XYZ戦編

23-1「瓶詰めの妥協案」

 水平線からまぶしい朝日が昇った。一条は昨夜使われた爆弾のケースやら拳銃やらをゴミ袋にかき集めていた。そのゴミ袋の隣に、シートを被った身体が日に焼かれた。



 「ふう……一通り終わった……」



 一夜の一条の顔には疲れが見られた。携帯が震え通知画面は「補佐室」を示した。一条は難しい顔をして電話を取った。



 「お疲れ様です、一条です」


 「詳しい報告をいち早く聞きたい。朝の最初の便でこっちに戻れ」


 「……それは無理です」


 「ん?」


 「敵勢力の捕縛と武器の回収にしばらくかかります」


 「……分かった。今日中には戻れ」


 「了解です」


*―*―*―*


 心家の一室には、数時間前の惨状など感じさせぬ穏やかな寝顔が並んでいた。彼らを背に、佑心は縁側に座って朝日に思考を巡らせた。海風が佑心の髪を揺らし、風が運んできたようには舜は佑心の前に現れた。



 「休んでて、って言ったのに……佑心、身体平気?」


 「昨日あんなことがあったばかりじゃ、皆安心して寝られないだろ……見張りくらい大丈夫だよ……」



 そうはいっても、佑心も自分が疲れているのが分かった。



 「周辺状況はどうだった?」


 「うん。もう敵は見当たらなかった。半グレ勢力がまだいたとしても、主勢力のパージャーが死んだ今、何もしてこないと思う」



 舜はゆっくりと縁側に歩み寄り、腰を掛けた。やけに恐る恐る佑心の顔を覗き込んだ。



 「いろいろあり過ぎたよね、こんな任務のはずじゃなかったのに……」


 「うん……白のパージャーなんて全然知らなかった。一条は何か聞いたことあるらしいけど……」


 「なんていっていいか……なんか……」



 舜が困ったように笑みを浮かべる。



 「何にも言おうとしなくていい。俺らには気使わなくていい。一番驚いてんのは舜だろうし……」


 「う、うん……」



 舜はカクカクと頷きを返した。



 「あの、佑心、帰ったらはなし――」



 舜がぼそぼそと話し出したとき、佑心に通知が入った。

 


 「ん、一条……どうした?」



 佑心は通話をスピーカーに変えた。



 「今本部から連絡来た。今日中に帰ればいいらしいから、皆ちょっとはゆっくりできるはず。舜も……」


 「うん、ちゃんと皆でお別れするよ……」

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