筋肉娘エリーナの日常

@gennraku

1話 男子とケンカするエリーナ

「はぁ、私をここから連れ出してくれるイケメンいないかなぁ・・」


西暦2108年8月10日、地球。太陽がサンサンと照りつけるアメリカ大陸のサウスタウン。

10代前半ぐらいの少年少女が1対1で喧嘩していた。


「ゴリラ!ゴリラ!ボスがゴリラなら、お前は白ゴリラじゃねーか!お前なんかどの男も見向きもしねーよ!」


「誰が白ゴリラだぁ!」そう叫ぶ金髪で白い肌の筋肉質な少女。

向き合う2人のひどい体格差は、まるで大人の女性と子供の男子のようだ。


男子も思春期前の少年ぐらいの体格はあるが、それでも圧倒的な差があった。

少女は黒髪パーマの黒い肌の少年の胴を前から無理やり持ち上げ、

広くて分厚い大きな背筋を反らせて少年の体全体を頭上高くに掲げる。

そして、容赦なく砂地の地面に向けて加速させ、スラムのように叩きつけた!


ズドッ!「ぐぶっ!」衝撃で歯が折れて、血を吐く少年。


2メートル近い高さで前から叩きつけられた少年は、余りの衝撃に呼吸が出来なくなり、

鼻血を垂れ流しながらひくひくと痙攣した。立ち上がれそうにもない。死んでいない?戦士として再起不能ではない?

投げつけたのは砂地だし、ギリギリ大丈夫そうだ。

頭から両手でぐいっと引っ張って、うつぶせのボーイを乱暴に起き上がらせたエリーナは


{大量の鼻血を垂れ流すだけで潰れていないボーイの顔を見て安心した。}


これが岩だったら、ぐちゃぐちゃに潰れていただろう。


「あーあ、やっちゃった。」大人の女性に見劣りしない体格の少女は、

少年を背中に担ぐとサウスタウンの中心部に歩いて行った。

彼女の名前はエリーナ・カリレン、闘技都市サウスタウンの管理者の大事な1人娘だ。



エリーナ・カリレンはアメリカ大陸の最大の闘技都市サウスタウンで生まれた。

鉄塊を乗せた天秤の反対側にエリーナの体を載せると、約5800gの大きな赤ん坊だったらしい。

母は出産後、休まずに闘技を続け、怪我が原因で亡くなった。

父は母と違い、エリーナを女らしく育てたかったが、彼女の中に流れる戦士の血が許さなかった。


両親は共にこの闘技都市の有名な戦士だった。エリーナはサウスタウンの外に出てみたかったが、

都市を管理する父が許してくれない。11歳のエリーナは気を紛らわすように、

都市のギリギリの外壁に来ては白い肌の少女と雑談し、時折黒い肌の男子達と喧嘩するのだった。

だが、性別の優位も人種の優位もエリーナの前では意味をなさない。


161cmの恵まれた身長、それよりも目立つ岩の塊のように盛り上がる骨格。

割れた腹筋と盛り上がる太ももの筋肉。女性らしくない僧帽筋とゴツゴツと硬くて太い剛腕。

乳込みで通常で9%の少ない体脂肪率に、体重は68kgもあった。

女の子どころか、女性としても大きすぎるエリーナの体は、大幅に子供の水準を超えている。

むしろ、大人のプロの格闘家の水準すら超えかけていた。


それもそのはず、エリーナの両親の血は世界最強クラスの格闘家とアメリカ史上最高クラスのプロレス選手だ。

その血を奇跡的に純粋に受け継ぐ形でエリーナは生まれた。

女子としては世界最高クラスの素質を持つエリーナの大人顔負けのパワーで、

黒い肌の男子"ボーイ"を投げでKOしてしまったのが今日の出来事だ。


動けなくなっている男子を闘技場の医務室に預け、父親の怒りを待つために闘技場に備え付けの闘技寮、

自室に戻った。ケンカは禁止だと。特にアレをしたら家に1か月監禁だからなと。


きつく言われていたのだった。

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