。


 厄災モンスターは2体。

 赤鬼と青鬼だ。

 2体が鬼のダンジョンに近づくことで鬼をダンジョンから外に溢れ出させる能力を持っているようだ。

 今は2手に分かれて鬼のダンジョンを巡り鬼を溢れ出させている。

 これ以上あの2体を鬼のダンジョンに近づける事無く倒す事が出来れば少なくとも鬼の溢れ出しは抑えられる。


 赤鬼と青鬼は人を無視してダンジョンの溢れ出しに集中し、ダンジョンから溢れた鬼は人を襲い、人の作った建物を破壊する。

 厄災クラスが出てきたことで鬼の行動パターンが変わっている。

 青鬼と赤鬼、特に赤鬼は急に走ったり歩いたりとかなり気まぐれだ。


 自衛隊の力で人の被害は少ないが建物が燃え、遠くには煙が上がっている。


 凜がスマホを持って俺に見せる。

 香川方面か、近いな。


「赤鬼の場所が分かったよ」

「早速向かう! 鬼退治だ!」


 みんなで赤鬼のいる場所に向かった。


 現場に向かうと赤鬼が足を大股に開いて金棒を地面に突きさしながら笑っていた。


「がははははは! 殺せ! 壊せ! がははははは!」


 赤鬼は体長2メートルほどで皮膚が赤く、赤いオーラを発し、両手に2本の大きな金棒を持っていた。

 そしてその後ろには金棒を持った腕が4本浮かんでいる。

 明らかに普通の鬼ではない事が分かる。


 あのオーラと4本浮かぶ腕と金棒はかなり異質だ。


 童子が前に出て行った。


「キラーフォーメーションを使う!」


 工藤が止める。


「ま、待て、まだ敵の能力が分かっていない!」


 俺は童子に賛成した。


「いや、悪くない。つついてみてくれ、ただし、危ないと思えばすぐに下がると約束してくれ」

「約束する!」

「おっし! ウエイブウォークは攻撃が始まると同時に雑魚を倒してくれ、ハンドスピナーはあの4本腕を抑えろ!」


 赤鬼がぐるんと首だけを俺に向けた。


「ああ? なんだ? もしかして俺を殺そうとしてんのか?」

「その通りだ!」


「がはははははははははは! 笑止! 集まれ!」


 周りにいた鬼が赤鬼の周りに集まってくる。

 鬼が隊列を組んだ。


 童子が笑う。


「好都合だ、工藤! 指揮は任せた!」

「分かった。キラーフォーメーション開始だ!」


 豊香が前に出る。


「豊香! 雑魚もろとも蹴散らせ!」

「はい! メガボム!」


 チュドーン!

 赤鬼もろとも雑魚を黒魔法の範囲爆発で倒す」


「メガボム! メガボム! ボム! ボム! ボム!」


 豊香の連続攻撃で雑魚がドロップアイテムに変わる。

 その瞬間に工藤と童子を含む近接4人が赤鬼を囲んだ。


 ハンドスピナーは浮いた腕を攻撃する。


「ウエイブウォークも攻撃開始だ!」

 

 ウエイブウォークは雑魚を倒していく。

 ハンドスピナーの4人が赤鬼を斬りつける。


「ふんぬ!」


 赤鬼が2本の金棒を横に振った。

 その事で4人が武器で攻撃を受けるが弾かれ吹き飛ぶ。


 その瞬間に後ろにいた黒魔法使いが魔法弾を連続で撃ちこむ。

 逃げようとしたり敵が孤立すれば黒魔法を浴びせる、デュラハンキラーのキラーフォーメーションはそういう攻撃だ。


「小野! 下がって回復!」

「おう!」


 けがをすれば1人ずつ下がって回復魔法を受ける。

 そして継続的に攻撃をし続けている。

 いい戦い方だ。


 童子の剣が腕を斬りつけ、後ろにいた工藤が槍で背中を突き刺した。

 いける!


 だがその時、遠くから足音が聞こえた。

 青鬼のメートル、青い皮膚で青いオーラを湯気のように舞い上がらせながら籠手を付け、1本の金棒を持って走って来る。


「助太刀する!」


 青鬼が金棒を振りかぶった。


 俺は青鬼に向かって走った。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ザン!

 金棒の攻撃を躱し剣で斬りつけるがそれでも勢いを止められずデュラハンキラーに向かって行く。

 近接のみんなが赤鬼から離れた。

 態勢を立て直された!


 赤鬼と青鬼が並んで立った。

 そして青鬼が叫ぶ。


「突撃!」


 青鬼の声で雑魚の鬼が群がって来る。

 そして青鬼が後ろに下がろうとする。


「引くぞ」

「俺を攻撃した奴らを殺してからだ!」

「もっと苦しめればいい。西に渡り鬼のダンジョンを溢れさせる」


「がははははは! そういう事か、赤き月が始まる前に苦しめてやるよ! 剣使いと槍使い、お前らは後で殺すうううううううううううう!」

「赤き月が来る前にケリをつける!」


 青鬼と赤鬼が海の上を走り本土に向かって行った。


「逃げられたか!」


 鬼のモンスターが集まってきた。

 海を走る事は出来ない。

 追いかけても追いつけないだろう。


「く、ここにいる鬼を倒す!」


 俺達は赤鬼と青鬼を取り逃がした。

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