第5話 魔法がある世界(2)

「えっ、使える生活魔法の照明をしただけよ」


「照明って、そんな言葉は詠唱ではないぞ!」


「灯りのことなんだけど」


「いやいや、照明という言葉だけで発動なんてしないだろう。」


「そうかしら、イメージして、使いたい生活魔法を詠唱しただけなの。変かしら。うーん、生活魔法に長い詠唱はいらないと思うのよ。そうよ、お兄さまもイメージして、短い詠唱にしてみれば、いいのではないかしら」


「アイリに教えているのに、俺が逆に教わってどうするんだ。まあ、いいか、イメージしてから詠唱だな。よし、ウォーターシェード」



ありゃ、水の壁のようなものが発現した。おおー、すごい。

お兄さま自身もびっくりしているよう。それはそうだよね、長い詠唱がいらなくなって、時短だよ。


「なんだか、できてしまったな」


「では、私も水」


水がでた。楽しくなってきた。次、着火・発火は、なんだろう。着火で良いのか。マッチかライターのように。


「着火」

おおー、火が出た。


「アイリ、待て待て。おかしいぞ。お前の生活魔法の詠唱もおかしいが種類は多いのか?」


「まあまあ、ありますね。お兄さま、魔力量の平均はそのくらいなのですか?」


「平均200〜多くて500ぐらいだな。俺はそれより少し多いぐらいだから」


「ふーん、そうなんだ。ふーん」


「お前、多いんだな。魔力量は個人が把握していれば、開示する必要はない。魔法もだ。洗礼の儀で、属性はみんなに開示しているから、わかるが、スキルや、固有魔法を教えてしまうと、弱みを握られ、悪用されてしまうことがある。そうならないために、特殊な魔法は、開示しないことになっている。アイリもむやみやたらに教えてはいけないぞ。」


「はーい、わかりました。でも、お兄さまや両親に教えても大丈夫なのですか?」


「我が家は大丈夫かもしれないが、やはり他人にうっかりしゃべってしまって、悪用されるケースもあるから、全部言わなくてもいいのではないか。みんな、全部は言っていないよ」


「そういうものなのですね、この世界は」


「割り切りだ。だが、お前の場合、何があるかわからないから、近しい人には教えた方がいいな」


「そうですね、面倒なことはお父さまとお兄さまにお任せするので、よろしくお願いします」


「お前、丸投げかよ」


「私はこの世界の常識がわからないので、丸投げしまーす」


「まったく、本当にアイリとは大違いだな。いずれ落ちついたら、両親にも話をしよう。しかし、アイリ、生活魔法だったよな。そんなに幾つも使えるのか。生活魔法って」


「私の生活魔法って便利ですよ。生きていく上で、役立つものばかり。これは、この世界で、キズモノの私が、結婚せず、おひとり様でも生活していけるように、神様が与えてくれた魔法ですよ。なので、お兄さま、決してお兄さまのお嫁さんに迷惑をかけないようにするので、領地の隅でいいので置いてください。お願いします。ひっそりと生活していきますので、よろしくお願いします」


「結婚せずって、結婚できるだろう。俺の嫁って」


「いやぁ、あれだけイタイことしでかしたアイリだよ。あの怖い公爵様に嫌われているアイリだよ。結婚はできないでしょ。まぁ、結婚できるなら、希望としては40代ぐらいの、イケおじ、ナイスミドルなすらっとしたおじさまでお願いします。ブクブクギトギトの腹が出るおじさんで、変な性癖のある人はやめてね」


「イケおじって何」


「イケメンなカッコ良い、ロマンスグレーの髪をした、すらっとしたおじさまのことよ」


「はぁ、結婚相手などは、両親が考えることだ。しかし、両親は、恋愛結婚だから、俺にもお前にも自由な恋愛で良いと考えている。政略結婚はさせないから大丈夫だよ。本当に、ロベルトのことはなんとも思っていないのだな」


「ロベルト様ね、ふわっとした、優しいイケメンってかんじよね。うん、若すぎる。犯罪だよ。16歳だよー。前世で中学卒業して高校に入学した年だよ。まだ、若いよー」

「アイリ、お前、今15歳だからな」


「前世41歳のわたしには16歳はガキンチョだよ。このアイリの中にロベルト様の想いが燻っているかもしれないけど、私としての理性が無理だと拒否っているのよ」


「そうか、それならいい。よかったよ。ロベルトはマリアナ嬢と婚約するだろう。しかし、言葉遣いをなんとかしろ。侯爵令嬢の言葉遣いではないぞ」


「あっ、今、ロベルト様とマリアナ様の婚約の話を聞いて、心がギュッとなったわ。アイリの感情がそうさせたのかな。まぁ、しょうがないよ。自分がいくら好き好きと言ったところで、相手にも感情があるんだから、強引にしていたアイリに対する思いは迷惑や嫌いという感情しかないでしょうね。言葉遣いは、がんばります」


「2人の婚約の話を聞いても、アイリは客観的にみているな。でも、よかったよ。我が妹ながら、もうダメだと思っていたから。ダメなら修道院に入れるしかないと思っていたところだった。」


「修道院や断罪される前に前世の記憶が蘇ってよかったわ。これからやりたいことを見つけて、楽しく人生を生きていきたいわ。魔法も生活魔法だけど、楽したいわね」


よしよし、魔法も使えるようになったので、魔力量を増やさないと。増やす方法は、寝る前に魔力を使い切るか、魔力操作だね。よし、頑張ろう。

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