第14話 「恋愛ごっこ」が始まった―「ごっこ」の範囲を確認した!
午後3時過ぎに美幸からLINEが入っているのに気がついた。美幸の盗難にあったバッグが見つかったので、帰りに警察に寄ってくるとのことだった。まずは見つかって良かった。
帰りは少し遅くなるとのことで、先に帰った僕は夕食を作って待っていた。8時前に美幸はバッグを持って帰ってきた。
バッグにはほとんどのものが残されていて、無くなっていたのは現金だけだったという。再発行の手続きをしていたもののうち、キャンセルできるものはキャンセルしたが、キャッシュカードとクレジットカードは再発行になるとのことだった。美幸は安堵の表情を見せて夕食を食べている。
「戻ってきて良かったね」
「一時はどうなるかと思った。これからは不用なものは持ち歩かないことと貴重品は必ず身に着けておこうと思う。お兄ちゃんにも迷惑をかけてごめんなさい。これからは気を付けます」
「とりあえず、現金だけで、ほかに被害はなさそうだからよかった。でも個人情報が盗まれているかも知れないから、銀行の預金残高やクレジットカードの請求には注意しておいた方が良いよ」
「でも良いこともあった。お兄ちゃんと『恋愛ごっこ』を始められたこと、今晩もよろしくお願いします」
「ああ、まあ」
食事が終わると美幸が後片づけをしてくれた。僕はまだ時間は早いがお風呂の準備をした。そして昨日から疲れているだろうと美幸から先に入らせた。
美幸はバスタオルを身体と頭に巻いて上がってきて、寝室に入っていった。その次に僕が入った。昨日はお風呂に1回入って、それからホテルでシャワーを浴びて、あわただしかった。今日のお風呂はのんびり入ろう。上がってパジャマに着替えた。
昨夜は美幸が『恋愛ごっこ』をしてほしいと言ってきたが、今夜も美幸が何か仕掛けてこないか気になっている。でもそれを期待している自分がいた。
湯上りにソファーに座って水割りを飲んでいるとパジャマを着た美幸が寝室から出てきて隣に座った。美幸の甘酸っぱい匂いがする。
「お兄ちゃん、『恋愛ごっこ』の範囲を確認しておきたいけど」
「範囲ってなに?」
「どこまでなら『ごっこ』に入るかということ、例えば昨晩みたいに抱き合って眠ることはOKよね」
「そう、子供のころはそうしていたから、OKかな」
「キスはOK? 親子でもしているよ」
「OKだけど、ディープキスは『ごっこ』には入っていないと思う」
「ディープキスって、舌を入れたりからめたりすること?」
「具体的に言えばそういうことだけど、無しかな」
「もちろんセックスはだめだよね」
「セックスといっても性交、肛門性交、口腔性交があるけど、すべてだめだ」
「お兄ちゃん、リアル! でも分かりやすい」
「触れ合うのはどうなの?」
「胸とか下半身には触るのはNG」
「厳しいけど、だいたいイメージできたわ。じゃあ、もう寝ましょうよ。昨日から寝不足でもう眠いから。それで今晩も抱いて寝てくれる? 昨晩は安心して眠れたから」
美幸はさっさと寝室へ入っていった。僕が入っていくと美幸はもう僕の布団の中にいた。
「美幸、僕の右側で寝てくれないか?」
「どうして?」
「その方が抱きやすいし、それから昨日のように背中を向けて寝てくれないか?」
「お兄ちゃんは左利きだったね。なんとなく分かる。右側に寝ると左手が動かしやすいからでしょう」
「利き手は自由な方が何かと便利だから、それだけだから」
「むきにならなくて良いから」
「そのまえにおやすみのキスをして」
そういって目をつむって顔を近づけてくる。そういえば子供のころ、美幸とキスしていたことを思い出した。『パパママごっこ』をしていた時だった。
軽く唇を合わせるだけだと思っていたら、美幸は強く唇を押し付けてきた。ディープキスは無しと言っておかなかったら、舌を入れてきたかもしれない。でも無しは無しにしておけばよかったかもしれない。
「おやすみ!」
そういうと美幸は背を向けて身体を丸くした。それにその可愛い顔を見ない方が良い。僕は『ごっこ』を越えてしまうかもしれない。疲れていたのか、美幸はすぐに眠った。僕もいつの間にか眠ってしまった。
翌朝、目が覚めたら、やはり美幸はこちらを向いて僕に抱きついていて腕の中にいた。
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