20ー1「奇襲」

 大柄の敵は灰色のパージ能力を身にまとって宙に浮き、二人を見下ろしている。いかにも屈強なパージャーはマスクに隠されていない目元からも威圧が感じられる。



 「赤のパージャーか……才能だな」



 海中に漂っていた赤のパージ能力が消える。



 「誰だ!」



 パージャーは不思議そうな顔をする。



「それは変な話だ。俺らを追って、こんなとこまで来たんだろっ!」



 パージャーが二人に向かって灰のパージ能力を放ち、佑心と一条はそれぞれ両端に避けた。再度降ってくる攻撃に対して、同じように避けていく。砂浜に落ちた攻撃は砂をえぐって穴をつくった。何度目か避けた佑心はついに砂に足を取られた。



 「なっ!」



 瞬時攻撃は佑心がいた場所に突き刺さったが、佑心は一条に掴まれて上昇していた。



 「なかなかの光束量……本当に私たちが追ってたやつらなの?」


 「あいつ曰く、そうらしいな。上手く実力を隠してたか、他にもパージャーがいるのか……」



 二人を追いかけるパージ能力の光線が飛んでくる。佑心と一条はばらばらに避けた。一条はそのままパージャーに向かっていき、蹴りをくらわした。



 (あの人の話によれば、この女が組織の一条だな……系統は赤のパージ能力、全体的に隙の無い優秀なパージャー)



 一条の攻撃を受けつつ、パージャーは一条を認識していた。



 (だが……筋力でなら押し切れる)



 パージャーは一条に蹴りを入れ、一条は一気に草むらに飛ばされてしまった。



 (本命は……こっちだ!)



 パージャーが振り向くと、振りかぶった佑心が迫っていた。


*─*─*─*


 日根野ひねの晴瑠はるは心宅で目を覚ました。隣の二つの布団には、佑心と一条の姿がない。日根野は嫌な予感に起き上がった。

 焦って心兄弟の寝室の扉を開けると、光と景が眠る中、心は銃の装填をしていた。心も日根野に気づき、力強く頷いた。

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