第30話030「視聴者」
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:ん? 新人か?
:ていうか格好ww
:ただの不審者で草ww
:ところで、ここってどこのダンジョン?
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タケルは現在いる『
そんな、先を急ぐあまりすでに視聴者が現れていることに気づいていないタケルは『スキル:身体覚醒(極)』をフルに活かして階層をもの凄いスピードで駆け抜ける。途中、目の前に行く手を阻む魔物が現れるがパンパンパンパン軽快に一撃で屠っていく。
すると⋯⋯、
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:お、おい、今⋯⋯何やった?
:素手でオークの頭を粉砕した⋯⋯ように見えたが?
:い、いやいや、オークだぞ? んなわけあるかい!
:いや、でもほら今も倒し続けていますし
:ていうか、こいつの移動速度やばくね? ドローンが全然追いついてないんだけど⋯⋯
:ちょっと待て! オークが出ているここってどこのダンジョンだ?
:見た感じ、『森林地帯』っぽいな。新宿御苑か?
:あーそうかも。オークが出る森林地帯ってことは20〜29階層の『中層』あたりか?
:だとしたら相当やばいぞ、こいつ?! だってオークを素手で一撃で屠るんだぞ?
:素 手 で
:素手でオークを一撃。しかも、ただの一撃じゃなく破裂させるって⋯⋯。そんなのC級どころかB級クラスの
:おい、おまいら! まずは、青のチェック柄長袖ジーパンという『変態ファッション』と、サングラス&マスクという安易な変装にツッコミを入れるのが礼儀やろww
:どこのアキバ系変態仮面だよ! これでおk?
:(*`・ω・)ゞ アリガッツ!!
:おーい! うp主〜。はよ視聴者に気づいてくれ〜い!
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チャット欄でどんどん人が増えていく中、当の本人である配信主、うp主タケルはいまだ気づかないまま階層をドンドンズンズン降りていく。
「おー、ここがもう『中層』最後の29階層⋯⋯か」
気づくと、目の前に『新宿御苑ダンジョン29F』という立て看板が見えた。
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:⋯⋯は? 新宿御苑29階層⋯⋯だと?
:おいおい、マジかよっ!!!!
:おい、ほんの10分少々で21階層から29階層まで来たぞ、こいつ?!
:いやだってねぇ⋯⋯、ものすごいスピードで駆け抜ける映像⋯⋯だった⋯⋯じゃん⋯⋯おえぇぇえぇぇえぇぇ!!
:画面酔いが半端ねぇ⋯⋯おぇぇぇ!!
:うえぇぇぇい、うぇぇぇい、うぇ⋯⋯おぇぇぇ!!
:バカだな、お前ら。あんな画面をまんま観るもんじゃないとあれほど⋯⋯おえぇぇぇぇ!!!!
:お前もかよww
:ていうか、この
:んなわけあるかい! ここ新宿御苑29階層だぞ? 新人のF級
:しかも『ソロ』ですしおすし
:うおおお! も、もしかして、新人のF級
:おちつけ。だからそんなわけないって言ってるだろ?
:でも、さっきの立て看板見ただろ?
:きっと、有名Dストリーマーだよ。じゃないと顔隠してこんな変な格好なんてしないだろ?
:なるほど、確かに。でも、何でそんなことを?
:知らん
:ていうか、頼むからうp主早く配信のチャットに気づいてくれよ〜
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タケルはまだチャット欄に気が付かない。
そのため、また色々とひとり言を言い始めた。
「おいおいおい、29階層の魔物でもこの程度なのか?」
実際、29階層になるとゴブリンメイジやコボルトナイトといったゴブリン上位種、他にも体長3メートルほどの巨大蜘蛛ポイズンスパイダーという噛まれると神経毒に犯される魔物や、体長5メートルのビッグフットという巨人種の魔物も出始めるものの、いまだ一撃で倒される魔物ばかりだった。
「はぁぁぁぁ〜! これじゃあ、映えないよぉぉ〜! ていうか、俺の一撃を耐えられる魔物って、もはや次の下層さえいないんじゃないかと思ってきたわ」
などと、言いながら目の前に群れで現れる魔物を素手の一撃で屠っていく。
「よし、とりあえず『下層』の最後となる『49階層』まで行ったら帰ろ。なんか疲れたし⋯⋯」
と、タケルがホッと緊張をほぐすと、ちょうどDビジョンの画面が激しくチカチカ明滅しているのに気づいた。
「あっ! 光ってる! も、もしかして、視聴者さんが⋯⋯いるの?!」
俺は急いでDビジョンの画面を観てみた。すると、
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:あ! やっと気づいた!
:お初です〜
:観たことない
:新人で29階層なんてすごいですね!
:だから新人なわけねーだろ!
:でも、新宿御苑ダンジョンの中層最後となる29階層まで魔物をすべて一撃。しかも素手で屠るようなDストリーマーや
:しかも、たった1時間でここまで来ているっていうね⋯⋯
:その格好はウケ狙いですか? だとしたら成功ですww
:ねぇねぇ、オメガさんは新人さんなのなの〜?
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
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「お、おおおおおおおおおお! すげぇぇえぇえぇえぇぇ!!!!」
ほんの1時間前までチャット欄には何もコメントはなかったのに、今ではダー⋯⋯っとすごい速さで次々とコメントが入ってくる。しかも、
「ど、同接数⋯⋯『1万人』?!」
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