第22話 お茶会のお菓子作り
本日の講義が終わると、俺は真っ先に寮へ向かった。
シャーロットたちとのお茶会は楽しみだが、みんなが作るお菓子も楽しみである。
「さて、俺は何を作ろうかな……」
腕を組み、右斜め上を見ながら思考に浸る。
どうせなら和菓子を作って持っていきたいところだが、小豆やもち米が無いので、それらを使う和菓子は作れない。
「うーん、どうしよう……そうだ!」
俺は食糧庫を覗いて、これから作るお菓子の材料を探し始めた。
……卵に小麦粉、砂糖があるな。蜂蜜もある!
水飴も欲しかったが、そんなものはこちらの世界には無い。
以前、市場で探してみたが見つからなかった。
水飴の作り方は知っているので、とりあえず水飴から作っていこう。
本当はもち米と麦芽を使って水飴を作りたかったが、こちらの食糧庫には置いていなかったので仕方がない。
試験の時にあった小豆やもち米は、きっと特別なものだったのだろう。
なので、かわりにジャガイモと大根を使う。
ジャガイモを擦り、でんぷんを取り出す。
熱湯の中にでんぷんを入れ、かき混ぜていく。
でんぷんがムラなくどろっと粘り気が出てきたら、大根のしぼり汁を加える。
そして、全体が均一になるように素早く混ぜていった。
しばらく放置して、丁度よい状態になると鍋に入れて加熱をしていく。
焦げ付かないように木べらでかき混ぜていき、出てくる灰汁をしっかりと処理する。
全体がネバネバしてきたら水飴の完成だ!
流石に、今日は時間がないので、水飴を小瓶にいれて氷室に保管した。
続きは明日だ。
そういえば、こちらの世界の卵って大丈夫なのだろうか?
生卵を食べられるのは日本だけと聞いたことがある。
……まあ、明日確認すればいいか。
翌日も講義が終わると、真っ先に寮へ戻ってお菓子作りの続きをする。
ちなみに、卵の件を寮の管理人に聞いたところ、食糧庫にある卵は常に新鮮な卵らしい。食材の鮮度管理は学院側でやってくれているので心配はいらないようだ。
では、昨日の続きをしよう。
まずは新鮮な卵を割って、卵黄と卵白に分ける。
卵白に砂糖を加えてメレンゲを作っていく。
ふわふわのメレンゲができたら卵黄とさらに砂糖、水飴を徐々に加えて混ぜていき、小麦粉を茶漉しのようなもので振るいながら加えていった。
クッキーングシートが存在しないので、代わりに金属の型に油脂とバターを塗っておく。
型の底には粒の粗い砂糖を適度に砕いてパラパラと入れていった。
その上に先ほど混ぜた生地を入れていけば、あとはオーブンで焼くだけ。
生地をオーブンに入れて一時間ほど経つと、甘くて香ばしい匂いが漂ってきた。
……ああ、長崎の有名店のお菓子が恋しいぃ。
オーブンから型を取り出し、お皿の上で型をひっくり返しポンポンと型の底裏を叩くと、こんがり狐色に焼けたカステラお目見えだ。
これで完成ではなく、あら熱が取れるとラップ代わりの布でカステラを包む。
常温で一晩寝かせれば『カステラ』の完成だ。
「ふぅ、いい具合にできたな。明日のお茶会が楽しみだ」
翌朝、一晩寝かせたカステラを丁度いい大きさに切り分けていく。
……これをどうやって持っていくかなぁ。
お菓子を持っていくための丁度いい容器がない。
お茶会なんてするとは思っていなかったし、お土産にお菓子を持っていくなんて考えてもいなかった。
……あ、あれがあったな。
この世界では紙は貴重で、なかなか手に入らない。
それでも、父さんの伝手で何とか厚紙を入手することができた。
俺の一年分のお小遣いと引き換えに。
厚紙があればケーキ箱が作れるはず。
俺は引き出しにしまっておいた厚紙をとりだし、厚紙を丁寧に折って取っ手のついたケーキ箱を作った。
前世の和菓子屋でも四角い箱を作って和菓子を入れることがあったので、それほど難しい作業ではない。
……よし、良い箱ができたよ。
完成したケーキ箱に、切り分けたカステラを丁寧に入れていく。
「よし、これで準備OKだね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます