第2話 ブログの楽しさ

まさか、自分のブログを誰かにコントロールされているなんて、誰だって、考えもしないだろう。


  ときは、寛永17年6月。

  つばき姫に、一喝された盛利は、ただ、おろおろするばかり、なにせ、自分の親にすら叱られた事がなかったのだから・・・。

  これまで、自らの意思で何かに挑戦するということもなかった盛利は、姫から注意を受けたからといって、変わりようもない様子だった。

  それを見かねたのは、嫡男・盛次(もりつぐ)。


  「父上、インターネットでも始めてはいかがですか。あちこち、お出でにならなくとも、世の中のことが手に取るようにわかるのですよ。」

  「そうか。折角の盛次の勧めじゃ、やってみようかのー。」


  早速、盛次のパソコンを借りてインターネットというものを体験することとなった盛利。


  「何やら、面倒じゃのー。」

  「すぐに、慣れますよ。」


  息子に手ほどきを受けながら、4・5日過ぎたころ。


  「この、ヤッホーの一覧にブログなどというものがあるが、これはなんじゃ。」

  「ブログは、巷の人々が書く日記のようなものでござる。」

  「ほう、巷の人々は、日記を書いておるのか。賢いものじゃな。どのようにすれば、見ることができるのかな。」


  盛次は、ブログの利用手続きを一通り済ませ、いつでも盛利が参加できるように準備した。

 

  「なんじゃ、このアイデーナンバーとかパッスワードは、いつも打ち込む必要があるのか。わしは、物覚えが悪いからのー。」

  「父上、それは大事な番号ゆえ、どこぞに書き留めておかれよ。さすれば、お忘れになられても、いつでも見ることができますゆえ。」

  

  ふんふん、と素直に盛利は、メモをしている。これまでにない態度であった。やがて、ブログに見入ったのか、何も言わなくなり、少し暑いのか扇子でパタパタと胸元をあおいでいる。

  それ以来、ブログをランダムで見ては一喜一憂する盛利だった。


   「のう、盛次、このルピア姫なるお方は、とても苦労をされているようじゃのぅ。こうやって読んでおっても涙が出てきそうじゃよ。ブログというものは、読むことは出来ても何も手伝うことは出来んし、なにか、歯がゆいものじゃのー。」

  「確かに。ただ、お互いのブログを読んだり、意見を書き込んだりしているうちに、意気投合したものたちは、オッフ会なるものをもようし、会いに出かけては、世間話をしたり、お茶なぞを一緒に飲んだりしているよしにございます。」

  「そうか、オッフ会か。わしが行っても良いのか?」

  「それは、ブログでの長い付き合いで信用されないと難しいのではないかと思いますが。」

  「なるほど、信用か・・・。わしは、母上にも信用されておらんからのー。」

  「父上、母上は信用していないのではなく、父上の奮闘振りが見たいのでございます。」

  

 このようなやり取りがあって、さらに数日後。

 盛次は、父盛利に呼ばれた。


  「どうじゃ、盛次、ほれ、これがわしのブログじゃ。」


  なんと、盛利はひそかに自分のブログを開設していたのである。

盛利の話によると、家来の木場半兵衛の力を借りて自分のブログを開設したのであった。

  

  「なかなか、人が訪れてくれるものではないのー。じゃが、のう、この武田隠元とか申すもの、たびたび来ては、何かしら声をかけてくれているのじゃ。ありがたいのー。」

  

  盛次は、父のブログ開設に驚くばかりで、誰がコメントを残してくれたかなど気にも留めなかった。

  いろんな人が訪れ、いろんな人がコメントを残してくれる。

ブログとして、当たり前のことであるし、武田隠元なるものが何者であるか、この時点では、誰も知らないし、誰も気にしていなかったのである。  

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