第13話 パン作りとデザート


 とうとう、この日が来た。リンゴで作った自家製酵母。一週間ほど様子を見て、細かい泡が出てきた。その後、リンゴの爽やかさとアルコールが混ざったような香りがしてきたので完成。ちなみに、この世界のリンゴはアップル。


さあ、厨房に行きましょう。


「たのもー。」


「アイリお嬢さま、なんですか、その掛け声は。今日は何を作りましょうか」


料理長のダンがおっさんなのに目をキラキラさせて、聞いてきた。ほんと、根っからの料理好き。厨房で料理を作った後も、ハンバーグやオムライス(トマトケチャップもどきを作った)、カツレツ、魚のムニエル、ホワイトソースも伝授した。唐揚げを教えていないので、今度唐揚げを伝授しよう。おつまみ系も教えないと。お父さまに酒のつまみは大事。


「今日はね、これよ」

どーん、とリンゴ酵母をテーブルに置いた。


「これは、何ですか?あやしい泡がでてますが。うっ、匂いが。アルコールですか?何ですか、これは?」

質問ばかりである。不審物に思われている。


「これはアップル酵母よ。これでパンを作るのよ」


「パンですか?これでですか。大丈夫ですか。」


「さあ、やるわよー。夕食に食べるパン作り」

とうとう、とうとう、黒パン以外のパン。このパンを元に惣菜パンも作れる。夢が広がるわー。ストレートに今日作るものと、元種は2倍になるまで発酵させ、明日作るパンの違いを実験しよう。


「ダン料理長、今日はこのリンゴ酵母を使って、今日作るパンと、元種を作り明日作るパンの準備をします。強力粉、バター、塩、砂糖をお願いします」


「は、はい?はい、準備します。おい、用意できているか?」


「「「「はい、できてます」」」」


お湯を作り、まぜあわせ、捏ねて、一時発酵。お願い膨らんで。祈る思い。その間に明日のパンに使用する元種作り。同じように酵母液と強力粉、同分量。蓋をして放置。


お昼ご飯を食べ、弟たちと遊び、さあ、厨房へGO。


「お、お嬢さま。倍くらいに膨らんできましたが、大丈夫なのでしょうか?」


「ほ、ほんと、ふくらんでいるの?」

急いで行くと、おおー、膨らんでいる。それから、ガス抜き、切り分け、丸めて、ベンチタイム。このベンチタイムが重要。そして、もう一度丸め直し、二時発酵。


夕食のおかずは、ビーフシチュー。カレーはまだスパイスが見つからない。肉は血抜きをされ、熟成した肉。食への改善が進みつつある。うちの厨房の料理人は勉強家である。えらいぞ。


さあ、二時発酵されたパン種を、丸パンにする。そしてオーブンへ。


待つこと、15分ぐらい。良い匂いが漂ってきた。


みんな、落ち着かず、わさわさしている。パンが気になってしょうがない。私も落ち着かない。そして、いざオープン。うわー、こんがりと焼けた白パン。

みんなで実食。手で、ちぎると柔らかいことがわかる。みんな、ふわっとした、柔らかそうなパンにびっくり。口に入れると


「「「「「「やわらかーい。うまい」」」」」


美味しい。黒パンの硬い、顎には良さそうなパンとは違い、柔らかい。


「アイリお嬢さま。これはすごいです。本当にすごいです。パンがやわらかいです」

うん、ダン料理長、語彙力がないぞ。


「よかった、成功です。今夜、お父さまたちに出しましょう。あと、もう一つ作った元種は、明日の朝、使えるので、朝のパンはそれで作りましょう。違いがわかると思います。」


「はい。楽しみです


いやー、本当によかった。成功した。前世作ったことがあってよかった。節約、節約で作れるものは何でも作った経験。ここで役に立った。


夕食、ダン料理長自ら給仕。


「本日は、ミモザサラダ。ビーフシチュー、そして丸パンです。黒パンもありますので、お好みで食べてください。白パンは本日アイリお嬢さまが発案された新しいパンです」


「白パン?では食べよう」


「柔らかい、う、うまい。うまいぞ、これは」


「本当においしいわ」


「アイリ、これをお弁当に入れられないか?」


お兄さまは、あのアイリのやらかしお茶会から、第二王子殿下やロベルト様たちと距離を取って接していたことがわかった。今まで第二王子殿下の側近のような取り巻きグループに属していたお兄さまだが、あの時以降、距離を置いていた。ロベルト様にはそんなことしなくていいと説得されたようだが、お兄さまのけじめとして行動していた。


私は、お兄さまにいっぱい謝った。前のアイリがやったことだから、お前は謝らなくていい、なんて言われたが、アイリはアイリだ。


食堂も行きづらいならと、お弁当を持たせた。そのおかげで、今まで接点がなかった下位貴族、平民の友達ができたらしい。学校以外でも遊びに行っていた。一緒に昼食をとっていると聞いたので、お弁当の量をいっぱい詰め、みんなで食べられるようにした。試作のデザートも入れ、みんなに感想聞いてもらうことにした。それが対価。でも、感想は美味しいだけで、どうして欲しいという要望が聞かれない。美味しい以外の言葉はないのかい。


それを見ていた第二王子殿下やロベルト様たち、いままでの友だちグループもいっしょにたべるようになり、何だかクラスの男性陣は仲良くなったとさ。めでたしめでたしって、私のことで友だちと疎遠になってしまったが、良い方向に変わっていったので、よかった。


さて、明日朝からお弁当作り頑張るぞ。父にもお弁当とジャガ料理をお願いされた。


そして、食糧部にジャガの有用性を進言するらしい。

よし、あすはジャガ料理、いっぱい作るぞ。


その前に下準備。ダン料理長に、

ポテトサラダ

ポテトフライ(お兄さまのお弁当もに入れる)

コロッケ(お兄さまにコロッケパン)

ポテトグラタン(お兄さまのお弁当にも入れる)

ジャーマンポテト

じゃがバター

食糧部にはジャガイモづくしてす。

 

さつまいもの料理というかデザート

スイートポテト、大学芋

を一緒に作った。

お父さまにはジャガの有用性。寒冷地でもつかることができることを進言した。

がんばれ、お父さま。



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