26.タケシの女性関係

 正直言おう。俺はタケシさんが良く分からない。

 俺と同じミラベルが関与した転生者なのは分かっている。デュランダルの前のマスターであり、4代目の勇者ロイド・フェルグラントと共に魔王と闘った勇者パーティー1人。

 『動けるデブ』を自称していたり、蓄積の疲労がダイエットに効くとか迷言を残している。

 女性関係にだらしなく複数の女性と関係を持って修羅場を迎え、あげく刺されたらしい。転生前にモテなかったから我慢出来なかったとタケシは語っていたとか。

 一言で言うなら変わった人だろう。転生者故の価値観がこの世界で随分と浮いてしまっている。そして俺の周りにいなかったタイプの人だと思う。


「デュランダル、タケシさんは勇者パーティの一員だったんだな」

「そうですね。前のマスターは勇者パーティーの1人でした。最も前のマスターが加入したのは最後も最後でした」

「最初からいた訳じゃないのか?」

「はい。勇者ロイドが魔王の情報を求めてエルフの国『テルマ』に来たのが加入のきっかけでした」

 

 タケシさんは最初期のメンバーではなかったのか。彼がエルフの国で魔族について調べていたのは知っている。

 ということは勇者ロイドが魔族や魔王の情報を知りたくてタケシさんに接触したのか!


「勇者ロイドがタケシさんに魔王の情報を聞きにきたのが加入のきっかけか?」

「いえ、当時勇者パーティーの1人だった魔法使いの女性と肉体関係を持っていまして、彼女にねだられて加入しました」


 タケシ!女性にだらしないのは知っていたがお前! パーティーの加入理由まで女性なのか!?


「すまない。貶すつもりはないのだが、タケシさんがパーティーに入るのは反対されなかったのか?」

「前のマスターはその時既に『動けるデブ』として名が知れ渡っていましたから、勇者ロイドには歓迎されましたね。

周りが女性だらけだったのもあるみたいです」


 動けるデブとして名が知れ渡っていた? タケシさんは自称していた筈だ。

 つまり望んで動けるデブと呼ばれた訳か。何かしら理由はあるだろうが俺が聞いても分からないだろうな。俺なら嫌だもん、動けるデブって。

 勇者ロイドはパーティーが自分以外女性で肩身の狭い思いをしていたのだろう。それでタケシさんが加入する事になって、同性の仲間が増えて喜んだと。

 勇者ロイドといいタケシといい、ハーレムを作るのが得意だな。何故か特大のブーメランが飛んできた気がするが、気の所為という事にしよう。


「個人の事であれなのだが、タケシさんはどんな女性と関係を持っていたんだ?

聞いていたら1人は勇者パーティーの仲間のようだが」

「気になります? 気になっちゃいます?」


 言いたくて仕方ないと言った感じのデュランダル。妙に鬱陶しい。

 愚痴を言ってはいたがタケシさんの事も気に入っていたのだろう。自慢したいのだろうか? 女性関係の事なんて自慢するような事ではないが。


「修羅場に発展するような事態になったみたいだからな。俺も可能性があるんだ。参考程度に聞きたい」


 大乱闘になったと聞いたが1人は勇者パーティーだろう? それなら魔法使いの1人勝ちじゃないのか?

 腐っても勇者パーティーに選ばれた一人だ。一般人では天と地がひっくり返っても勝てないだろう。

 俺の場合はパーティーメンバーなので、強さは折紙付だ。このメンバーで大乱闘なんてしたら死人が出る。恐らく俺が死ぬ。


「マスターも既に3人程から好意を寄せられているので気を付けた方がいいですよ」

「分かってる。気を使ってるつもりなんだ」

「あんまり気を持たせる事をしない、言わない事ですよ」


 そういうのが大事なんだろうな。


「それで前のマスターと関係を持った女性でしたね? 肩書きだけサッと言うので気になったら聞いてください」

「分かったよ」


 肩書きだけ分かればどういう女性と関係持ったかは分かる。タケシさんの好みとかは正直興味はないしな。


「言いますよ。勇者パーティの魔法使い。同じく勇者パーティーの竜騎士。同じく勇者パーティの盗賊。四天王。エルフの王女の5名になります。どれが気になりますか?」


 どれが気になりますか?じゃない。

 確信犯だろう。デュランダルが言いたそうにしてた訳だ。俺の反応を楽しみにしていたのだろう。そのラインナップを他人ひとに話すなら俺でもそうなる。


「色々と聞きたい事だが、一つずつ聞いていくことにする。

魔法使いと関係があったのは知っている。なんで増えているんだ?

元々関係があったのか?」

「お答えしますね。前のマスターと魔法使いの方は肉体関係があったので知っていましたが、他2人は初対面でした」

「初対面だったのか」

「はい。マスターが加入する事を当初渋っていましたね。まぁ容姿の優れた方ではなかったので、それでも動けるデブとして名が知られていてので仕方なく加入を認めた感じです」

「勇者ロイドと魔法使い以外には歓迎されていなかったのか」

「そうなります。前のマスターの魅力は目に見えない所にありましたねー。仲間として過ごす内に気付いたら竜騎士と盗賊の2人が前のマスターに惹かれていました。迫られると断れない前のマスターは肉体関係を持って、モテ期だって嬉しそうにしてまして」


 タケシ。お前ほんとに女性関係にだらしないな。来る者拒まずの精神か? それは修羅場になるぞ。

 というより勇者パーティーが加入を渋々認めるほど『動けるデブ』の名が知れ渡っていたのか。どれだけ活躍したんだタケシ。

 魔法使い以外は勇者ロイドのハーレムメンバーかと思っていたが違ったのか。


「俺は魔法使い以外は勇者ロイドに好意を抱いていると思っていた」

「勇者ロイドのハーレムメンバーに見えました? マスターもそういうの気になるのですね!」


 楽しそうだなデュランダルこいつ


「勇者ロイド以外は女性だろ? それに勇者ロイドの彫像を見れば彼が美青年だったのは良く分かる。どうしてもな」

「マスターがそう思うのも仕方ないですね!

それについて納得出来る理由がありますよ」

「教えてくれ」

「勇者ロイドはその時既に幼なじみであり同じ勇者パーティーの神官の少女と恋人でした。

それもあって周りが女性ばかりで居心地が悪かったみたいです」


 勇者ロイドがタケシさんの加入を喜ぶ訳だ。恋人の視線が痛かったんだろうな。

 同性の仲間が欲しかったのもあるだろう。

 それについてはまぁいい。


「王女とも関係があったのか?」

「はい。前のマスターはテルマでの滞在が長かったですからねー

凶悪な魔物がテルマを襲った時も前のマスターが撃退したりテルマに貢献していました。何より『聖』属性の使い手でした。

エルフからも親しまれていましたね」


 タケシさんは聖属性が使えたのか。それなら納得出来る。

 エルフは何より聖属性を重視する。産まれた子が聖属性でなかったというだけで捨てる者もいる程だ。俺がテルマに行っても歓迎される事はないだろうし、長く滞在する事を許してくれるとは思わない。とにかく選民思想が強い。

 聖属性が使えるならタケシさんも歓迎されただろう。実力がある者なら尚更だ。


「王女とはどうやって出会ったんだ?

いくら聖属性が使えたとはいえ、相手は王族だ。簡単に会うことも出来ないだろう?」

「王女は好奇心旺盛な方でしたね。テルマに人間が長く滞在していたのもそうですが、なんというか前のマスターは変わっていたので興味を持って会いに来たようです」

「変わっていた?」

「異名もそうですが、なんというか発言だったり服装も独特だったので悪目立ちしてました。

もう少しまともな服装をしていれば良かったのですが」


 デュランダルが苦言を呈し、悪目立ちするほどの服装ってなんだ? 興味はあるが聞くのが怖いから流すか。

 要するにテルマに変な人間がいるから会いにいって、仲良くなって関係を持ったとかそんな感じだな。それでいいのか、王族だろう。

 よく許したな。これについては後で聞こう。

 聞き流せないやつがもう1つある。


「四天王というのは誰だ? 国にそういう肩書きの人がいたのか? 」

「マスターもご存知の魔族の四天王ですよ」

「…………」

「何度か名前が出ている『不死の女王アンデットクイーン』シルヴィ・エンパイアと肉体関係を持っていました」


 いや、ほんとさ。なんなんだよタケシあなたは!

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