第53話
ごうと別れた後家に帰りひまわりに言った。
「動画編集とかできる?」
「どうだろ、あ、パソコンスクールでそういうコースもあった気がする」
「パソコンスクールで勉強しつつ俺のチャンネルの配信を動画にまとめるバイトをしてみない? もちろんやってみてダメならいいんだ。試しに失敗してもいいからやってみてダメならやめる、どうだろう?」
ひまわりは出来る事でも出来ないと言いがちだ。
今まで怒られ過ぎてきたのかもしれない。
でもやって貰うと案外できたりする。
失敗してもいいと言って取り組みやすい空気を作る。
練習してみる、そういう言い方でやって貰う。
ごうならもっとうまくやるかもしれない、ごうには及ばなくてもチャレンジして欲しい。
「やってみようかな」
「頼む!」
その後ひまわりは動画の編集を覚えてパソコンスクールではなく動画で編集の仕方を覚えて成長していた。
「動画を作ってみたけど、どうかな?」
俺がモンスターを倒して会話する映像に字幕や効果音が付けられていた。
分かりにくい部分が改善されている。
ショート動画から長い動画に誘導したり、きめ細やかな配慮を感じた。
そして何よりも動画の編集にセンスを感じた。
デュラハンを倒すため活動している事をひまわりにPRして貰いつつ動画をアップしてもらおう。
長い配信を編集して貰えば需要はあるはずだ。
「うん、すぐにアップして欲しい、それと今後は確認しないでどんどん編集動画をアップ欲しい」
「うん、頑張ってみる」
「頑張らなくても大丈夫、マイペースでいいんだ」
「うん」
ひまわりはどんどん動画をアップして行きチャンネル登録者数も視聴回数も伸びていく。
これで少しはごうの宣伝の役に立てる気がする。
訓練所に向かう。
1時間以上早く来た。
1番乗りだと思ったがハンドスピナーの5人が待っていた。
ハンドスピナーが俺に気づくと整列して礼をする。
「「おはようございます!」」
「おはよう、そんなに礼儀正しくしなくても大丈夫だからね」
「「そうはいきません!」」
5人が一斉に言った。
「俺はレベル5の冒険者で皆はレベル6だからね」
ハンドスピナーの5人は何度言っても丁寧な態度を崩さなかった。
豊香がやってくると俺の手を握った。
「おはようございます」
「おはよう」
「会いたかったです」
「そっか、ハンドスピナーの5人にも挨拶しようか」
豊香が握手をしたままハンドスピナーの方を向いた。
「どうも、おはようございます」
「「おはよう」」
ハンドスピナーは豊香には普通に接する。
ハンドスピナーが嫌っていない所を見ても豊香は悪い人間ではないんだろうな。
豊香は俺の手を離さない。
「ハンドスピナーは使わないんですか?」
「くっくっく、あれは配信用だ」
「ですよね」
結構仲がいいな。
ごうもやってきた。
「おう!」
「ごう、おはよう」
「「兄貴! おはようございます!」」
「俺が一番乗りだと思ったんだがな」
「ハンドスピナーが1番乗りだ」
その後ウエイブウォークとデュラハンキラーが集まるが新と童子が遅刻した。
「ごう、始めていいか?」
「そうだな、あの2人は、しょうがない、達也、ドローンを起動してくれ」
「分かった! 始めるぞ!」
ごうと俺の後ろに皆が並んだ。
ドローンを起動させてごうを映す。
「ごうだ、今回はデュラハンを倒す為みんなのレベルアップを図る目的で達也指導による共同訓練を開催する!」
『1番ゲット!』
『兄貴いいいいいいい!』
『兄貴と達也だ!』
『メンバーが豪華すぎる』
「メンバーの紹介だ。レベル6冒険者の豪己だ」
ごうは自分の紹介をさらっと終わらせる。
コメントが高速で流れる。
『兄貴いいいいいいいいいいい!』
『待ってたぜ!』
『兄貴と達也の配信、楽しみにしてます!』
「レベル5の冒険者パーティー、ウエイブウォークだ」
「樹です」
「凜です」
2人は自己紹介に馴れている。
『あれ? 新は?』
『遅刻に決まっている』
『たまに遅刻するよな』
『朝だし、新だし、しょうがない』
「気づいていると思うが新は遅刻だ」
ごうの言葉で笑いのコメントが高速で流れた。
新はたまに遅刻する。
特に朝は起きられない事が多い。
「次レベル6の冒険者パーティー、ハンドスピナーだ」
ハンドスピナーは5人同時にハンドスピナーを回す。
シュルシュルシュル!
『自己紹介をしないんだな』
『ハンドスピナーはこれでいい、これがいい』
『ハンドスピナーが普通に名前を言ったら嫌だろ? これでいいんだ』
『ウエイブウォークの樹と凜の自己紹介はお手本だな』
『ウエイブウォークが1番まとも説あるで』
『新が来れば完璧だった』
「……次にレベル6冒険者パーティー、デュラハンキラーの童子以外」
『童子も遅刻で草』
『新と童子が似ている』
『分かるで』
デュラハンキラーの6人が挨拶すると遠くから童子が走ってきた。
「ま、待ってくれ!」
『めっちゃ走るやん』
『あんなに急ぐなら遅れんなやwwwwww』
『童子君朝早く起きれて偉いでちゅねえ』
『まさかのガチダッシュ』
ずざああああああああああああ!
土煙が舞い上げ突風を起こして止まるとデュラハンキラーの全員に指摘を受ける。
工藤さんからは童子を連れてくると連絡を受けていたらしい。
でもあえて自主性に任せ成長を促すと言って起こさないで貰った。
何かあった方が配信が盛り上がる。
「童子、遅い」
「遅刻ですよ~」
「土煙を舞い上げないで」
「今日は遅れんなよ」
「訓練場でキャンプして待ってればよかったよね?」
「童子、昨日は眠れなかったか?」
『工藤さんの分析が正解だろうな』
『遠足に行く前にわくわくして眠れなくなって起きられないパターンやん』
『童子おもしれえ』
ハンドスピナーは無言でハンドスピナーをシュルシュルと回す。
『後ろにいるハンドスピナーいいな』
『じわじわ来る』
『にやにやして見られそう』
童子が俺の前に立った。
「達也! 弟子にしてくれ!」
「「自己紹介!!」」
デュラハンキラーの全員が同時に言った。
『流石童子、空気を読まないぜ』
『遅刻からの弟子にしてくれ、だからな』
『童子君、配信で見ている分には面白い』
「遅れてきたのがデュラハンキラーの童子だ。童子、さがれ、今は始まってすぐの自己紹介中だ、すぐに済ませたい」
童子は少しむすっとして後ろに下がった。
「達也、自己紹介を頼む」
「レベル5冒険者の達也です。今回は僕が教える立場と言うよりは教え合うような配信にしたいです」
「おし、自己紹介が終わった。童子、もう少し黙っていてくれ。それと今回はいつも通りの話し方でいつも通りの態度で接して欲しい……最後が来たか」
新がゆっくりと笑顔で歩いてくる。
「悪い! 寝坊した!」
「新! ちょっと、走って来てよ!」
「開き直っているね」
俺は笑顔で歩いてくる新を見て可笑しくなってきた。
遅刻しながらあの笑顔はツボだ。
「はっははは! 新、笑顔だな、ははははははははははははははははは!」
俺が笑った事でごうと樹、凜も笑いデュラハンキラーのみんなも笑い出す。
ハンドスピナーの5人はにやにやしながらハンドスピナーを回した。
新が樹と凛に左右から注意される。
「もう、達也先生に遅れないように言われていたのに」
「達也先生はいいって言ったけど僕が連れてくればよかった」
一応新に遅れないようにとは言ってあった。
でも遅れたら遅れたで配信が盛り上がる。
『達也の器が大きいぜ』
『笑う事で無かったことにする大人の対応が素晴らしいです』
『あの新を教えて成長させた達也さんを尊敬します』
『ここでガチの説教が始まれば引くだろ』
『後ろで童子が拘束されてるwwwwww』
新は俺の予想を超えて遅刻した上で笑顔で歩いてきた。
コメントを見ると盛り上がっている。
笑いがある配信の方がいい。
その方が見て貰える。
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