第28話 ナオトとダンヌ
ボクが、ダンヌさんの生まれ変わりだって?
「ダンヌも、同じように女神から呪いを受けたのさ。弱い人間に転生して、弱体化させられた。だがオレサマは先手を打って、力の一部を切り離し、お前さんと接触させるように仕掛けた」
「つまり、ボクとダンヌさんが出会うことは、最初から想定されていた?」
「そういうこった。まったく、女神もツメが甘えよな。こっちの仕掛けに気づかないなんてよぉ」
ダンタリオンは、複数の人格を持つ。それら人格が分散して、各世界を支配しているという。
その一つが、ダンヌさんらしい。
ようするに、ボクもダンタリオンの一部ってわけか。
力が強すぎるダンタリオンの本体は、ずっと魔力の流れがない地球に封印されていたという。
カトウケイゴの身体に封印されていたが、アウゴが転生したことで覚醒してしまったわけか。
まだダンタリオンの力が残っていて、影響を及ぼしたに違いない。
「チョーコ博士は、気づいていない?」
「でしょうね。もし
「さて、おしゃべりはそこまでだ。ダルデンヌ、オレサマの支配下に戻れ」
ダンタリオンが、手をかざす。
そうか、ダンタリオンは、ダンヌさんの親分みたいな存在だ。
となれば、ボクも洗脳されてしまうのか。
だが、一向にボクの意識が乗っ取られる気配はなかった。
「あれ? おかしいな。人格が戻るはずなんだが」
さすがに、おかしいと思ったのだろう。ダンタリオンが、首をかしげる。
「おいテメエ、何をぼさっとしてるんだよ? さっさとアシタバ・ヒヨリをつれて、オレサマのところに戻ってこいってんだよ」
「……断るお」
「はあ?」
「お前の指示には、従わないお。オイラはダンヌではあっても、ヒライ・ナオトだお。お前の……ダンタリオンの一部ではないお」
ダンヌさんが、そう言い放つ。
「……んだと?」
ダンタリオンが、鬼の形相になった。
「ダンヌさん。ダンタリオンの拘束から、本当に逃れられたの?」
「そうだお。オイラはこれからもずっと、ナオトの味方だお」
ボクは安心する。
ダンヌさんまで取り込まれたら、また形勢を逆転されるところだった。
「なにが起きてやがる!? なんでオレサマの分身であるテメエが、オレの支配を受けない?」
「カトウ・アウゴのおかげだお」
アウゴは最後の力を振り絞って、ボクとダンヌさんを、ダンタリオンの支配から守ってくれているのか。
ありがたい。
これでもう、怖いものはなくなった。
「まあいいか。全部想定済みだし。オレサマが本気を出せばいいだけだろ」
空が突然、真っ暗になる。
「なにが起きたんだ?」
「あれを見て、菜音くん!」
緋依さんが、空を指差す。
「空を、何かが覆っている」
円盤のようだが、お城が逆さまに建てられている。
「そうだ。これこそオレサマの根城。その名も、【天空城】だ」
ビルの上で、円盤が空を覆っていた。
「地球が、魔物から魔力を奪っている最大の理由。それは太陽光線だ。色々調べて、どうして夜のほうが魔物の動きが活発なのかわかった。太陽のせいだってな!」
太陽は、ダンヌさんや緋依さんを転生させた女神のパワーに満ちている。
その太陽が、邪悪な魔物たちから瘴気を消し去っているらしい。
「だが、その太陽を塞いでしまえば、いくらでもダンジョン作り放題ってわけだ!」
突然、スマホの電源が立ち上がった。
『
「はい。チョーコ博士。なにがあったんです?」
『円盤が現れた途端、フォトン製ではない各電子機器が、破壊され始めてるでち!』
「本当ですか? 今ここには、カトウ・ケイゴがいます。ダンタリオンって名乗っていますけど」
「ケイゴがダンタリオン!? やはり、生きていたでちか! あのクズ野郎が、もっとクズのダンタリオンだったとは!」
珍しく荒々しい口ぶりから、チョーコ博士はケイゴを心底嫌っているようだ。
ダンダリオンの目的は、円盤で太陽を隠して都市丸ごとダンジョン化するだけじゃない。
地球の産業すべてを、破壊するつもりだ。
「地球産のテクノロジーを奪い去って、この天空城を拠点として、地球をダンジョン化させてやる! 女神のヤツめ。思い知らせてやるぜ!」
天空城から、膨大な瘴気が溢れ出す。
瘴気は地上へ降り注ぎ、魔物たちに姿を変えた。
魔物たちが、人々を襲っている。
街の人達は逃げ惑い、警官や自衛隊の対処も追いつかない。
外国の軍隊は、戦闘機のミサイルで魔物を一網打尽にしようとしていた。だが、住民たちがいて撃てないでいる。
「アハハハ! これでもう、都市機能はマヒしやがった! いよいよ、この世界も混沌の中へ……へあ!?」
一機のヘリが、天空城を支える円盤に突っ込んだ。魔力による、大爆発を起こす。大量のフォトンを詰んでいたようだ。
わずかながら、円盤に穴が開く。
太陽光が降り注ぎ、魔物たちが消滅していった。
ヘリの残骸が、ボクの眼の前で落下していく。
乗っていたのは、羽鳥社長だった。
身体半分が、焼け落ちている。死んでいるのだ。
羽鳥社長の亡骸が、地上へ落ちていく。
死してなお、ダンタリオンに向けて中指を立てながら。
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