3話 筋肉娘エリーナの日常 美女親友カーラとの交友

数日後のある日。エリーナは都市の外壁近くで同じ年齢の女子達と雑談していた。

体格差はあるが、エリーナ以外の女子達も闘技場向きの選りすぐりであるのか、

まだ子供にも関わらず、はっきりとした筋肉が見えていた。

白い肌の女子が多いが、黒い肌の女子もいる。他の子供達の服装はボロボロの素材でできた質素なものだった。


エリーナは雑談しているだけではなく、他の女子達の護衛でもあるのだ。

闘技都市サウスタウンより上の方からの圧力で男子による女子への性的暴力はむしろ推奨されていた。

だから、思春期になりたての男子にとって、同じく思春期の女子は格好の性欲の獲物であるのだ。

同年齢の男子が数人でも勝てないエリーナがいれば、

女子達は人っ気の無い静かな外壁の郊外で雑談していても安心だった。


エリーナの服装は特別に染色された赤いブラと青い短パンで、他の女子達の中で際立っていた。

広い肩幅で押し出された岩の塊ような肩の丸骨が赤いブラの肩紐を押し上げ、

ブラはいまにも破れそうに突っ張っていた。胴もあばらに圧迫されて、きつそうだ。

小さな胸だけがブラにおとなしく包まれていた。外からでも彼女の大きな骨格が丸見えである。

青い短パンは筋肉質な太ももにぴったりとフィットし、引き締まった美しい脚のラインを強調していた。

これぐらいの軽装でも文明時代の技術で作れる職人はほとんどいないのだから、

とても価値がある貴重な物だった。牛数頭分の干物が物々交換出来るぐらいである。

(都市管理者の娘 かつ 強すぎる彼女から奪おうとする者はいないが)


「ねぇねぇ、この赤いブラと青い短パンに、この真っ赤な花をつけたら、

私はもっと、それこそ圧倒的に!かわいくなれるかな?」

花を胸に押し当てて、エリーナは女子達に目を輝かせて尋ねた。


「うーん、エリーナちゃん、そういう問題じゃないと思うなぁ。」

少し呆れ気味に彼女の親友のカーラが返した。

カーラはカリブ系の褐色の肌を持つ、155cmぐらいの身長で健康的で引き締まったボディの

赤髪の女子だ。水泳の金メダリストの遺伝子を持っているらしい。


「その服、もうちょっと大きいサイズがいいんじゃない?エリーナなら、

お父さんのつてで凄腕の職人さんがいるでしょ?何もそんなにきつそうな服にこだわらなくっても、、」


「でも、でも、でも!あたしは強さだけじゃなく、かわいさでも最強でありたいの!

だから、スマートにこの服を着こなしたいのよ。」エリーナは熱意をこめて主張した。


「う、うぅーん(汗)」カーラがうなって押し黙る中で、陽気に黒髪パーマと黒い肌の女子

が別の花を持って走ってきた。


「ねぇねぇ、近くの川で拾ってきたんだけど、この黄色い花と黒い花はどうかな?エリーナちゃん。」


「わぁ、ありがとう!黒い花はめずらしいね!赤と黒は女の子としてはチャレンジャー。

赤と黄色い花はパンチが足りないかも。こう!パンチがね!」

エリーナは岩のようにゴツゴツとした拳を大人でも卒倒しそうな音でぶぅんと振るった。


「黒でチャレンジするか、それとも赤いブラと青い短パンで普通に目立つかどっちにしよう?

カーラの意見も聞かせてー。」エリーナは楽しそうに尋ねた。


「あー、だけどさー、がんばって着飾っても、ここには男はゴリラと子ザルしかいないよー。エリーナもわかってんじゃん?うちらの闘技場都市に純白の王子様はいないんだよ?」と、カーラがさも当たり前のように返した。


エリーナは苦笑いしながら、「そうよねー。盛り付いたゴリラと子ザルばかりなのよねー。」

と同意した。「私をこの町から連れ出してくれるイケメンいないかなぁ・・」


エリーナは上がっていたテンションが落ちてため息をつくのだった。

しかし、すぐに気を取り直し、

「でも、いつかは絶対に素敵な王子様が現れるはず!その時のために、今から着飾る練習をしておかなきゃね!」

と、希望に満ちた笑顔を見せた。


カーラの耳にバカにしたような男子の笑い声がかすかに聞こえた気がしたが、

エリーナには言わないでおいた。

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