第8話 VS違法マルチ②
講演会が終わった後で私はクラウン(偽名)と名乗ったお父様、ギルガメッツ国王の控室へと足を運んだ。
「ちょっと! どうゆうことですの!?」
「おぉ、シルヴィア。まさかおまえが来ているとは思わなんだぞ」
私たちを出迎えたお父様は変装ようの口髭と、認識阻害魔法を解いてチョコミントクレープを持ちながら左手で着席を促した。
「シロ、紹介したい者がおるとは聞いておったが娘とはな。まったく、良いやつなのじゃが人が悪い」
「陛下、シルヴィア様が勧誘方法に違法性がないか調査にいらっしゃるとの情報をカトレア様よりいただきましたので、お互いにお会いした方が早いかと思いましてクラウン氏による講演会に招待いたした次第でございます」
「まあよい。クラウンとしてのワシは其方の友人じゃからな。それよりもシルヴィア、カトレアやキャロルから何も聞かされておらぬのか……」
そう言われてカトレアとキャロに目をやると二人とも申し訳なさそうに頭を下げた。どうやら私は嵌められたようだ。
「……それで、どうしてお父様はマルチ商法の教祖のような真似、いいえ、ことをされていらっしゃるのです?」
「それはじゃな、違法マルチにならぬ様にコントロールするためじゃ。商売元の説明を聞いて利益を追い求めるものが暴走する可能性は否定できん。じゃが、紹介制度というものは存外に人を成長させるものじゃ」
「……そのようですわね。あのカトレアのランとしての姿をさきほど拝見いたしましたのでわかりますわ」
マルチ商法、それは一種の訪問販売員、営業という職業に近いだろう。やってみて自分に合っていればよし、ダメなら簡単に辞められる副業なのだから人として成長する要素は確かに含んでいると私も感じた。
「それに、頂点がワシなのじゃから商売元が違法な勧誘を進めようとしてもすぐにわかる。それになにより、優秀な人材の確保に一役買っておるのしのぅ」
「あぁ、なるほど。講演会にいらした方々はサークルのトップであるクラウンに取り入ろうとする。それを国王として人となりを見極めて引き抜き、あるいは経営への支援など夢の実現に手を貸す。理に適っていますわね」
お父様は私の発言に頷き、それが正しかったと応えてくれた。
「して、カトレア、キャロル、それにシロよ。ワシやシルヴィアに黙っておったことには理由があるのじゃろ? 今この場では友人じゃからな。遠慮なく申すがよい」
国王という立場、それゆえの重責から解放される場所かつ腹を割って話ができる。庶民や貴族の悩みを直に声として聞くことができる場所としてお父様はこの活動をされているのだと感じた。
「ははは、さすがはクラウン。実はね、僕たちのサークル以外でどうやら違法な勧誘が横行しているらしいんだよ」
「うちのクレープ屋から見える場所でもサークルで見たことない人が高圧的に詰め寄るのを確認したよ。はい、シルヴィ……ロマネさん、これイチゴチョコクレープ。みんなの分を作ったから食べて」
「ありがとうございます。えっとライトさんでよろしかったですか?」
クレープ屋の店主の名前はライトだとさきほど聞いていたのでクレープを4つ抱えて持ってきた男性に尋ねてみると肯定とともによろしくねと言われました。
「で、その情報をクラウンとロマネに知らせたかったわけ」
「なんでもその勧誘に使っている情報がさ―――」
二人から聞かされたのはクラウンとして活動しているお父様の落ち度とも言えるような頭の痛くなるような情報でした。
「確かに……、これは王族の私が動く必要がありますわね……」
国王による引き抜き、その実態がバレていて悪用されているという話を私たちは聞かされたのでした。
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