18-1「第一幕」
PGO本部でパソコンに向かっていた心が急に立ち上がった。向かいのデスクから佑心が顔を出した。
「どこ行くんだ?」
「技術部だよ」
「?」
*─*─*─*
佑心は心の後をついていく。エレベーターのランプがB1を指した。
「地下にあるのか、その技術部って?」
「うん、地下にあるのは技術部とゾレトラウカだけだよ。地下っていっても、そもそもPGO全体が地下だけど」
エレベーターから長く続く青色の機械的なトンネルを通ると、すぐに重厚な扉が現れた。
「技術部の人たち見たらちょっとびっくりするかも」
心は扉の指紋認証をしながら笑った。ウィーンと横開きの扉が開くと、高い天井と機械音が体の芯に響くほど聞こえてきた。
「うわあ……」
心に続いて中に入ると、大勢の青い繋ぎ姿の作業員がせわしなく働いていた。高く吊り上げられた車両や、武器庫のような一角。火花を散らしながら溶接する人たち。
「
心が技術部の一角に呼びかけた。
「
すると、天井から命綱をつけて分厚い眼鏡をした祇雅が勢いよく降下してきた。心と佑心は突然のことに腰を抜かしそうになった。祇雅は眼鏡を外してニッと笑顔を見せた。
「心パージャー!!よくぞお越しくださいました!兄から修理の話は聞いてます!おや、そちらの方は?」
「えっと、新田佑心。赤のパージャーです。技術部に降りてきたのは初めてで」
佑心は軽くお辞儀した。祇雅が突然降って来たことも驚きだったが、もっと驚いたのは祇雅の相貌だった。小学校低学年かと思うような身長の低さに、眩しい程の黄色い髪が乗っている。
「そうでございましたか!技術部にやうこそ!騒々しいですが、ゆっくりしていってください!」
「あ、ありがとうございます……」
「技術部はPGOの設備管理、車両整備、武器の管理まで全てここで担当しているんです!あ、申し遅れました!私は技術部のチーフ
祇雅は奥の扉が開いたのを見て、紹介を始めた。そこから
「同じくチーフで私の兄の薙雅、弟の芽雅です!薙雅、心パージャーがいらしてる!」
さすがに兄弟というべきか、三人とも上背は同じくらいしかなかった。違うのは頭髪くらいで、薙雅は白髪、芽雅は緑髪だった。
「薙雅さん!!お疲れ様です!!僕の拳銃の修理が終わったの聞いて飛んできました!」
「お前!今回なんて壊し方してくれたんだ!パージ能力貯水槽がバリンバリンだったぞ!」
「薙雅!落ち着いて!」
薙雅が心に突っかかると、芽雅が懸命に止めにはいった。
「いやー!ごめんなさいっ!!相手に武器を取られたり大変でして!!」
「もう一度俺のパージ能力を貯めるのがどれだけ大変だったかぁー!!」
佑心は薙雅を見ていて気づきがあった。
「ん?同じ余韻……」
隣で祇雅が説明を始める。
「心パージャーの拳銃に仕込まれているパージ能力は薙雅のものなんです!」
「へー……」
「戦闘向きじゃない私たちの仕事が前線で頑張ってくれている心パージャーの役に立つと、私たちも一緒に戦っているようで嬉しいです!心パージャーは本当に凄いです!」
「はい」
心と薙雅はまだ言い合いをしていた。
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