王子くんの幼馴染♂と姫乃さんの親友ちゃん♀がラブコメするそうです。

蕩船坊(トーセンボー)

第一冊『ラブコメ、開幕』

プロローグ


 神社の脇、駅へ向かうバス停のほど近く。

 連日のように真夏日まなつびを記録する強い日差しに照らされて、剣呑けんのんな空気をまとった眼鏡の少女が、目の前に立つサングラスの少年を睨みつけている。

 眼鏡の少女のいかにも真面目そうな外見と、サングラスの少年のチンピラのようなファッションのせいで、二人の間には奇妙なさが存在していた。

 ただ事ではないその場の雰囲気ふんいきに、近くを歩く参拝客さんぱいきゃくたちは足を止め、二人に視線を送っている。

 

 少女は少年に詰め寄った。

 

「さぁ染矢そめやくん、白状してください。神様に頼ってまで付き合いたいと思うような、身をがすような恋の相手を!」


 少し間をおいて、意を決したような表情を浮かべた少年は、目前に迫る少女を指さした。

 

「どうしたんですか染矢くん、急に私を指さしたりして……?」

「俺の好きな人は……友瀬ともせさん、あなたです」


 降り注ぐ太陽の光が、少年と少女を容赦ようしゃなく焦がす。

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