第24話 新たな配下と今後


 夜になり、アンデッド馬のヨカゼに乗って、護衛の黒豹のノワリンとともに街道を西へ向かってひた走る。盗賊のアジトへ向かうためだ。

 目撃者が出るかもしれないが、ヨカゼもノワリンも黒いので夜ならよく見えないだろう。


 途中の宿場町には入らずに通り過ぎ走り続け、夜明け前には盗賊のアジトに到着した。歩いて数日の距離を一晩で走ったことになる。やはり疲れ知らずのアンデッド馬は移動に最適だ。まあ俺はめちゃくちゃ疲れたが。


 アジトはホコリが積もっていただけで前に来た時と変化は無かった。カムフラージュして入口を塞いでいたため、魔物が侵入したりはしなかったようだ。


 とりあえず配下を出して、掃除と周囲警戒を指示して、俺は寝た。色々あったうえに、一晩中馬で駆けたため、疲労が限界だったのだ。

 疲れた心と体を癒すため、つのっちとノワリンに添い寝してもらった。最高である。グレイの毛は硬いのでそばで待機だ。




 

 夕方まで二度寝したりゴロゴロしたり現実逃避しながら惰眠を貪った俺は、仕方なく起きて行動することにした。


 まずは収納した人間を全員配下にしてしまおう。


 アジトの外に死体を出して次々と配下作成を使っていく。


 大量の死体と魔法陣が黒い光を発して、異次元空間に来たみたいになっている。

 気にせずどんどん配下にしていった。


 今回配下になったのは、


領主 1(侯爵)

執事 2(執事長、若い執事)

騎士 9(騎士団長、副団長、若い騎士レオス)

兵士 22

無職 8


 その数合計42名もいた。

 領主、執事、騎士は複数の職業を持っていて、騎士はレベルも高い。領主と執事は文官系のようだ。

 無職は兵士の恰好をしているので、新人兵士か何かだろう。


 かなり増えたな、すべての配下を合わせれば76もいる、もはや軍隊と呼んでよいレベルである。 ・・・そこまでではないか。



 まあ問題は今後どうするかだな。

 できればアスカさんと会って話をして可能なら仲間にしたい。俺のメインヒロイン予定だからな。

 ・・・でもなぁ、職場の上司や同僚を殺してしまったわけだから、いくら同じ日本人でも無理かもしれない。 ・・・いや日本人だから余計に人殺しには厳しい気がする。

 ちょっと侯爵に聞いてみよう。



 侯爵に聞いてみたところ、アスカさんは詳細鑑定というユニークスキルを持っていて、詳細鑑定を使えば見ただけで人のステータスが分かるらしい。俺の職業が分かったのはアスカさんの能力だったそうだ。


 ・・・そうですか。どうやらアスカさんは敵だったらしい。

 いや、そうと決めるのはまだ早いか。貴族に命令されて従っていただけだしな。俺が殺されるとは思っていなかった可能性は高い。でも味方になってくれるかは微妙だな。


 しかし、そうなると町に侯爵を戻して俺が影の支配者になってダラダラ贅沢する作戦は無理だな。いや、侯爵が突然日光に弱くなったらバレるからどっちにしても無理か。ゾンビやスケルトンを置いてきたからアンデッドには警戒しているだろうし、神殿のイベントとかにも参加するだろうしな。


 もうちょっと侯爵に聞いてみると、俺はやはり怪しまれていたらしい。ユニークスキルを持っている人は、普通は職業も持っているそうだ。生まれつき持っていなくてもユニークスキルに関係する職業は簡単に習得できるらしい。実際アスカさんは、錬金術師だったが鑑定士の職業を簡単に習得したそうだ。怪しいので念のためこっそりアスカさんに鑑定させたらしい。怪しくなければ後日普通に同意を得て鑑定する予定だったそうだ。


 ・・・うん。俺の作戦は色々穴だらけだったようだ。荷物が収納できないというウソもすぐバレたしな。俺は昔から簡単な見落としも多いし、やはり誰かに相談しないとダメだな。今後はできるだけ配下に相談しよう。まあ、今回は相談する時間がなかったけどな。


 しかしユニークスキルに関係する職業なら簡単に習得できるのか。死体収納に関係する職業ってなんだろう。 ・・・死霊術士だけの気もするが、ポーターもいけるかな? でもポーターを覚える意味無いしな。死霊術士をごまかすのに使えるかもしれないが、死霊術士のレベルが上がりにくくなるならいらないな。


 念のためアスカさんが俺の仲間になる可能性はありそうか聞いてみたところ、アスカさんは部屋にいた若い騎士のレオスと恋人同士だったので、無理だろうとのこと。


 ・・・絶対無理じゃん。恨まれていることが確定した。会いにいったら殺されるかもしれない。アスカさんは俺のヒロインではなかったらしい。


 レオスに話をきくと、侯爵の指示で結婚相手としてアスカさんと付き合っていたらしい。

 アスカさん騙されてるよ!と思ったが、レオスは政略結婚があたりまえな家の出身で、政略結婚の相手としてアスカさんのことは気に入っていて、侯爵も結婚を強制する気はなく、アスカさんを他に取られないようにする狙いはあったが、本人同士が気に入らなければ他の人にする予定だったそうで、日本のお見合いのような感覚のようだ。


 ただお見合いで付き合いだしたカップルというだけだな。リア充爆発しろ! ・・・いや俺が殺したわけだからシャレにならないな。


 とにかくアスカさんがいる町にはもう行けないな。影武者作戦もアスカさんには見抜かれている可能性が高い。そうなると俺が指名手配されるのも時間の問題で、近くにいるのも危険な気がする。

 とはいえどこに移動すればいいのかまったく分からないので、しばらくはここで色々な配下の話を聞いて、どこに移動するかじっくり考えよう。

 配下の戦力確認もしたいしな。



 その後、俺はアジトで過ごしながら、配下の戦力確認を行った。


 騎士はかなり強く、騎士の職業は、騎乗戦闘と部隊指揮ができ、馬から降りても強いという万能職で、習得するのはかなり難しいらしく、領都には21人しかいないらしい。領全体はもっといるようだが、領都にいる21人のうち、騎士団長や副団長を含む9人を俺の配下にしてしまったことになる。侯爵家の戦力は激減だろう。

 それに騎士団ではレベル上げのノウハウがあるらしく騎士は皆レベルが高い。特に騎士団長は剣士と戦士、副団長は盾士と戦士の職業も持っていて、アックスより強いようだ。

 単純な腕力ではアックスの方が少し上のようだが、ステータスの高さと戦闘技術で上回っていて、特に対人戦能力は明らかに高いらしい。他の騎士もアックスと同格のようだ。

 ただ、冒険者と違い他領にレベル上げに行けないため、高ランク冒険者よりはレベルが低いそうだ。

 もちろんさすがの騎士もノワリンよりは弱い。うちの最高戦力はノワリンだ。


 兵士の職業は、1人では微妙な強さらしいが、10人以上味方がいると強くなる集団戦用の職業だそうだ。さらに騎士に指揮させれば結構強いらしい。シナジーがある組み合わせというやつだな。使えそうだ。


 領主と執事は文官の職業も持っている文官系で、領主は貴族のたしなみとして剣士も持っているようだがレベルは低めで強くはないようだ。

 今のところ相談役くらいだな。あとはお茶を入れさせるくらいか。



 しかし俺の配下は全員男だ、男くさすぎるぞ。

 とはいえ襲ってきてもいないメイドさんを殺すのはちょっと無理なので仕方がない。

 男の本能として女子供を殺すのはすごく抵抗があるからな。悪に染まってしまった俺でも無理だ。 ・・・いや悪に染まったとか言ってみたかっただけだ。染まってない。正義の死霊術士だ。 ・・・正義は無理があるか。


 そういえばなぜ死霊術士と分かったとたんに捕らえて殺そうとしたのかを侯爵にきいてみた。

 それによるとこの国では、過去に死霊術士が複数の町をゾンビだらけにしたことがあり、死霊術士を見つけた場合は、国へ報告して捕らえるか討伐しなければいけないらしい。


 ・・・ダメじゃん。先輩なにやってんすか!バレたら即終了じゃねえか!

 やはり隠し続けるしかないらしい。




 そんなこんなで盗賊のアジトで数日を過ごして、戦力確認しながら色々な配下に相談した結果。


 俺はこの国を出ることにした。


 向かう先は東にあるというゴルドバ商業連合国だ。


 この国にいては、指名手配される可能性が高いうえに、死霊術士がバレるだけで殺し合いになってしまう。

 しかし多種族が集まるゴルドバ商業連合国なら、種族や職業に対する差別や偏見が少ないため、危険な職業として警戒はされるだろうが死霊術士というだけで捕まったりはしないだろうというのが理由だ。


 俺は昼間は森の中などで野営して、夜にノカゼに乗って移動することにした。昼夜逆転してしまうが、その方が見つかりにくいし、何よい速いからだ。



 期待と不安を胸に、新たな地に向かって星空の下走り出す。


 俺達の戦いはこれからだ!





 打ち切りではないぞ。



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