魔力亜空のカイカク者
徘徊堂
第?話 少女を壊す魔法の光明
必然的な偶然性か、もしくは偶然的な必然性か。
とある田舎町の中学校の屋上で、1人の少女が魔法少女によって破壊されようとしている現状を述べるには、この一見矛盾したような、何も言っていないような、意味のよくわからないような表現が適しているのかもしれない。事実、その少女――
捕縛された星奈の目の前に立つ魔法少女。彼女は、赤と黒を基調とした色彩の、フリルが至るところにあしらわれた絢爛さを感じさせるようなドレスを、そのスレンダーな身体に纏っていた。そして、彼女の体からは陽炎のようにユラユラと赤黒いオーラがにじみ出ている。
「……」
魔法少女は無言で右腕を天に向けて伸ばしていた。右手に握られているのは、先端に赤紫色に輝く水晶玉のような球体が取りついたステッキ。さらに、星奈の頭上には多角形や曲線で織りなされた直径30mほどの赤く輝く魔法陣が、夜空をバックに3つ展開されている。それらの魔法陣は各々が10mほどの間隙を保ちながら鉛直方向に層をなし、その場で互い違いの向きに回転していた。
(どうして、こんな……)
強大な魔力で束縛されている星奈は、迫りくる運命に対抗する術を持っていなかった。
もしその運命に必然的な事柄があるとすれば、それは彼女の中にとある存在が密かに眠っていたことか。そしてもし彼女の運命に偶然的な事柄があるとすれば、それはある日ひょんなことからとある超常現象に巻き込まれてしまったことか。あるいは、両方ともが必然なのかもしれないし、はたまた両方ともが偶然なのかもしれない。
星奈が頭の中を整理する間もなく、いよいよ彼女の頭上にある魔法陣は溢れんばかりの眩い光を発し始めて、そして――。
「バースト」
赤黒い服の魔法少女の平板な声ともに、天上の魔法陣から赤紫色の光の柱が滝のごとく降り注ぐ。一瞬で星奈は強烈な光の奔流に飲まれた。
「遅かっ――」
その刹那、どこかで聞いたような声が聞こえた気がしたが、星奈の意識はすぐに途絶えた……。
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