第15話
「こうして見ていると、畑もずいぶんしっかりしてきたねぇ」
「ですねぇ」
成長スピードが速いだけではなく、実る果実も大きいと判明したので、話し合った結果畑のスペースを更に拡張することにした。
現在はオリヴィア主導の下色々とデータが取りながら試してもらっている最中だ。
このペースで成長すれば、年に六回くらいは収穫できそうということだった。
しかも野菜も麦も一つ一つが本来よりかなり大きめなので、食べ応えもばっちりなものになりそうだ。
気になるのは味だけど……そればっかりは実際に収穫して食べてみないとわからないからね。
一応連作障害は気にする必要があると思うので、定期的にマックスの力を使ってもらう必要がありそうだけど、とりあえず今のところは万事つつがなく進行している。
あ、ちなみに水の方はシェフに頼んで水を汲んできてもらったり、マリーに魔法で出してもらったりしている。
おかげでマリーの方は畑に愛着が湧いてきたようで、彼女にせがまれる形で僕は畑のすぐ隣に留まることのできる木を配置した。
今でも彼女は最低一日に一回は畑に顔を出している。
ちなみにシェフの方は、あんまり興味はないようだ。
このあたりの個体差が、『テイマー』の僕としてはちょっと面白かったりする。
こんな風に農業部門が一段落している間に、ウィチタ達の方にも変化があった。
というのも……
「いやぁ、まさか騎獣がいるかどうかでこれほど変わるとは思ってなかったですね!」
ウィチタ達がシルバーファングに乗ることができるようになったおかげで機動力が大幅に向上し、狩りの効率が上がったのだ。
更に魔物を狩った後はシルバーファングの背に乗せることもできるようになったおかげで、運搬能力も向上している。
おかげで現在彼女達が持ってきてくれる食肉の量は非常に安定するようになった。
フルで動くと肉を取り過ぎてしまうので、今ではローテーションを組んでもらいながら、しっかりと休日を取ってもらうこともできるようになっている。
定期的に見回りをして確かめてもいるけど、今のところ森の方にも異常はない。
近場で狩りすぎると獲物の数が減るかもとちょっと危惧していたんだけど、機動力が上がって移動範囲が広がったことで、そのあたりを心配する必要もなくなった。
土塀と畑作りが終わったので、次は小屋の改造に着手することにする。
今マーナルムの皆に住んでもらっている部屋は、そもそも従魔の皆に使ってもらう用だったものを素材や構造を流用して使っているので、どうしても少しサイズが小さい。
子供達が中で遊んでいるにはいささか手狭だと思うので、これを機に色々と作り替えてしまうことにしよう。
ということでまずは、子供達の面倒を一番良く見てくれているイリアさんから話を聞いてみることにする。
「そうですねぇ……それなら子供達が遊ぶための広場みたいなものを、きちんと作っちゃった方がいいかもしれません」
「イリア、ナイスアイデア!」
「うふふ、ありがとうございます」
思わず叫びながら手を取ってしまった。
自分のしたことの大胆さにちょっと恥ずかしくなって、パッと手を放す。
ちなみに距離感があると言われたので、最近では皆のことを基本的に呼び捨てで呼ぶようにしている。
そのおかげかたしかに、最近僕は皆のことを前より身近に感じるようになっていた。
「……そうだよ、たしかによくよく考えてみればわざわざ家の中で遊んでもらう必要なんかないんだよね」
外に遊ぶためのスペースをしっかり作ってしまえば、子供達も開放感を味わいながら楽しく過ごすことができる。
どうして今まで気付かなかったんだろうか。
やっぱり人に意見を聞いてみるのは大切だ。
他の子達にもしっかりと話を聞いてみよう。
ということで僕はマーナルムの年長組の皆に、今何か困っているものやほしいものがないかを聞いて回ってみることにした。
「……トイレ」
「はいはーい、やっぱり皆個室があるおうちがいいと思いまーす!」
「川から水路を引いて来れたりすると、用水の用意が楽になるのでありがたいのですが……毎回マリーさんやシェフさんの力を借りるのもなんだか申し訳ないですし」
今までは環境を整えるので精一杯だったので、あんまり他に気を回す余裕がなかった。
けれど今では僕と同様皆にも余裕が出てきたので、意見が出てくること出てくること。
たしかにトイレもプライベート施設である個室も水路も、どれもあった方がいいのは間違いない。
よし、それなら全部作っちゃおう!
というわけで僕はマックスとシェフと一緒に、皆の要望に応えるべく動き出すのだった……。
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