第6話 魔力の差
「ウゥ、ここは……?」
俺は意識が戻った。
少し周りを見るとココは休憩室で、ヴィンセントがホッとするように胸をなでおろす。
「よかった、俺が死なせたかと思った」
「ハイ?」
ヴィンセントはいきなり何言っているんだ? 肩を叩かれたくらいで人は死なないだろ。
なんて思っているとリーベット先生が入って来る、しかしその顔はどこか悲しげであった。
「えっとどうしたのですか? リーベット先生」
「今まで隠してきたけど、とうとう話す時が来たわね」
リーベット先生はそう言うと、俺の肩を掴む。
「覚えてないでしょうけど、実はあなたの魔力量を検出していたの」
検出ってあれか? 確かリーベット先生が俺の額に手を付けて落ち込んでたあれ、でもそんなに意味は深いのか?
「検出した結果、あなたの魔力量は
「へ?」
スレイブって確か翻訳すれば奴隷って意味だったはず……ってまさか!
俺は引きつった笑みでリーベット先生に向ける、するとようやく悟ったかとため息を吐く。
「あなたは魔法を使うたびに、ほぼ連続で瀕死するわ!」
「最悪だァァァァァ!」
考えたくない事を突きつけられ、俺は大声で叫ぶ。
ちなみにヴィンセントの方は
こののままだと俺、下手すれば
なんて困っていると、扉をドンッと強く開ける音が響く、入ってきたのは俺と同い年の少女だ。
姿は黄金に輝くミディアムで、目つきは少しつり目であり瞳はキャラメルで、身長は一〇〇センチぐらいだろう。
少女は俺を見ると、ずかずかと近づいて頬を強くつねる。
「イファイ、イファイ!?」
「アリス、アレスは体調が悪いから止めろ!」
「甘やかしているから、こんなにダメになるでしょ!」
アリスと呼ばれた少女は俺に指を指しながら怒り出す。
怒りたいのはこっちだ。いきなり人の頬をつねるなんて相手に失礼だぞ。
しかしこっちも怒るなんて大人気ないから、アリスを諭す。
「ちょっと待てよ。いきなりダメなんて言うなんて、どういう事?」
「あなたが倒れた事で、幼馴染みである私が恥を被る事になったでしょ!」
幼馴染みって、もしかして俺の隣に居た赤ん坊なのか!? 驚愕の事実に、心の中で驚いていると、リーベット先生は仲介する。
「アリスちゃん、アレス君にそんな事を言ってはいけません」
「でも、先生。アレス君は――」
「いくら恥を被ったから、相手を傷付けてはいけません」
「ウゥ……」
「分かったらアレス君に謝るのですよ」
アリスはリーベット先生に注意されると、俺に頭を下げる。
「ごめんなさい。私が悪かったわ」
「謝ってくれるなら良いけど、次からは急に怒らないでね」
俺とアリスは仲直りして解決……なんて行くとは思わなかった。
「仲良くした事で、ヴィンセント君とアリスちゃんはアレス君を見張ってくださいね。それに今日からはアレス君は、魔法学の勉強の参加はだめですからね」
「「「エエ!?」」」
いきなりリーベット先生はとんでもない事を言った。
「なんてそんな事を……」
「それは、また君が倒れるの防ぐのと変な事をさせないためですからね?」
リーベット先生は優しく言っている。だが目は優しくなくて、俺だけではなくヴィンセントとアリスは涙目になっていた。
今ここで言い訳したり誤魔化したりすると、良くても一時間、下手すると三時間みっちり説教される未来が見える。
「わ、分かりました」
「それでよろしいですよ、ヴィンセント君とアリスちゃんは?」
「「アレスと同じ答えです」」
俺達は目の前にいる
「分かってくれるなら結構です」
「えっと、どこに行くのですか?」
「明日の授業に必要な物を受け取りに行きますよ。だけどもし明日になるまでここに離れたら説教ですかね?」
リーベット先生はそう言って休憩室から出る、足音がしなくなると俺達は一気に倒れるように、安心する。
「何だ、あれ? 一瞬リーベット先生じゃ見えなかったよ」
「わ、私も……あんなに怒ったの初めてよ」
「言い忘れたけど、リーベット先生はマジで怒ると滅茶苦茶怖いから気を付けたほうが良いぞ」
「「肝に銘じておきます」」
優しい人は怒らせると、物凄く恐ろしいって聞いた事はあるがまさにこのことだな。
ヴィンセントとアリスは自室に戻ると、五年ぶりにフィムさんからテレパシーが来る。
『お久しぶりです。
『今はアレスと呼んでくださいよ』
『分かりました、アレス様』
この人、もの凄く順応が早いな。なんて思いながら、俺はこれまで集めた情報を言う。
『なるほど、
『エエ、どうやら目的は不明ですけど、黒幕は
『分かりました。あとノア様から伝言を頼まれています』
『ノアが伝言?』
ノアは一体何を伝えたいんだ? そう思うとフィムさんはノアに頼まれた伝言を言う。
『〔急に魔力が少なくて驚いているよね? 理由は君が異世界人だから魔力あまり馴染めなかったよ、だけど何とか頑張ってね〕と』
『ファッ●ー!』
あのクソ神! 分かってわざと何もしなかったのか!?
あのバカ神のいたずらを忘れて、フィムさんのテレパシーを解除する。
テレパシーを解除し終えると、俺はため息を大きくついて外を見る。月は満月で淡く光ってちょうどよかった。
転生したら、まさかの魔力が少ないなんてこの先どうなる事か。なんて思いつつも俺はシーツを掴んで、横になってまぶたを閉じる。
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