第14話 急展開
「意外。あんまり言われないの?表情のつくりかたとかそっくりじゃん。雰囲気は謳歌の方が今にも飛び跳ねそうな感じするけど」
「今にも飛び跳ねそうな感じ!?さ、騒がしかったですか?」
家ではよくうるさいと言われるけど、なんだかんだであたたかく見守られていた。けれど、矢宵くんは一応他人なのであたたかく見守るほどの関係性ではないため嫌われたかもしれない。胸騒ぎがする。
「騒がしくはないよ。明るくてかわいくて愉快でいいと思う」
ほっと胸を撫でおろす。
「良かったです!」
ほぼ反射的にそう返してから、以前にも聞いたことのある台詞だったなと思い出した。今までの矢宵くんとの会話を脳内再生すると、いつ聞いたかを簡単に特定できた。
『じゃ、じゃあ逆に矢宵くんの好きなタイプは…!?』
『明るくてかわいい愉快な子かな』
『へぇ〜!そうなんですね!』
「謳歌?」
名前を呼ばれて、自分が固まっていたことに気づいた。
「は、はい!?」
「どうかした?」
「い、いや、なんでもないです」
大袈裟だと自覚がありながら激しく手を振って否定する。
『身近な人だと愛衣ちゃんみたいな子がタイプってことですか!?』
『綾野さんも可愛いと思うけど、俺が好きなのは綾野さんと仲がいい子かな』
もしかして……と思ってしまったら、昨日と今日の矢宵くんの言動全部が脈ありの兆候にしか思えなくなってしまった。
愛衣ちゃんも、美鈴ちゃんも、木西さんも、みんな苗字呼びなのに私だけ名前呼びだし、勉強会誘ってもらったし、授業中に寝ているところを起こしてもらったのは流石にただの親切だと思うけど、嫌われてたならやってもらえてないだろう。
心臓が激しく動くのを感じる。
愛衣ちゃん、助けて!!って叫びたい。矢宵くんの気持ちは一旦置いておいて、私はもしかして……矢宵くんのことが好き?そんなことはないはずだ。じゃあどうしてこんなに心臓が騒がしいの?意味がわからなすぎる。聞いたことがある想像をしてみよう。もし、矢宵くんに恋人ができたらどう思う?末長くお幸せにって思う。よって、私は恋をしていない。でも心臓はうるさい。
「顔赤いけど熱ある?保健室行く?」
「や、いや、だいじょぶ……」
指と指の隙間から矢宵くんを見ると、真っ直ぐこちらを見つめる瞳と目が合った。
ドキドキが止まらない。
「………じゃないかもしれません」
なんだ、この現象。恋じゃないはずなのに、心臓はバクバクするし、顔は熱くなる。
「顔見せて」
言われるがまま手を離す。
ぱっちりと目が合って、思わず逸らしたくなる。
「目、勉強始まる前よりとろんとしてる。手、触っていい?」
「え、あ、はい」
矢宵くんの手が控えめに重なる。夢小説で読んだ通り、大きくてゴツゴツしている。爪も肌も綺麗だ。
「多分熱ある。頭痛とか吐き気とか倦怠感とかある?」
「そう言われてみれば体がだるくて頭がぼーっとしてる気がします」
「絶対熱あるね。立てる?」
矢宵くんは私の隣までやってきて手を差し出してくれた。スマートすぎる。
熱があるって言われたら急に症状が現れて、今すぐベッドに横になりたくなってきた。
逆にどうして今まで気づかなかったんだろうってレベル。どうして気づかなかったんだろう。
手を借りて立ち上がると、手を握り合ったまま保健室へ向かうことになった。やっぱり心臓はドキドキとうるさい。
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