第15話 お母さまのお茶会とデザート
お父さまやお兄さまを見送り、お母さま、カイル、レオンとガゼボで、まったりとしていた。カイルとレオンはお庭を走っていた。
「アイリちゃん、1ヶ月後にダスティール侯爵家のお茶会に呼ばれているのよ。ダスティール侯爵はロベルトさまのお家よ。」
「ロベルト様のところのお茶会ですか」
「そうなのよ、今までと変わらなく、お誘いいただいたわ。そこで、お土産のお菓子を持参しなければいけないの。アイリちゃん、お願い、作って欲しいの」
ドキッ。やはり、アイリのやらかし以降、お茶会のお誘いが、敬遠されていることもあるのだろう。本当に申し訳ないです。
この国はお茶会に参加するため、持ち寄るデザートは重要らしい。有名店のお菓子や、各々の家で自慢のデザートを持って行くのがこの国のお茶会。もちろん,主催側はメイン料理やお菓子は用意しているが、お呼ばれされた側もお土産として持参するらしい。大変だな、お貴族さまは。
そのお呼ばれされたお貴族というのがロベルト様のお家。お兄さまがいつもお昼に持ち寄るお料理やお菓子のことをロベルト様がロベルトお母様に伝えたらしい。
お兄さまの持たせたジャンクフードのお昼ご飯。それはそれは大盛況だった。かなり多めに作った昼食を1日で食べきった。さすが男の子。アップルパイやアイスクリームも全部食べたようだ。第二王子殿下の婚約者さまや、ロベルトさまの思い人、マリアナさまも食べたらしい。
それでお呼ばれされたお母さま。あのやらかした後だから、お母さまには、このお茶会を機に交流を復活してほしい。
「お母さま、どこにも負けないデザートを考え、作りますわ。」
お母様のために頑張るわ。
数日後、お母さま、私、テッシーさん(たまたま来訪し飛び入り参加)、メイドたち、厨房のみなさんで、新作デザート発表会。パフパフパフ。
「お母さま、厨房の皆さんとデザートを作りました。どれが良いか決めましょうね」
「ふふふっ、すごく楽しみよ」
「ごめんなさいね、私まで参加させてもらっちゃって。すごーく楽しみよン」
このお茶会に持参する菓子を作るため、お父さまに頼んでいた魔道具ハンドミキサーが完成した。我が父、兄さすがです。まだ、売り出さず、家で使うようにしている。試作品です。
ハンドミキサーで作るといえば、シフォンケーキである。あのふわふわなケーキを作ること。
あとはタルト類。タルトは見栄えも良い。特にフルーツタルトは、色とりどりのフルーツが散りばめられているので、インパクがある。パウンドケーキも混ぜるだけだから簡単。色々な味が作れる。フィナンシェもいいが、原価が高い。うちで食べる分はつくるよ。
冷たい系はプリン、アイスなどなどがある。アイスはお兄さまに持たせたことがあるが、今回はいちごアイスクリームとレモンシャーベット。バニラもあります。まずは、お母さまがお茶会に持参するお土産選び。
「どれも美味しそうだし、みたことがないお菓子ね」
「厨房の皆さんと色々作ってみたの。温度調整などお菓子によって違うので、何回も作ったのよ。そして、ようやく出来上がったのよ」
厨房の皆さんもうんうんと頷いている。
「お父さまには料理を作る魔道具を作ってもらったのよ、お母さま」
「もう、アイリちゃん、お菓子でも新しいものをどんどん作っていくなんて、どこからそんな発想がきているのか、頭の中身を見てみたいわ〜」
ドレスなどのデザインに引き続き、前世の知識なので、私自身の発想ではない。でも、存分に使いたい。美味しいものは正義。美味しいものを食べると心が温かくなる。これをみんなで共有したい。
お母さまと頷きあい、曖昧に微笑んで
「どこかの国の本で見たのよねぇ」
と誤魔化したが、誤魔化せただろうか。これはとぼけるしかない。そういう設定でとおす。
「早く試食しましょう。どれをお土産にするか決めましょう」
「そうね、お母さま。そうしましょう」
執事とメイドに給仕してもらい、試食会開始。もちろん執事、メイド、侍女、厨房のみんなで食べた。
結果、やはりフルーツカスタードタルトは見栄え的にもいいので、お土産にすることにした。そのほかに数が少ないがフィナンシェとクッキーの詰め合わせ。
クッキーも、アメリカンタイプとボックスタイプ。ナッツをふんだんに使ったクッキーである。
いちごアイスクリームとレモンシャーベットは今回は持っていかない。小出しに出していかないとね。
まだ、チョコレートはこの国にはない。もしくはカカオの実はどこかにあるけど、まだ、開発されていないのであろう。見つけたいカカオの実。
領地に行きつつ、隣の領地は栄えているらしく、港がある。ということは他国の食材も入っているかもしれない。連れて行ってほしいと頼もう。また、やりたいことが増えたので、やりたいことメモに記載しておこう。
これで、お茶会でのお土産も決まり、これからテッシーさん、お母さまとドレスのデザインの話をしよう。
お母さまにはお茶会を乗り切ってほしい。
なぜなら、私がやらかした後の、お茶会である。お母さまには、楽しんでほしい。私のことで、針の筵のお茶会にならないように、インパクトのあるお土産やドレスであってほしいと祈りを込めて、いろいろ提案した。お願い、乗り切ってほしい。
その後、お母さまは無事お茶会を乗り切った。ロベルト様宅のダスティール侯爵家お茶会に参加し、ダスティール侯爵夫人は優しい人で、お母さまを気遣っていただいたようだ。そしてデザートが大好評だったらしい。ドレスもどこで作ったのかなど、色々と質問され、針の筵にならずに済んだということだ。よかった。
だかしかし、今度は我が家でお茶会を催してほしいということになった。アウチ。
お母さまにはよろしくねって、お願いされた。おーい、また、考えるのが大変やんかーい。
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